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「狂歌入東海道」まずはじめに [狂歌入東海道]

hirosige1_1.jpg 数年前に、池袋西口の古本市で歌川広重『東海道五十三次』全56枚版画綴りを入手した。触ればボロッと綴りが崩れそうな古さで3千円也。「佐野喜版=佐野屋喜兵衛版、狂歌入り東海道五十三次」らしい。

 広重は生涯に20種ほどの「東海道物」を描いたそうで、最も有名なのが「保永堂版」(天保4~7年の大判錦絵)。比してこの狂歌入りは、それから9年後の天保13年(1842)頃、46歳前後の作らしい。体裁はA4 版より一回り小さい「横中判」。21.8×16㎝ほど。初版ならば値も付こうが、入手したのは「日本木版発行」の明治か大正時代の摺り。摺りズレが多く、色も雑っぽくて金額的価値なしだが、全56枚揃いがうれしかった。

 余りにボロボロゆえ、一枚ずつ分解してA4バインダーに順に納め直した。版画を愉しむには粗雑過ぎるが〝くずし字〟初心者ゆえ、全作挿入の狂歌を読んでみたかった。

 狂歌は和歌の〝本歌取り〟遊び。「みそひともじ(三十一字)」ゆえ、解読は簡単と思っていたが、初心者の情けなさで一首解読に悶々と長考。ネット調べをしても「佐野喜版・狂歌入り東海道」のアップ例は少なく、稀にあっても狂歌読み下しはない。

 唯一「ボストン美術館」のサイトが全狂歌を読み下しているが、単作扱いゆえか次作・次作への検索は不可。一首をやっと読み下した同文をもって検索すると初めて「ボストン美術館」の同作がヒットするといった按配。また稀に各地元の史蹟案内板や企画展などに、この「狂歌入り東海道」が紹介されているサイトもあったりはする。

 結局「くずし字」初心者の隠居翁が、老いた頭で一首長考する他にない。順を追って「全狂歌の筆写・現代文訳」をしてみようと思った次第。さて、最後の56作まで辿り着けましょうか。

 また旅のお共に十返舎一九『東海道中膝栗毛』を併せ読みすることにした。幸い同書は早稲田大学のデータベースで版本の閲覧が可能。文化財秘蔵・私蔵から一般公開。良い時代になりました。併せて十返舎一九はそうとうに狂歌にのめり込んでいたようで、狂歌をアクセントとしたような構成。たっぷりと狂歌を味わうことに相成候。

 現実は嫌なことばかり。加えて老人には辛い真夏日続きゆえ、クーラーの効いた部屋で〝憂き世忘れ〟の「くずし字&狂歌」解読の隠居遊びです。無学ゆえ間違い多々でしょうがお許し下さい。

 まずはじめの絵は、広重の似顔絵です。ゴッホには「タンギー爺さん」をはじめ、浮世絵を背景に描き込んだ作品がありますから、ここは豊国描く広重肖像画(版画)を参考に、逆にゴッホ風の広重似顔絵です。


コメント(1) 

コメント 1

mm15-tt31

No.1日本橋からNo.56京(内裏)までの翻刻すべて読ませていただきました。
私も佐野喜版東海道の狂歌を読みたいと思っておりましたが、先学の方に翻刻していただいて非常に勉強になりました。翻刻のご苦労に頭が下がります。
なお、yama's様は「ボストン美術館で単作扱い」と書いておられますが、「サン・ディエゴ美術館」に狂歌と作者を翻刻したものが公開されておりました。御参考までに。
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Ky%C5%8Dka_Iri_T%C5%8Dkaid%C5%8D

余計なことではありますが、yama's様翻刻とサン・ディエゴ美術館のそれとをPCで計算させてみました。次の諸点に相違がありました。より良きものにするため、ご検討をお願いします。
(yama's様を「Y」、San Diegoを「S」、私を「M」と表記します)

No.29見附
Y:「むかしたり」
S:「むがしたり」
M:広辞苑【むがし】喜ばしい。ゆかしい。

40.池鯉鮒
Y:「池の水の」と6音
S:「池の氷の」と7音
M:「いけのこおりの」の7音が妥当?

Y:「鮒の花なる」
S:「鮒も花なる」
M:Sの「も」が正しいのでは?

46.庄野
Y:「宿入に」
S:「宿人に」
M:Sの「人」は誤っているのでは?

47.亀山
Y:「さえきりて」
S:「さえぎりて」
M:単なる濁点の打ち方の違いではない。
広辞苑 【さえ】澄みきること。光・色・寒気などのすんでとおること。
広辞苑 さえぎる「遮る」妨げる。
従って、鶴の声が「冴えきる」「冴えぎる」という情景では?Y説に賛意。

Y:「松の羽を」
S:「松に羽を」
M:「に」と読めますが?

51.水口
Y:「子供等は」
S:「子供等が」
M:「が」と読めませんか?

56.内裏
Y:「さは先よしと」
S:「さい先よしと」
M:「幸先」と読みたいのですが?

Y:「けふはつの空」
S:「けふみつの空」
M:2行前の「ミやこ」の「ミ」と、「ミつの空」の「ミ」が同じ文字のようです。

以上、ご検討賜れば幸いです。
by mm15-tt31 (2017-02-19 00:29) 

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