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桑名「乗り合いのちいか雀のはなしには~」 [狂歌入東海道]

43kuwana_1.jpg 第四十三作目は「桑名」(富田立場の図)。狂歌は「乗り合いのちいか雀のはなしにはやき蛤も舌をかくせり」。桑名宿から四日市の間の「富田の焼き蛤」が有名。「名物・焼きはまぐり」の看板と店頭で蛤を焼いている光景が描かれている。

 狂歌の〝ちいか雀〟とは何だろう。「雀(舌切雀)」と「蛤の舌」。乗り合いの子らが話す舌切り雀の話しに、桑名の蛤も舌を引っ込めるという意だろう。〝蛤の舌〟は、殻からベロッと伸び出た足(舌)のこと。

 高浜虚子の句「蛤を逃がせば舌を出しにけり」「舌焼いて焼蛤と申すべき」。弥次喜多らは船で桑名に着くや、早速〝焼き蛤で酒〟を楽しんで、ここで卑猥な歌を紹介している。〓しぐれはまぐり(煮蛤)みやげにさんせ、宮(宿)のお亀(飯盛女)が情所(なさけどこ・女陰)ヤレコリャよヲしよヲし~。

43kuwanauta1_1.jpg 二人は〝富田立場〟の茶屋でも焼蛤を食べた。なにしろ〝桑名の焼蛤〟は東海道を旅する人の大きな楽しみ。大皿に焼蛤をのせて運ぶ女の尻をちょいとあたって(触って)「おまへんの蛤なら、なをうまかろふ」。ふざけているから大皿の焼蛤が、弥次さんの懐に転げ入った。「アツ・アツッ~、金玉が焦げるぅ」。股引の前合わせを広げると、焼蛤がポコッと出て、喜多さん「ご安産でございます」。

「軟膏はまだ入れねどもはまぐりのやけどにつけてよむたはれうた」。軟膏を蛤貝に入れて売られてい、そのことを詠った戯れ。そうこうしているうちに、四日市から宿引が出向いてきて誘われた。

 なお『膝栗毛・第五編序』には一九の狂歌「名物をあがりなされとたび人にくちをあかするはまぐりの茶屋」に豊国の画が収められていた。また挿絵には「はまぐりの茶屋は同者を松かさにいぶせて世話をやく女ども」。「同者=道者=巡礼者」、焼蛤は松かさを燃料にしたり、乾燥した松葉をかぶせて焼いていた。


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松尾 守也

(翻刻) : 乗り合いの ちいか雀の はなしには やき蛤も 舌をかくせり
(原文) : 乗り合いの ちいか雀の はなしにハ やき蛤も 舌をかくせり  株の川 鬼丸
(読み) : 乗り合いの ちいか雀の 話しには 焼き蛤も 舌を隠せり  株の川 鬼丸
(注)掛詞: 「舌」切り雀・蛤の「舌」

追記1. 文中、「狂歌の〝ちいか雀〟とは何だろう」とありますが、広辞苑 第2版は、「ちいちい」を「(幼児語)①虫。特に虱・蚤。 ②小鳥。特に雀」と定義していますから、「”ちいちい”と鳴く雀」という意味ではないでしょうか?
追記2. 文中、膝栗毛の「おまへんの蛤なら、なをうまかろふ」を紹介されていますが、江戸川柳に
 松たけは酒 蛤は湯で 風味
というのがあり、この意をhttp://www.kanda-zatsugaku.com/080530/0530.htm#12では、
「お風呂上りの女性と少々お酒を飲んだ男性が一番具合がいい」と解説していますから、膝栗毛の指すものはハッキリしています。
by 松尾 守也 (2017-02-05 00:03) 

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