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「コロナ後の世界」から~ [読書・言葉備忘録]

coronagonosekai_1.jpg 新型コロナウィルスの感染拡大と死、人種差別、大洪水、政府の無能さ~。そんな情報ばかりに日々接して気が滅入った。気分転換に新宿紀伊国屋の「新書コーナー」を覗いた。『コロナ後の世界』(文春新書)を購った。惹句は~現代最高峰の知性6人への緊急インタビュー。興味を持った2人の主張をまとめてみた。

 まずはスコット・ギャロウェイ教授『新型コロナで強力になったGAFA』。例の通り勝手解釈~ コロナ・パンデミックで他企業困窮の最中に、巨額キャッシュを溜め込んでいたGAFAは、次々にIT企業を買収して株価最高値を更新している。

 GAFAの「ネットワーク」独占はさらに進み、その支配から新たな企業が市場開拓する余地がなく、またイノベーションも起き難い状況になった。世界の支配的メディア企業=フェイスブック、グーグルのビジネスは、より多くの広告収入を得るべく、記事や投稿が「よりつながること」を追求する。(カルフォルニア大ダイアモンド教授は「コロナウイルスには脳がないから意図もない。彼らの目的はただ一つ〝増殖すること〟」と記していて、GAFAと妙に一致する。両論を結び付ければ「GAFA=コロナウィルス」になるから不気味だ)

 ギャロウェイ教授は、こう続ける。「つながる=増殖」を促すミッションの最大要素が「怒り」。対立と激怒を煽る投稿が、より多くのクリックを生む(金儲けになる)。その結果、ネットワークは「ヘイト、フェイク、怒り、対立」が満ち易い。その結果、SNS使用の10代の子らに「鬱」が増加中。S.ジョブズはじめテック企業幹部は、自分の子らにはデバイスをつかわせていないとか。

 フェイスブックには思想・脳がない。「我々はメディアではなく、プラットフォームに過ぎない」と社会的責任を回避している。「ネットワーク」を独占しながら、彼らは国の在り方、国際社会に責任を持たない。そうしたGAFAの負の側面もある。彼らには選挙で落選することもないのだから~と警告する。

 次にスティーブン・ピンカー教授『認知バイアスが感染症対策を遅らせた』。氏は「ネットワーク」に限らず、ジャーナリズムの「ネガティブな認知バイアス」のリスクを指摘する。マスコミも平和なニュースや客観的データよりも最悪のことを選んで報道する「=ネガティブなバイアス」と云う〝バグ〟を有していると指摘。(日本でも〝事件〟が起きると嬉々とした表情に一変する女性キャスターがいる)

 報道もネガティブな情況や数字中心の報道が多い。さらに「ネットやツイッター」には、自分が見たい情報しか見えなくなりがちで(=フィルターバブル=利用者に合せた情報が作為的に表示される)、自分がバイアスに囚われているのを忘れ、違う意見の人こそ偏見に囚われている~と思い込む仕組みに嵌りがち~だと指摘。

 ここでスウェーデンの環境活動家グレタさんに言及する。気候変動の問題を「善対悪」の枠組みに嵌めること、邪悪な企業を打ち負かすという構図も危険だと指摘(日本にも、その手法が得意な知事がいる)する。「8年半経たぬうちに二酸化炭素の許容排出量を超えてしまう」と叫ぶが、気候問題は8年半では解決できないだろう。非難すると同時に新たな新エネルギー開発への展望も語って欲しかったと言う。

 「ネガティブなバイアス=バグ」を除去すれば、18世紀中期の平均寿命29歳が、今は71.4歳に伸びている。世界総生産も2百年でほぼ100倍になり、人類は天然痘やペストの危機も切り抜けて来た、インフラも政治形態も改善され、今は小さなデジタル末端で世界の知識を持ち歩けるようにもなった。次世代原子炉はモジュラー式で小型化され、冷却システムも改善されて安全性を増している。それらにも眼を向けるべく、そのためにはまず「落ち着け」と忠告したいと記していた。

 長期レンジ、客観的データを見れば、原発やAIより懸念すべきが「核兵器廃絶」で、格差より「不公平是正」を、コロナ感染もモニタリング態勢の強化、検査体制の確立、防護服やワクチン開発が大テーマであることも見えて來るだろうと説いていた。コロナ自粛中の読書にお勧めの新書紹介でした。

 また「コロナ、人種差別、大洪水被害、為政者の無能~」情報洪水の中に、小生ファイルには異常気候に関するクリッピングも増え続けている。それはいずれまたの機会に~。

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