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平成を振り返る(4) [政経お勉強]

anposaiketu3_1.jpg 平成24(2012)、12月に第二次安倍内閣、民主党の体たらく。首相は幼児性っぽく「アベノミクス」(金融・財政・構造の各改革)や右翼団体から借用の「美しい国」と嘘っぽいパフォーマンスばかりが見え透いた。「日本を取り戻す」も、トランプ「自国ファースト」に通じる。黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和」も怪しく、株価は上がるほどに実態経済とかけ離れて、利ザヤを稼ぐ海外からの「電子金融空間」の仕業と読み取れた。

 小生:平成27年(2015)頃にリタイア(隠居)した。ブログは「鳥撮り」から「鶉衣・方丈記」くずし字筆写、スケッチ開始、青山霊園外人墓地(明治のお雇い外国人)24名の経歴調べ、広重「狂歌入東海道」(全56枚)の狂歌判読・解釈、千駄ヶ谷物語(59回)、朱子学儒学のお勉強(35回)、寛政5年「和田戸山御成記と現戸山公園比較」(24回)、ジャポニスム(22回)、司馬江漢(23回)、牛込シリーズ(43回)などの隠居遊びの場に化した。

 この機会に、平成27年ブログを見直して驚いた。横井也有『鶉衣』のくすし字筆写の合間に、なんと『資本主義の終焉と歴史の危機』の読書メモをアップ。迂闊にも6年を経て再度購読だった。

 平成27年(2015)、9月「戦争が出来る国へ=安全保障関連法」可決。参議院本会議の強行採決風景をテレビで観て、藤田嗣治の戦争画がダブって、こんな絵をブログアップしていた。アーミテージがほくそ笑み、ヒゲの隊長こと佐藤議員が詰め寄る野党議員を蹴散らしていた。(絵は当時ブログ挿絵)

 平成28年(2016)、嘘つき首相の支持率は相変わらず高く、英国は国民投票でEU離脱で後悔し、11月のトランプ大統領が誕生、小池都知事の裏の顔~。ポピュリズム、保守主義、格差拡大が世界を席巻・浸透。どれもが民主主義(国民投票)の結果とは容認し難いも、それが現実とも認識を強いられた。

 平成29年(2017)、明恵夫人が名誉校長だった森友学園への公有地払い下げ、公文書偽造を強いられた役人の自殺。首相お友達・加計理事長への獣医学部新設の便宜~モリカケ問題。平気でシラ~ッと嘘をつく我が国の総理は、その後に「アベノマスク」や『うちで踊ろう』コラボに動画アップなどの失笑失策に加え、「桜を見る会」がダメ押しでやっと支持率低下、塩梅が悪くなれば得意の病気辞任。

 平成31年(2019・令和元年)。令和2年(2020)に「令和おじさん」こと菅内閣発へ。コロナ対策の後手後手、モグモグ会見などで就任当時の高支持率も一気低下で不支持率が上まった。新自由主義のワイングラス重ねての「トリクルダウン」は起らず、富は一部集中で格差は拡大するばかり。格差拡大が民主儀をも破壊する姿をトランプ再選挙で露呈されていた。加えて米中対立、プーチン独裁、民主化弾圧の中国、収束せぬコロナ感染~。相変わらずスッキリせぬ日々が続いている。

 『資本主義と民主主義の終焉』の最後は「資本主義は終焉しても、民主主義は終わらせてはいけない」と結ばれているが、民主主義の怖さ=大衆の愚かさを警告したのはスペイン内戦(1936~1939)前のオルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(1930年刊)だった。ヒトラーでさえ選挙で多数議席を獲得しての独裁だった。同書では大衆=慢心しきったお坊ちゃまと分析されていた。次にそこを読んでみる。

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平成を振り返る(3) [政経お勉強]

 平成18年(2006)。2月京都議定書発効(平成9年・1997年12月に京都で開催のCOP3での締結が発効。だが紆余曲折が続き、平成27年(2015年COP21)「パリ協定で脱炭素化」が約束された。日本は2020年COP25で再度「化石賞」を受賞。今年になって小泉進次郎奮闘の結果、2050年排出ゼロを実現すると表明)。8月、郵政解散。小泉内閣は自民党総裁任期3年・連続2期迄で、安倍第一次政権へ。平成19年〈2007)。7月に米国の超低金利を前提の住宅ローン「サブプライローン」破綻で「リーマン・ショック」。

 これは2003年からの金融緩和による低金利住宅ブームに、2004年6月の金利引き上げが影響し、ローン利用者が利息も払えぬ状況に陥った結果。住宅ローンが証券化されていて、この証券を扱っていた全米5位の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻。他の金融会社も資金調達で株式を一斉に売却しての株価暴落。手放された大きな家を買い漁ったのが富裕層で、彼らは地価が上がってところで売却して懐を膨らませた。

 日本はリーマン・ショックの影響に加え、議員らの「政治とカネ」不祥事、年金記録の行方不明問題。小生:当時の社会保険庁に恨みあり。支払いが遅れると、まぁヤクザのような恫喝。ついにはてめぇの社会年金で穴埋めしろと強要。後に怪しく複雑な年金記録多発が問題になって訪問調査に来たが、後の祭り~。平成22年(2010)、問題だらけの社会保険庁が「日本年金機構」に組織替え。

 同年9月、安倍首相は臨時国会で所信表明した2日後に辞任表明。お坊ちゃま総理は、この時から都合が悪くなると病気理由に政治を投げ出すのが得意。その後に福田内閣、麻生内閣ともに賞味期限1年の自公短命政権を経て、民主党のお坊ちゃま・鳩山内閣へ政権が移った。

 リーマン・ショックの影響は日本企業も及び、とりわけ大打撃を受けたトヨタ自動車は内部保留潤沢のまま「大量派遣社員切り」。他企業も「内部保留と派遣リストラ」が常套手段へ。2008年末、日比谷公園に「年越し派遣村」が出来た。年金問題、派遣社員リストラ~と弱者がいじめられた時期だった。

 東南アジア各国も急激な通貨下落。その中、大規模の公共投資に踏み切った中国だけが安定し、その結果、各国メーカーが中国で部品工場化(サプライチェーン)。資本が流れた中国は世界第2位の経済大国に躍り出た。

hatoyamatei.jpg 平成21年(2009)。1月オバマ大統領就任。黒人差別の映画などを観てきた小生は、初のアフリカ系大統領就任式のテレビ中継を観て鳥肌が立つほどに感銘。そして日本でも政権交代で民主党・社民党・国民新党の連立で、民主党の〝お坊ちゃま・鳩山内閣〟が誕生。日米共に「新時代到来」と期待するも、両者共の腰定まらず、鳩山内閣は1年も経ずに菅内閣へ。

 そして平成23年(2011)3月11日、東日本大震災と福島第一原発1号機の爆発。当日は小生、女房と新宿御苑散歩から帰宅して寛いでいるところに激震。アンティック食器ケースを押さえつつ、自室本棚上に積んでいた「永井荷風全集」がドスン・ドス~ンと落下するのを見ていた。

 政経も自然も「有為転変」。以後、日本はかつてない天災に例年のように襲われ、悪い方へ悪い方へ転がって行く。放出された放射能も消えることがない。写真は〝鳩山お坊ちゃま〟が育ったらしい乙羽通り「鳩山会館」。

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平成を振り返る(2) [政経お勉強]

 平成13年〈2001)、橋本内閣の「金融ビッグバン」と、中曽根内閣の「JT民営化、NTT民営化、 JR民営化」を引き継いだ小泉政権は、さらに進んで「聖域なき構造改革」へ。「郵政民営化。道路関係4公団」民営化をはじめ「官・中央から民へ」と規制緩和、新自由主義(政府より市場の動きの方が正しい=市場原理主義)に併せ、議員らの地元誘致公共事業の無駄も排除。「自民党をぶっ壊す」と拳振り上げるポピュリズム戦略。「内閣の基本方針(骨太の方針)」から各省庁が実施プロセスまで立案させる内閣主導型(これを無思慮・安倍が真似て、なんでも内閣決議のやりたい放題~)

 「聖域なき構造改革」は、アメリカ型経営の導入になって、年功序列型賃金制度から成果主義へ。そのなか通称「竹中プラン」は約90兆円の不良債権処理。弱体企業を次々に切り捨て、生き残った企業で日本経済を復活させる方針。労働構造も経営者と少数鋭意社員、単純作業員(非正社員)に分け、多数の派遣労働者を生んだ。これは北欧などの福祉国家とは逆の自己責任型。(竹中平蔵はその後、大手人材派遣会社の会長職にちゃっかりと収まった)。小泉首相。竹仲平蔵による新自由主義が「富める者vs持たざる弱者」の構図を造ったと評される。

 同年、小泉のお友達ブッシュは、NY同時多発テロでアフガニスタン空爆。平成15年(2003)にイラク戦争へ発展。日本は「イラク特措法」で米国を全面支持で「日米同盟」をアピール。この年の株価は最安値7607円を記録。

 平成15年(2003)竣工の六本木ヒルズには、何かを生産・販売もせずの「投機ビジネス」(ポスト産業資本主義)の新富裕層が住んで「ヒルズ族」と呼ばれた。ライブドアの堀江はニッポン放送を、村上世彰は自身のファンドで阪神電鉄の買収を仕掛けた。さらに小泉内閣は「医療制度改革」も実施(現コロナ過で、その脆弱さが露呈と指摘されている。

SIMABENCH.JPG 小生:スタッフ7名を抱えた〝社長ごっこ〟から、再び原点の一人フリーランサーへ。年齢相当にカラオケ誌と演歌界の男女を代表する歌手の仕事をするようになった。その取材・打ち合わせ・印刷手配でバイク疾駆の日々へ(中古SEROWを乗り潰しD-TRACKERへ)。彼らの密着取材でハワイ、ソウル、北海道、京都、金沢、大阪、熊本、福井、名古屋と全国を飛び回った。

 同年秋からカラオケ誌に男性演歌歌手の「俺の山河は~」と題した2年間24回連載を開始。次に同誌で女性演歌歌手の2年刊24回連載も開始。並行して平成17年(2005)春からスポーツ紙で前記男性歌手のエッセー連載を年末まで43回連載を担当。

 ちなみにその連載2回目は3月8日。エッセー裏面に「ライブドアのニッポン放送買収に際しフジテレビが同株公開買い付けに成功」の記事があった。同スポーツ紙では続いて女性演歌歌手のエッセー連載も担当。両演歌歌手のファンクラブ誌も編集していたからて眼の回る忙しさ。その間隙をぬって大島暮しで息抜き。演歌歌手の大島キャンパーン(山本譲二、都はるみ、服部浩子など)があれば、取材陣の宿から抜け出して自分のロッジに寄ったりしていた。あたしには〝社長業〟は無理で、はやり一人フリーランサーがお似合いと再認識した。島ロッジでは薪ストーブの炎と、写真のベランダ自作長ベンチで寛ぐのが癒しだった。鳥のさえずり、風と波の音を聴きながら読書やお昼寝~。

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平成を振り返る(1) [政経お勉強]

sihonminsyu1_1.jpg 先日、ウォシュレットがらみで水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』をちょっと紹介したが、同書と共に、同氏+山口二郎共著『資本主義と民主主義の終焉』も入手。同書を参考に平成を復習し、己も振り返ってみたくなった。(ウフッ、閑なんですよぅ)

 まずは平成元年(1989)。消費税3%。中国「天安門事件」。海部内閣時に「ベルリンの影」崩壊。日経株価3万8915円。世界のトップ企業10に日本の7社がランクイン。バブル絶頂です。(1990年に三菱地所がロックフェラー・ビル群を買収。横井英樹が1991年にエンパイア・ステート・ビルを買収)

 日本に脅威を感じた米国が焦った。日本に巨額の公共投資を強い、日米構造協議で日本の流通システム、大店法などの市場開放を要求。結果、大型スーパーの出店規制が緩くなって、やがて町の商店街がさびれて行った。さらに日本の黒字分を武器購入で埋め合わせする〝オフセット戦略〟(戦力相殺戦略の一環として日本に精密誘導兵器などの導入を強要。これは後の安倍・トランプによる高額兵器購入の〝第3次オフセット〟へ至る。不動産面では現在、東急不動産・三井不動産・三菱地所などがニューヨークに進出している)

 小生:新宿御苑前の倉庫上の事務所から「市ヶ谷・佐内坂マンション4階」へ移転。幌型ランクル40からランクル60系へ乗り換え。スタッフも7名に増えてバブルに乗っていた。

 平成2年(1990)、日経株価2万円割れでバブル崩壊(金融緩和+公共投資拡大によるカネ余りが原因)。東西ドイツ統一。小生:主仕事が音楽業界でバブル被害は少なく、個人オフィスを外堀沿いにも設ける。ゴルフ会員権購入(会員権売買会社のPR誌編集もしていて~)、伊豆大島ロッジ用地購入。共に購入後にバブル価だったと知るも後の祭り。ゴルフ会員権はラウンドする度にドドォ~ンと下落。

 平成3年(1991)、宮沢内閣。イラク湾岸戦争勃発。小生:大島ロッジが出来、スタッフ7名を連れて大島で忘年会を恒例化。仕事が終われば日夜新宿で飲み歩く日々。平成4年(1992)、PKO協力法成立。小生:事務所にレイアウトが出来る高級ワープロに加え「Mac」2機導入。

 平成5年(1993)、土井たか子率いる日本社会党マドンナ旋風。細川内閣誕生。EU発足。1ドル100円割れ。新日鉄がホワイトカラーを含む7千人を人員削除。リストラなる言葉が定着。小生:バブル崩壊に関係なく、主クライアントのレコード会社が時流に乗り遅れて一気凋落。佐内坂と曙橋の事務所を整理して幡ヶ谷で移転。

 平成6年(1994)、羽田内閣から村山内閣へ。平成7年(1995)、阪神淡路大震災。地下鉄サリン事件。1ドル=79.75円(超円高)。日経連が「新時代の『日本的経営』」で労働者を幹部候補と専門職と派遣社員に分類。非正規雇用が増加。小生:事務所経営厳しく1/6は大島暮らしで、薪ストーブの炎に癒された。

 平成8年(1996)、橋本内閣が日本版金融ビッグバンを提唱。個人でも為替取引可能、取引上限を撤廃、電子取引可能(結果、外国投資家が電子取引で参入)。住宅金融専門会社8社の不良債権処理に6850億円の公金資金投入。平成9年(1997)、消費税5%。銀行や証券会社が相次いで破綻。平成10年(1998)、小渕内閣。金融再生法執行。日本長期信用銀行破綻。

 小生:事務所を幡ヶ谷から大久保へ移転。社員を整理し、その事務所(中古マンション)を購入して自宅にする。再び一人フリーから再出発。年齢相当で音楽仕事も演歌中心へ。パソコンで経理すべく「Windouws」に切り替え。

 平成11年(1999)、EU統一通貨ユーロ導入。森喜朗を経て、平成13年(2001)に小泉純一郎内閣へ。小生:振り返れば、フリーランサーから〝会社ごっこ〟をしたが、日本経済の激動に揺り揺られ。再び一人フリーに戻って再出発。あたしは〝社長業〟より、職人っぽい仕事のやり方が似合っている。

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『スモール イズ ビューティフル』第三部 [政経お勉強]

sayugyakuhan.jpg 「開発」について。途上国は概ね「二重経済」になっていると指摘。開発されるのは約15%の都市部近代化(工場)。残り85%は開発とは無縁の農村・小都市。その結果、都市への「大量移住と大量失業」が生まれる(ウム、中国ニュースでよく見る現象だな)。

 この「開発の弊害」を生まぬためには「開発=モノ」と考えず「人間の教育、組織、規律」から考えるべきだろう~と指摘する。「貧困主因=教育・組織・規律の欠如」だからで、それら三つを段階的に進化させて行くのが真の開発政策ではないか~と説く。粗野な唯物主義者による開発は「大量移住・大量失業」を生み、開発の妨げにもなる「二重経済」を止めて、都市と農村を含む国民全体を巻き込んだ真の開発政策が必要ではないかと説く。

 第二章は「中間技術の開発を必要とする社会・経済問題」。第三章は「200万の農村」。ここでは貧しい人はさらに貧しくなり、豊かな人はさらに豊かになる問題が分析されている。だがそこで問題とされているのは1970年代のこと。同章を読んでいると、小生はアフガニスタンで銃殺された中村哲医師による砂漠を緑地・農地化した灌漑・農業支援を活動を想起した。

 だが現代の格差問題は当時と大きく違っている。電子金融空間=キャピタルゲイン+金融のグロバリゼーションによる資本主義構造変化によって、さらに激しい格差拡大が起っている。著者の時代と、現代社会が抱える問題との時代的ズレを感じざるを得ない。

 またインドの諸問題も指摘だが、現在のインドは「IT企業」が発展し、多数のデジタル系優秀人材も輩出。「高学歴技術=知的経済」が力強く推進されている。さらにはこの書の著者「シューマッハー」とガンジー思想を受け継いで「スモール・スクール」(1982年設立)や「シューマッハー・カレッジ」(1991年設立)を創設し、エコロジー&スピリチュアル雑誌「リサージェンス(再生)」編集長のサティシュ・クマールも世界各国で核兵器放棄などを説くなど活躍中。また中国への言及も、現在は大きく様変わりして新たな問題が出ていて、同書のお勉強は最終部「組織と所有権」を含めて、この辺で区切りとしたい。

 次はウォシュレット普及で言及した水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』で現在経済のお勉強に移りたく思います。写真は意図的に同書表紙の「色変換+左右逆版」~。

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『スモール イズ ビューティフル』第二部 [政経お勉強]

gtakuhann_1.jpg 第二部「資源」の第一章は「教育」。社会が複雑、発展するに従って原子力の危険性、環境破壊、気候変動、遺伝子。デジタル工学、商業主義の弊害~等「教育の重要性」が増す。文化的知識と科学的知識の両方を深め、かつ両者の溝を埋める英知、それら価値を伝え合う能力も求められて来る。

 それは言うまでもなく「言葉=観念=思想」。観念で考え、観念を使って、倫理を磨く。人類の最大の資源は教育です。その地位が崩れると、人類は衰退する。(小生は、爺さんになってから初めてスェーデンの少女グレタさんに刺激されて「異常気象・地球温暖化」を少し勉強した。この歳になっても知らないことばかり。チコちゃんの〝ボーっと生きてんじゃねぇよ~〟の叱咤が聞こえた来る。認知症と闘いつつ、死ぬまでお勉強です。

 次は「正しい土地利用」について。物質資源のなかで最も重要なのが「土地」。人は昔から繁栄=領土拡大で、常に恵まれた土地を求め、天然資源を収奪し、枯渇させ、破壊してきた。この繰り返しでは人類の未来は余りに暗い。「正しい土地利用」を学ばなければいけない。土地は人間の次に大切な資源ゆえ、「土地の利用」は技術的、経済的唯物主義で捉えてはいけない。「形而上学的」に考えるべきです。そこを熟考すると「人間の生き方のすべて」も見えてくるでしょう~と指摘する。

 「工業資源について」。例えば米国工業は、国内資源だけではやって行けず、原料と燃料を求めて世界中に触手を伸ばしている。工業国にとって重要な再生不能な天然資源は19種類ある。それらは年々枯渇し、コスト高になり、産出国と消費国との間に政治的問題(紛争)が生まれる。

 この問題が真剣に考察されないのは「石炭が終われば石油がある。それが終われば原子力がある」なる安易な考えがあるからだろう。(イギリスが北海油田を開発したのが1960年頃。米国がシェールガスを開発したのが1990年代)。資源の枯渇は、自然破壊につながる。原子力を使えば何百年も消えぬ放射能廃棄物を抱え込むことになる。以上、従来からの考え方を変えなければ、人類は衰退の一途~と著者は警告している。

 経済が繁栄しても、そこの「安全性の確保」がなければ、全生物に計り知れない危険が襲う。それは「生命」への冒涜になり、人間がそれまで犯してきたどんな罪よりも重いと言えよう。また文明がそんな罪の上に成り立っているとは考えたくもない。

 自然本来は、自ら成長・発展をどこで止めるか(枯れたり、死んだりを~)を心得ている。だが技術に支配された人間には、その止める力がない。均衡・調整・浄化の力がない。そんな心で技術開発された繁栄の裏には、必ずその反映としての貧困がある。さて、正しい人間の顔をもった技術開発は可能だろうか~と問う。次は第三部「第三世界」。写真は意図的に反転(ペイント利用)です。

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『スモール イズ ビューティフル』第一部 [政経お勉強]

small_1.jpg 先日、テレビ「欲望の資本主義2021」(1月1日の再放送?)を途中から観た。そこで語られていたのは1973年(昭和48年オイルショックの年)刊のE・F・シューマッハー『スモール イズ ビューティフル』で指摘されていたことがベースになっていると思った。同書は当時「現代の預言書」と評されたベストセラーで、今も「古典的論考」と注目され続けているらしい。

 1973年はオイルショックの年だ。小生はフリーランサーで、それまで順調だった仕事がピタッとなくなった。外注の印刷代も払えず、新聞求人広告で高給を謳っていた新宿のキャバレーで働き出した。

 今のコロナ過では、フリーランサーにも支援金・給付金があるそうだが、当時はそんな生き方を選んだ者は「自己責任」で、またその覚悟で選んだ道だった。夜の世界から従来の仕事に復帰後は、役所や大企業就職の同年配に負けてなるかと必死に働いた。世はやがてバブルへ向かい出した。

 同書はそのオイルショックで顕在化した資本主義・工業経済・民主主義〝終焉の兆し〟に注目し、そこに巣食う過ちから「新しい経済学」が模索されていた。未だ巨大企業GAFAによるネット社会に至らずも、同書で指摘された従来経済学の過ちは、今も通じる貴重な警告になっている。今、オイルショックの同書刊行から48年後の「コロナ過」で、遅まきながら同書新訳の文庫(講談社学術文庫)入手で、改めてお勉強です。

 第一部「現代世界」第一章は「生産の問題」。著者はまず、代替不能の自然資産(化石燃料=石炭、石油、天然ガス)の凄い勢いでの使い捨てを警告している。結果、地球は気候変動で危険な状態に陥り、その代替えで原子力を稼働させれば、いつまでも消えぬ放射性廃棄物を抱え込むことになる。そんな「永続性なき経済」が良いワケがなく、新たな「経済学」が必要だと説く。

 豊かさの追求=平和の途~と安易に認識されているが、富んだ国の裏には常に貧しい国・人がいる。ひたすらに富を求める唯物主義の拡大主義は、自己抑制を忘れて「永続性・平和・環境」と折り合えず、その成功=災いになっていると指摘。

 著者は今後の経済学は、人間を環境ぐるみで考える「超経済学」が必要だと訴える。従来は労働=コストで、オートメーション(機械化)でコストゼロを目標にしてきたが、大きな間違いだろう。今後は人間活動に不可欠な財=空気・水・土壌・鉱物などを含めた自然界すべての存在を認識した経済学に変換しなければ先がないと警告しる。

 そこで著者は注目したのが「仏教経済学」。仏教的観点からの労働は、欲望を増長するためではなく、人間性を純化させることと捉えられている。自分の能力を発揮・向上させ、他人と共に働くことで自己中心的な態度を棄て(慈悲心を養う)、仕事を通して人間性、人格を向上させる舞台と捉えている。しいては解脱(悟り)をも得る場と考えられている。

 唯物主義はコスト追及で、勢い輸出輸入も活発化し、国家間の争いも生む。国の繁栄=領土拡大で、産業も企業も規模が巨大化方向で、物流・通信技術の発達、大都市集中、大量失業を生む。だが仏教徒は、地域社会の中での自給自足の暮しを求めている。再生不能財を贅沢に消費するのは暴力行為と考えられると提案する。以上が第一部・五章の要約。

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ウォシュレットと資本主義終焉の話 [政経お勉強]

bennza&sihonsyugi_1.jpg ブログに「温水洗浄便座(ウォシュレットはTOTOの商品名)」設置を記し、次に新書『コロナ後の世界に生きる』をまとめたら、ウォシュレットが『資本主義の終焉と歴史の危機』(水野和夫)に結びついていて、いささか驚いた。

 同書には1行ほどの記述だったが、2014年の発売期のニコニコ動画内「紀伊国屋チャンネル」で氏がインタビューに応えて、ウォシュレット普及から「資本主義の終焉」を確信したと云うエピソードを語っていた。その概要は~

 歴史学者ブローデルが資本主義の転換期検証で、イタリアの「長い16世紀」分析に、こんなエピソードを記されていたと~。ドイツからのイタリア旅行者が、ジュノヴァへ行ったら、山のテッペンまでワイン畑が広がっていたのに驚いたそうな。当時のイタリアは金余りで、お金の使い道(投資先がなく)、それゆえに山のテッペンまでワイン畑が広がった。

 水野氏は、同文が頭の中にあった時に、親しい日経の方にこんな話を聞いたそうな。「JR網走のトイレが立派な温水洗浄便座だった。野沢温泉の山頂へ行ったら、そこのトイレも立派なウォシュレットだった」。「あぁ、日本は地の果てから山のテッペンまでウォシュレットが行き渡っているのだ」。他にお金の使い道がなくなってのトイレ施設の充実化。

 そう思えば知らぬ間に新幹線も高速道路も次々に伸びて、空港も1県に数施設が出来ている。資本の使い先がなく(低金利になって)過剰投資状態になっている。資本主義の基本=金利がゼロになって、資本主義が終焉を迎えていると確信して、同書を執筆したと語っていた。

 資本主義は、13世紀にローマ教会によって利子率が公認されて始まった。資本主義=金利だが、その金利が今はゼロになって久しく、資本主義が終焉を迎えているのでは~の考察が同書にまとまったと語る。

 そう説明されて、小生も納得する事が多少ある。ウチから新宿3丁目へ向かう明治通りに、オリンピック客を目論んでのホテルが次々に建った。だが日韓関係がこじれて韓国旅行者が消え、次に中国観光客が消え、コロナ過でオリンピック延期、インバウンドの姿も消えた。「可愛そうに、これじゃ経営ままならぬだろうに~」と思っていたが、それでも今、ホテル建設が始まったいたんだ。オリンピックも中止だろうに何故・何故と思っていたが~。テレワークでオフィス出勤7割減にかかわらず、東京は相変わらず超高層オフィスビル林立も止まらない。

 ホテルも超高層オフィスビルも需要がないのに次々建設は、資本主義の基本=金利ゼロで、かつ他に投資先もなく滞った資金がこれらに注ぎ込まれている~と了解した。肛門に心地よい温水を浴びつつ、その辺の書を読んでみましょうかねぇ、と思っている次第です。

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『コロナ後の世界を生きる』熊さん風まとめ② [政経お勉強]

byousitusora_1.jpg さて八っつぁん、今度は日本だ。「7年一強」の安倍政権が、コロナにまったく無能を晒らした。「アベノマスク」、『うちで踊ろう』コラボで自宅で寛ぐ動画アップ~。長屋の皆も「この人、頭狂ったのかしら~」と驚き、誰かが「こんな人が政治をやっていることが緊急事態」に大爆笑した。

 八「自民党議員の4割が世襲議員。高額な税金収入で代々暮して来た輩らに、政治が出来るワケがねぇ。加えて爺さんの多いことよ。時代はとうに変わっているのに、彼らの頭には戦後の高度成長経済ばかりが残っているみたいで、新たな時代センスが微塵もない。

 そんな彼らが官僚人事を握り、忖度役人ばかりが周囲を固めている。右翼団体の「美しい国」を、自身の政治標語にするような首相の下で「憲法に緊急事態条項を入れる」など許せるワケもない。コロナでは厚労省も体たらく。医系技官を抱えた独特の省庁とかで、他者の話を聞かず。融通効かず。臨機応変・スピード感もない。そのなかで知事らがクローズアップも、知事と国の責任なすり合い。経費負担の駆け引き。元官房長官・菅総理が誕生したが、この方はとても総理の器ではなく、リーダーシップ欠如で、コロナ対策は後手後手。就任数ヶ月で早くも不支持率が上回った。この先の日本はどうなるのだろうか~。

 彼らは、未だコロナより「東京オリンピック」に執着。その五輪も「選手ファーストならぬ政治ファースト」が透けて見える。アスリートらが、政治から独立する覚悟をもって奮起するなぁ~んてことも出来そうにない。

 オリンピックと云えば巨大建築だ。街は「超構想ビル林立」の勢い止まらず。それでいて今は、オフィスいらずのリモート推奨の矛盾。ハコ=空調・石油。私たち世代の子供時代は、夏は縁側で、狭いながらも庭を造って涼んでいたもの。だが今は気候変動・地球温暖化で夏にエアコンなしでは死に至る。

 小泉進次郎が、気候変動阻止への脱炭素社会へ動けば「それで経済成長ができる~」と菅総理が乗ったとか。やはり根本がズレている。すでに民主主義も資本主義も老化・衰退に向かっている。民主主義は米国のトランプの例からも読み取れる。為政者は「そんなものは形だけあればいい」と嘘ぶいている。少数が世界の資産のほとんどを独占し、実体の伴わない株価上昇。格差は地域・人種に及んで限りなく広がるばかり。日本のコロナ禍ではシングルマザーと子供達、派遣社員、さらには医療従事者、介護福祉関係者へ厳しいシワ寄せ。非常事態宣言で飲食関連者がピンチを迎えている。

 コロナは「ボーダーレス」感染も、その対策はそれぞれに歪みを抱えた国家間の「ボーダーフル」対応で、世界は疲弊するばかり。それでも世界はペスト、新大陸に持ち込まれた梅毒、コレラ、スペイン風邪~と何とか克服して、その都度、新しい世界を築いてきた。コロナもいずれは収束し、その後にニューノーマル(コロナ後の世界)へ向かうのだろう。

 新たな民主主義・資本主義は、シングルマザーと子ら、派遣社員ら、苦学生ら、さらにはエッセンシャルワーカーを守る体制、テレワークなどの新たな働き方、自然を大事に、自然と共に暮らす道へ進むような気がしないでもない。同じ意で「経済」もまた利益追求型概念はもはや通用しない。例えば環境を守る投資は不経済ではなく、国民総生産向上も人類の幸せ指数にならない。それを「超経済学」と云うそうな。

 政治家もまた、今の爺さんらに引退していただき、例えば台湾のIT担当大臣のジェンダーレス、オードリー・タン氏のような新しいタイプの新人類で形成されるのが望ましい。シューマッハー著『スモール イズ ビューティフル』では慈円『愚管抄』より~8万歳から10歳に歩み下り、再び10歳から歩み始める~が紹介されているとか。人類はこのコロナをどう収束させ、どんな新しい世界を歩み出すのだろうか。そこに希望を抱いて、この項を終わります。写真は尿道カテーテル・点滴装着で、以上を考えつつ入院病棟から見ていた新宿の夕陽。 

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『コロナ後の世界を生きる』を熊さん風まとめ① [政経お勉強]

covid-19_1_1.jpg 先日の15日間入院中に岩波新書『コロナ後の世界を生きる』を読んだ。各界の一人者24名の原稿を掲載。それを一人(長屋の〝熊さん〟)の意見としてまとめてみた。

 人間てぇのは困難が立ちはだかると、すぐ楽観主義になって現実逃避したがる。第二次大戦だって大本営が「楽観と空威張り」発表で、マスコミもそれを垂れ流し、長屋の誰もがそれをすっかり信じまいやがった。

 手前の考え・意見を放っぽり出して「欲しがりません勝つまでは~」。我慢に我慢で抑えつけられて、終戦と同時に「はい、今日から民主主義です」。それまで抑えつけられたエネルギーが、そこに向かって一気爆発。日本人ってぇのは、そんな歴史を持っているんだ。苦しさ・貧しさ・厳しい制約から、新しい価値の出現に大衆こぞって盛り上がるてぇのはロシア革命、ナチス独裁も同じだな。

 で、今は新型コロナの感染拡大だ。日々の感染者数発表に一喜一憂だが、人間ってぇ奴は誰もが「自分が世界の中心」で、感染するのは何処かの誰かさんだと思う。そこで肝心なのが「遠くの誰かもかけがえのない存在。自分もまた地球上の何千億の一人」という「魂の想像力」を発揮すること。八っつぁん、ちょっと難しくなったがわかるか。八「感染するのは他人ではなく、手前ぇもその危険の中にいると認識するってことだな」

 想像力に併せ、観察力も大事だ。コロナ感染によって、今まで隠されていた社会の歪み~、例えば人種・貧富の格差(白人・黒人のコロナ死亡率2倍とか)、少数の資産独占(特にGAFA巨大化)、気候変動、医療体制、産業形態、無能力政治家の姿などを浮き彫りにしている。それらをよぉ~く観察しろってぇことだ。

 コロナ感染の今こそ首相のリーダーシップが必要って時に、今まであれほど偉そうにしていた首相が、何にも出来ねぇ。さらに平気で嘘をつく、自分都合で改竄もする狡さ~とんでもねぇ輩だとわかっちゃった。

 いま世界は「ポピュリズム」の時代で、グローバリズム(産業・貿易・観光・人の移動~)で、ネット社会だ。長屋の爺さん婆さんらもスマホに四苦八苦。ネットで「情報の世界共有化」は歓迎だが、どうも、あの「SNS」ってぇのが良くねぇ。短文で乱暴に人々を煽り、人々も性急に答えを求める。そこには寛容さ、多様性もない。(トランプの扇動で、彼の信者らが連邦議会議事堂に乱入。1月8日にTwitter社は暴力扇動の危惧から氏のアカウントを永久凍結。彼らの交流サイト「パーラー」をアマゾン・コムが停止した)

 その結果、世界は今「自国第一主義・権力化・分断社会・人権や貧富の格差~」が一段と顕著になっていらぁな。民主主義の脆さ、衰退~。これでは、他者を理解し、他者との連帯感満ちた社会・未来は遠のくばかり。コロナはまた「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保ちつつ連帯感を築くという二律背反の難しさを迫っている。

 その中で人々は今「自分中心で世界が回っている=近さの幻想」から離れ、「遠さに覚醒」する難しい課題に迫られている。「自分も脆弱」を立脚点に、世界の脆弱な人々と如何につながって生きて行くか~。ちょっと難しくなったので次回へ続く。

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前立腺癌生体検査から温水洗浄便座 [暮らしの手帖]

senjyobenza1_1_1.jpg 予期せぬ15日間に及んだ入院生活を終え、フラフラと徒歩帰宅中に「そうだ、温水洗浄便座」を設置しようと電気屋へ寄った。トイレ内に電気コンセントがなく、その工事と便座で計55000円也。

 入院中の15日間で「ソノ」の快感を知っちゃった。入院生活は何故か「ペニス(小便)+肛門(大便)」意識の日々。そもそもから記そう~。

 新宿区の健康診断で「かかりつけ医」の女医(以前に大腸癌検査・ポリープ切除の大腸検査=肛門から内視鏡を突っ込むを勧められた)から、今度は「PSA値」が高いゆえ「前立腺癌」検査を受けるように促された。春の検診で言われて無視。そして年末の健康診断でも言われて大病院「泌尿器料」ヘ。「2泊3日」の生体検出検査を受けることにした。

 さて、その手術でどうも不手際があったらしく「血液に大腸菌混入」、退院予定前夜に高熱でブルブルと震えて意識が飛んだらしい。気が付くとペニスに管(尿道カテーテル)、腕に点滴が装着されていていた。若く美し優しい女性看護師による「陰部洗浄」もあったりの15日間入院。尿の量と点滴の量(通常点滴の他に解熱・抗生物質の点滴もプラス)の管理。「尿道カテーテル」が外された後は、自分で尿量と便を記録させられた。

 小生の初入院は、かくして〝陰部中心〟に相成り候。そんな15日間にお世話になったのが「温水洗浄便座」。なんとも気持ちが良く爽快なり。我家も遅まきながら「温水洗浄便座」設置となった次第。仕事では活字~写植~デジタルを経たが、便所もまた戦後実家の汲み取り~水洗~温水洗浄便座を経て、やっと現代人になった気分だ。

 病院から息子へ「尿道カテーテル」装着の旨をメールすれば、「何言ってやがんだ。俺は8歳の頃に経験しているぞ」と言われた。「温水洗浄便座」も彼の家ではとうの昔からで、我家もやっと〝今風〟です。

 おっと「前立腺癌の生体検査結果」は「癌にあらず」でホッ。15日間の入院はまさに「陰部=尿・便(ペニス・肛門)」の日々。病気ってぇのは「食う・排泄」由来が多いのだろう。一般病棟とはいえコロナ禍で医師・看護師不足の中でお世話になり「感謝の日々」でもありました。

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鏡花⑦雑司ヶ谷霊園を掃苔 [牛込シリーズ]

kyoukahaka1_1.jpg 大正14年(1925)、泉鏡花52歳。春に『鏡花全集』15巻の刊行開始。芝の紅葉館(青山光子が16歳まで奉公していた)で知友80余名が集まって祝宴。昭和8年〈1933)60歳。実弟・斜汀が何をやっても上手く行かず、家まで差し押さえられて徳田秋声のアパートへ若い妻と転がり込んで、間もなく負血症で急死。

 昭和14年(1939)66歳。佐藤春夫の甥(姉の子・竹田龍児31歳)と谷崎潤一郎の長男・鮎子(24歳)の結婚に鏡花夫妻が媒酌。同年9月7日、鏡花、胚腫瘍で卒去。枕頭の手帖に鉛筆で「露草や赤まんまもなつかしき」が絶筆。病床の露草から、犬蓼の花(赤まんま)を思い出して詠んだ句らしい。

 弊ブログで取り上げた文人らについては、概ね掃苔している。泉鏡花の墓は「雑司ヶ谷霊園」。墓地区域は「1-1-13-33」。道路側の番号標識の中へ10数m入った処に俳優・大川橋藏墓、その奥に「泉鏡花墓」があった。掃苔したのは11月末。落葉が溜っていたが、今なお美しい〝紅葉〟に抱かれているようだった。

 墓は小村雪岱構成、笹川臨風の書で「鏡花泉鏡太郎墓」。背面に「幽幻院鏡花日彩居士 昭和十四年九月七日没享年六十七 清次長男 俗名泉京太郎」。通夜に集った佐藤春夫はじめ文人らが考えた戒名とか。隣にすゞ夫人の戒名「眞女(如?)院妙楽日鈴大姉 昭和二十五年一月二十日没享年七十 泉太郎妻俗名すゞ」。さらに側面には祖父、祖母、父、母、弟の戒名、亡くなった年月と享年が刻まれていた。

 図書館から借りた関連書は返却済で、手許には中央公論社「日本の文学/尾崎紅葉・泉鏡花」、岩波文庫『婦系図』(前後篇)があるも、小生は熱心な読者ではなく、その文学に言及はできない。日夏耽之介が鏡花世界を評して「拵えごと」と記しているそうだが、関心抱けぬのもその辺にありそう。幾編を読んだ感想は、美人日本画のシュールっぽい多彩仕立て~と解釈した。物語設定、登場人物、ドラマ展開に無理・不自然があるも、そんなことにお構いなしの細密描写でフィクションに真実味を生みつつ押し切って一服の絵を完成させているような~。文学ではなく〝文芸〟が相応しいのか、本人の信条も「〝芸〟と名のつくものは、楽屋をさらけ出したらもう仕舞いです」

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鏡花⑥嵐山光三郎『文人悪食』 [牛込シリーズ]

akujikikyoka.jpg 前回は泉鏡花の麹町旧居について、各氏記述文を紹介したが、同じ方法で嵐山光三郎『文人悪食』(37名の文人の〝食のこだわり〟を各氏記述をまとめた書。(氏は『悪党芭蕉』で第34回泉鏡花文学賞を受賞)で、鏡花の黴菌恐怖症=超潔癖症が異彩を放っていた。

 同書から鏡花の潔癖症(黴菌恐怖症)ライフを簡単に紹介してみる。黴菌恐怖から「腐」を嫌って「豆腐」を「豆府」と書いた。「豆腐・大根おろし」も煮沸滅菌してから食った。寺本定芳が「先生宅の焙じ茶の味は格別で、誰もが二度と忘れない美味」と記しているが、それはほうじ茶も番茶もグラグラと煮立て、塩を少し入れての滅菌お茶だった。

 晩酌は二合ほどで、当然ながら熱燗で消毒。熱くて持てぬ徳利、唇が焼けるほどの熱さ。旅行には煮立てた熱燗を魔法瓶に入れて携帯。画家・岡田三郎夫人が見かねて、固形アルコールランプを進呈したとか。魚は当然ながら刺身ダメ。食すは白身の上物のみ。肉は鳥。春菊は茎の穴に〝はんみょう(毒虫)〟が卵を産み付けているとして絶対に食べなかった。虫が食うソラマメもダメ。

 文人仲間と鍋を囲む際は、しっかり煮込んでから食すために他者と境界線を設定し自分領域を主張とか。木村家のアン抜きアンパンが好きだったが、表裏をあぶり、指でつまんでいた部分を最後に捨てたとか。畳でおじぎをする際は、畳に手が触れぬように手の甲を浮かせた。巷の便所は小便がはねるから使わず。常にアルコール携帯消毒綿を常備して手指の消毒を欠かさず。

 『蠅を憎む記』で黴菌の恐怖を記しているそうな。自宅の土瓶や煙管の吸い口には、夫人手製の千代紙を丸めたキャップ(栓)付き。蠅への脅迫観念から、執筆前に原稿用紙上に蠅が飛べば、清めの水でお祓いをした。訂正した文字は黒々と塗りつぶし、その文字霊を抹殺した。蛇や蛭や化け物を描きつつ、それらと真逆の潔癖生活から耽美文芸を生んだ。

 同じ耽美小説に谷崎潤一郎がいるが、彼はヌラヌラしたものが大好き。ヌメヌメ・ドロドロを舐めて、フニャリとするものが好き。生肉が好き。性愛=舐めるの陶酔境地を記している。

 泉鏡花の潔癖症・黴菌恐怖症は、母28歳の死、同じ紅葉門下・小栗風葉のコレラ罹患、嫁ぎ先で二人の子の赤痢看病によって32歳で亡くなった妹、実弟・斜汀の妻の結核、そして自身の30歳頃に赤痢に罹って胃腸病~などの影響があったらしい。

 昨夜の正月テレビで、世界の知識人らが極度の潔癖症は利他拒否、利己主義になりかねないと語っていた。スペイン風邪の大流行と共に終わった第一次世界大戦。米英仏独の4ヶ国協議の最中に、米国大統領ウィルソンもスペイン風邪で39.4の発熱で入院。その間のヴェルサイユ条約でドイツは巨額賠償を負った。ドイツはそこからアーリア人中心の国家(潔癖主義)を目指し、そこから人種主義(他民族迫害、自民族をも選別)に結びついた狂気のナチズムが台頭した。

 自然や人体は黴菌があってこそ成り立つ仕組み。コロナ感染から過度の潔癖主義、短文で煽る危険な方向に進まぬように警戒しなければいけないと言っていた。最後に泉鏡花の晩年~掃苔。

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