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平岩弓枝「狂歌師」 [大田南畝(蜀山人)関連]

hirayamahon_1.jpg 近所のブックオフでかかぁが100円で買った文庫本。6編の小説掲載で最初が「狂歌師」。大好きな大田南畝(蜀山人)テーマの小説(フィクション)で面白く読んだ。だが史実の方がもっと面白いんで、これを機にカテゴリーに「大田南畝」を設けて隠居酔狂を加えることにした。まづは同小説概要…。

 新吉原の大文字屋の寮で酒宴が始まってゐた。楠木白根は、俄かに江戸随一となった「狂歌師・曙夢彦」の振る舞ひに不快が募る。夢彦の本名は直次郎で料亭「江戸善」次男坊。楠木こと小島源次郎は、師の内山賀邸から称賛された狂歌に熱を入れた。それまで文芸的評価の低かった狂歌を高めようと熱中。明和6年に自宅で初の狂歌会を催し、そこに直次郎が顔を出した。「あいつに狂歌を教えたのは俺ではないか」と思うが、直次郎の軽妙洒脱な狂歌が大人気。

 楠木は編纂中「狂歌若菜集」で曙と朱楽管江の作品を故意に削除。さうと知った曙と朱楽は対抗して「万載狂歌集」を同時発行。評価と人気は圧倒的に直次郎編の狂歌集に。この競作で狂歌と直次郎はさらに大ブーム。波に乗り遅れた楠木は不遇をかこい貧しさも底を打った。高田馬場で月見を兼ねた狂歌会に珍しく楠木が出席。作者名を伏して優劣を決めようと提案した。楠木の貧しさを垣間見た直次郎は、彼に花を持たせるべく平凡で目立たぬ狂歌と思ひつつ、知らず内に辛い楠木の心になって詠んだ歌が、意に反して第一席になってしまふ。

 …と云ふ内容。さてここからが同小説の酔狂メモ(1)。まづはさわり…。「楠木白根」が「唐衣橘洲(からごろもきっしゅう)」だと云ふことがわかります。本名は小説と同じく小島源之助で安田家の70俵5人扶持の貧乏御家人。四谷は須賀神社裏の須賀町在住。一方、曙夢彦は小説では日本橋本石町の料亭「江戸善」の次男坊とありますが、大田直次郎、大田南畝、後の蜀山人がモデルだとわかります。彼もまた唐衣と同じく今の牛込中町在住「御徒」70俵5人扶持の下級武士。18歳で平賀源内に序文を書いてもらった「寝惚先生文集」でデビュー。小説で「曙夢彦」となったのは、この「寝惚先生」からでせう。大田南畝と云へば「江戸善」ではなく浅草山谷「八百善」です。彼が詠った「詩は五山(漢詩人の菊池五山)、役者は杜若(とじゃく、岩井半四郎)、傾はかの(遊女かの)、狂歌は俺、芸者はお勝、料理は八百善」は有名。こんな調子で遊んで行きます。

 なお短編「狂歌師」から26年後に長編「橋の上の霜」がある。これは史実を踏まえた上での愛憎・愛欲ドロドロ仕上げの物語。やはり南畝は女性作家に書かせてはいけません。この小説は本人脚本でテレビドラマ化もされ、(小生大嫌いな)武田鉄矢主演とか。観なくてよかったぁ。


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