少子化に負けるな鳰の浮巣かな [御苑カイツブリ物語]
大杉栄「自叙伝」を読んでいたら、かかぁが「おまいさん、本ばっかり読んでいるとブタになっちまうよぅ」ってんで、新宿御苑ウォークをすることにした。
今年は、その様子がなかったので繁殖なしと思っていたカイツブリだったが、いつの間に「浮き巣」ができ、親の羽の中から雛が顔を出していた。じっくり観察しなかったのでわからぬが、何羽孵ったのだろうか。
寝転がって読んでいた「自叙伝」の大杉栄は、葉山の「日陰の茶屋」で神近市子に刺された翌年(大正6年)に、伊藤野枝との間に長女・魔子が生まれている。大正8年に次女・エマ、大正10年に再びエマ、大正11年にルィーズ、大正12年に長男・ネストルが生まれた。自叙伝を読めば、刑務所に出入りする人生だったのに、まぁ次々とよく子を生んで立派だったこと。
一昨日(6日)の新聞に、昨年(2011年)の人口動態総計の結果発表があった。女性の第1子出産の平均年齢が30.1歳。初めて30歳を越えたとあった。瀬戸内寂聴は「美は乱調にあり」執筆に先立って「甘粕事件」で両親を失った遺児を福岡に訪ね、素敵な人生を歩まれている魔子さんらに逢っている。子は親がいなくも逞しく美しく育つが、日本はいつからか少子化、晩婚、高齢出産になってしまった。かく言うあたしんチも一人っ子で晩婚で、孫の顔を見ぬ。新宿御苑の鳰ことカイツブリの浮巣を見つつ、日本の末を考え込んでしまった。
鳰の子ら皐月の池で光浴び [御苑カイツブリ物語]
カイツブリ八重を見ながら抱卵し [御苑カイツブリ物語]
新宿御苑は「寒桜とメジロ」から「人混み・喧噪のソメイヨシノ」。そして落ち着いた風情を取り戻して「八重桜とカイツブリ抱卵」へと季節が巡った。
カイツブリは留鳥ゆえ季語さまざま。そのまま「カイツブリ・鳰(にお)」と詠めば冬。「鳰の浮巣」ならば夏。「息長鳥(しながどり)」や「八尺鳥(やさかどり)」と詠めば四季。芭蕉は<五月雨に鳰の浮巣を見に行む>で季重ね承知。あたしも自然そのまま八重桜とカイツブリを並べた。
抱卵時期は約20~25日。昨年は5月9日頃に四羽の雛が孵り、題して「御苑カイツブリ物語」として微笑ましい育雛(いくすう)光景を真夏前まで愉しませてもらった。昨年の浮巣は木陰だったが、今年は池ん中にポッカリ浮いて晒されている。さて、あの可愛い縞模様の雛らを眼にすることができるだろうか。
鳰の子や初の冬羽で春を待ち [御苑カイツブリ物語]
御苑カイツブリ物語・最終章(3) [御苑カイツブリ物語]
きのふのこと。「おまいさん、朝から寝っ転がって読書で、夜も寝っ転がってサッカーテレビかへ。足腰が萎えちまふよう」と言はれ、久し振りに御苑に行った。カイツブリが孵って推定37日目。さて、元気にしてゐるだらうか。ご覧下さい、こんなに大きくなりました。餌獲り潜水も堂にいり、木によじ登ったりの遊びも活発。それでもウリ坊のやうな縞模様は残ってゐます。写真は3羽も全4羽健在。一方、親鳥はと言へば、何と言ふことでしょう、浮き巣を補強し早くも二番子の営巣体制に入っぢゃないですか。
カイツブリの繁殖観察はこれにて完了。次はツバメの給餌風景を撮りませうか。3軒隣マンションのヒナらも大きくなってゐます。昨年は明治神宮・北池のロープに二組のヒナらが止まり、親ツバメがホバリングしながら給餌する可愛い写真が撮れましたから、また狙ってみませうか…。
御苑カイツブリ物語・最終章(2) [御苑カイツブリ物語]
子育て中の鳰(にお)、鳰鳥(におどり)、息長鳥(しながどり)、八丁潜り…ことカイツブリを見ていると、ひっきりなしの採餌活動。池の水生生物図鑑ができるほど、実にいろいろな小魚、エビ類を採っている。昨日のブログの赤い大きな生物も不明で、写真左もエビ類だろうが、見たことがない。「淡水生物図鑑」が欲しくなってきた。
親が子から離れて餌を採ると、それに気付いたヒナが他の子を出し抜くようにして親鳥に向かってまっしぐら。親の♂♀がそれぞれ餌採りで、見ていると4羽のヒナは塩梅よく均等に餌にありついているような。下写真はそんなシーンで、餌はカワセミもよく採る藻エビ系。
★100-400㎜のレンズフード(EF-83C)のネジ山摩耗か、ビツッと付かなくなって久しい。落下せぬようフードにガムテープ。面倒&みっともないとネット検索すればテープ止めの方も多い。70-200㎜2.8Fの花型フード(EF83)が付くそうな。フード径が大きくバッグ収納でガタが来る場合も多く、これを嫌う場合はフード径の小さなEF28-70・F2.8のフード(EF-83BⅡ)も付くとか。★鳥を撮っていれば、より長いレンズが欲しくなってくるのは自明。だが貧乏隠居の道楽にはこの程度のレンズでガムテープ付きがお似合いと諦観でもある。適わぬ機材で如何に撮るかの妙を覚えたら、レンズ欲の煩悩に陥ることもない。
御苑カイツブリ物語・最終章(1) [御苑カイツブリ物語]
カイツブリ親子を曇天の光の中で撮ってみたかった。鳥撮りは他にゐず静かなひと時。この静謐の感は、昨年同時期に、潮干狩りの方が消えた葛西の閑散とした干潟で、ひとり沖まで歩ひてコアジサシのダイビング撮りに興じた時の感覚に似てゐた。鳥撮り3年目にして初めて同個体を追った日々はちょいと好い経験…。
孵化から推定23日目。豆粒のやうだったヒナらが、こんなに大きくなった。孵化順で大きさに多少の差があったものの、4羽がほぼ同じ大きさに揃ってきた。昨日見た時は池中央の遠征から浮き巣に戻って休憩だったが、今日は浮き巣に戻ることは戻ったが、数分してまた餌採りに池中央に出た。巣離れだな。それにしても逞しき食欲。親が採るのは藻エビ、ザリガニ、大小の魚、正体不明の生物。親子共に貪欲。下写真は何を獲ったのでせう。大きすぎてヒナの喉には通らずで親が呑み込んだ。★大木戸門を出て花園公園へ歩いたら、先日記した三遊亭円朝の立派な旧居碑と史跡看板があったので、5月22日ブログに追加した。
カイツブリ16日目の4羽 [御苑カイツブリ物語]
御苑のカイツブリ、孵って推定16日目。6日前とそれほどの変化はなからう…と思ってゐたら大違ひ。6日前は木陰の巣からおずおずと親の周りを泳いでゐたのに、まぁ、広い池を自由自在に泳ぎまはってゐるぢゃありませんか。豆粒のやうだった身体も、こんなに大きくなった。小さい声ながら鳴き声も響く。カラスやダイサギが近寄ればパッと潜ってもみせた。後は自分で餌が獲れるかどうかでせう。まぁ、ここまで育てば4羽すべてが無事に育つだらうの逞しき成長。よかった・よかったです。
これからは、いかに良い写真を撮るか。これがなかなかに難しい。♂♀の親と4羽のヒナ…すべてをカメラに収めやうとすれば、必ず何羽かがファインダーから外れる。いいシーンと思へば光の塩梅が悪い。下手の上にせっかちで粘れない。いつか満足な写真が撮れませうか…。
十日目の鳰の雛らを見に行かむ [御苑カイツブリ物語]
ひな四羽とくいげ鳰の親姿 [御苑カイツブリ物語]
浮き巣「C」の抱卵中は撮るのを控へてゐたが、動画サイトに2度に亘ってアップされてゐた。花見の雑踏、天候不順も心配だったが、さて無事に孵ってゐるだらうかと久々訪ねみれば、カワセミ狙ひの方が既に6日前頃に4羽誕生を確認されてゐた。遠くて木陰。手持ち400㎜では厳しいが、双眼鏡で観察すれば、まァ、猪のウリ坊のやうな縞模様有り。♂が餌を獲ってくると♀の腹の下から4羽が顔を出す。橙色の嘴を大きく開けて餌をねだる。なかには早くも親に添って泳ぎ出すもゐ、親の背から顔を出すもゐる。
その内に餌を運ぶ♂が戻って来ても、♀の腹から子らは出て来なくなった。♂が手ぶらで帰って来たかと思へど、遠くから撮った♂をパソコンモニターで見れば、必ず川エビ系や小魚を咥えてゐるぢゃないか。きっと満腹になったのでせう。大きくなるに従って明るい所にも出て来て、可愛い姿を撮ることも出来さうです。うれしくなって発句。 「ひな四羽 とくいげ鳰(にお)の 親姿」