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仁部富之助著「野の鳥の生態」全五巻入手 [野鳥関連本]

nibuhon3_1.jpg 一昨日、近所の「ブックオフ」で、何という事でしょう!かの仁部富之助著「野の鳥の生態」全五巻をボックス入りで入手した。こんな素敵な本が、陳列棚の上にひっそり隠れるようにあった。しかも1800円。買う人もなく店も困り果てた呈で、この値段をつけたのでしょう。帰宅後に古本ネット検索すれば4~6000円相場。

 「日本野鳥の会」創立が昭和11年。中西悟堂が野鳥観察を始めたのが昭和に入ってからだが、仁部富之助はその前から野鳥の観察研究を自然誌などに発表していた我が国の野鳥研究の祖。

 明治15年、秋田県生まれ。秋田県農業高校を卒業し、農商務省農事試験場陸羽(りくう)支場(秋田県・大曲)に勤務しつつ野鳥観察を開始。冷害に強い稲「陸羽132号」を世に出すと同時に、大正3年から野鳥研究成果を次々に発表。翌4年の33歳で「郭公の蕃殖に関する研究」を日本鳥学会より出版。その地道・精緻なフィールドワークから「鳥のファーブル」と評価される。「野の鳥の生態」は昭和11年に1冊が出版。昭和16年から3年に渡って1巻、2巻、3巻を刊。昭和22年に64歳で亡くなったが、昭和54年にご子息・仁部正五の校訂で未発表遺作をまとめて全5巻が出版。それが13年後に我が手に入ったってこと。

 これからじっくり愉しみつつ拝読です。なお中西悟堂著「定本野鳥記」全16巻は鳥撮りを始めた3年前に読了。これは徒歩10分ほどの図書館にあるのでいつでも再読自在。これを機にマンネリ、停滞の鳥撮りにもう少し熱心になりましょうかねぇ。

 コメント返信:返信機能使えず、ここで新切鰺郎様へ返信。ツバメの絵を拝見致しました。お上手で羨ましい。東京・新宿でのここ五年間のツバメ初認記録など2014年5月8日に記しています。


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珍鳥ラッシュ!野呂邦暢「鳥たちの河口」 [野鳥関連本]

 どうやら鳥撮りの小説らしく、図書館で借りた。以下、物語概要… “彼”は退職後に干潟通いで鳥撮り百日目。“彼”は千ミリの望遠レンズを三脚にセットした。(おや、小説発表が昭和48年。その頃の千ミリとは? あった。レフレックス・ニッコール1000か…。) 今度は300ミリをセットで捉えたのはカラフトアオアシシギ。“彼”のノートにはこれまでに撮った珍鳥がリストアップされていた。ハシブトアジサシ、コウノトリ、ハイイロヒレアシシギ、ハイイロガン、ツクシマガン、ツメナガセキレイ、イワミセキレイ、オジロトウネン、オオノゴマ、そしてオニアジサシことカスピアン・ターン。(ツクシマガンはツクシガモのことかな)。

 “彼”は干潟80日目に散弾で撃たれ重油まみれのカスピアン・ターンを保護。病弱な妻との不機嫌な会話。鳥の餌のシバエビをくれた漁師との会話で、この干潟が埋め立てられることが説明される。さらに回想は遡り、“彼”の退職経緯が書かれる。放送局にカメラマンとして勤務の“彼”は、組合交渉中に局長とぶつかり、それが暴力行為告訴となり休暇・退職に至る。

 そして珍鳥ラッシュだ。鳥たちの体内に蓄積された毒素が脳細胞をむしばんで精密な方向感覚を狂わせたのだろうか…。道からそれた自身の人生。干潟に通い出した“彼”に、印刷会社・社長が写真集出版を約束するが、後に同社が不渡りをだす。“彼”はもう新たな鳥をみつけてもシャッターをおさない。明日から新たな生活を求めて都会に出る。

 そのとき、突然にハゲワシが襲ってくる。“彼”とハゲワシの壮絶な闘い。闘い終わったところに妻が癒えたカスピアン・ターンの籠を持ってくる。百日間の観察ノートを焚火にくべたあと、彼らは鳥を放つ。

 いやはや、最後にハゲワシとの闘いがでてくるとは腰が抜けるほど驚いた。このラストシーンもそうだが、局長の転倒する練習を目撃したり、妻との会話や、少年の筏作り、印刷会社の不渡りなど…仕掛けのわざとらしさが目障りな小説だった。芥川賞候補作で、同回は三木卓「鶸」が受賞。共に野鳥がらみとは稀有なこと。なお野呂邦暢は次回、第70回で「草のつるぎ」で芥川賞を受賞。その6年後、42歳で急逝。干潟は長崎県諫早湾らしい。

 川本三郎は「言葉のなかに景色が立ち上がる」の冒頭で同小説を紹介したが、景色より作為満ちた人がらみ物語が立ち上がってきて、あたしの好きな小説、作家ではなかったようだ。


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短歌俳句 動物表現辞典 [野鳥関連本]

utajiten_1.jpg 「鳥撮り」だから、本棚に多少の鳥関連本がある。あたしの場合は概ね新宿ジュンク堂の「動物棚」で購入だが、同書は「短歌・俳句コーナー」で出逢い求めた。確か鳥本にも短歌に詠まれた鳥をまとめた本があったが、著者「まえがき」に異を覚えて頁を開くことをしなかった。この本は大岡信監修「日本うたことば表現辞典」全9巻の再編集版のなかの「動物編」で、遊子館刊3300円。万葉から現代俳句の動物を詠み込んだ用例を膨大収録(図版も多い)で、野鳥の項だけでも鳥図鑑より詳しかったりする。

 すでに「御苑カイツブリ物語」で引用したが、万葉の時代から詠まれた野鳥和名・同義語の、なんと多彩なことよ。ここから日本の自然や日本語の豊かさ、日本人がいかに野鳥に親しく接し暮していたかも伺い知ることになる。江戸時代の飼い鳥ブームからだろう、輸入鳥の記述も多い。俳句人口はバードウォッチャーや鳥撮りの比にならぬほど膨大だろう。彼らがこうした歳時記を片手に句を詠んでいる。そこに人生、暮しを詠み込んでいる。比して今の鳥撮りの多くは「探鳥・鳥のパパラッチ」範囲で、文化や暮しとは無縁のような気がしないでもない。

 鳥関連本ではなく、この短歌俳句辞典に出逢って、これまでのライフリスト稼ぎで鳥撮りをしてきた「自身の鳥撮りスタンス」が微妙に変わってくるような気がする。


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本田カヨ子「わが青春の谷津干潟」 [野鳥関連本]

yatuhon.jpg 昨日朝刊で、NHK「たったひとりの反乱」が谷津干潟の森田三郎さんと知り、新宿図書館をネット検索すれば5冊の関連本ヒット。本田カヨ子著「わが青春の谷津干潟」が近所の戸山図書館にあり、午後には読了。すでに「谷津干潟の自然誌」とサブタイトルされた石川勉「東京湾の渡り鳥」が本棚にあるも、同干潟にこんな物語が秘められていたとは知らなかった。同書にはなぜか森田三郎の名なし。さらに言えば谷津干潟の公式サイトにも同番組の告知なし。なぜ・なぜ…。

 昭和49年、谷津干潟はゴミ捨て場に化していた。子供時分に干潟を遊び場に育った森田は、十数年ぶりに訪れた悪臭漂う干潟に衝撃を受けた。以来、ひとりでゴミ拾い開始。拾ったゴミを行政は回収せず。習志野市、千葉県、同干潟を所有の大蔵省、地元民を敵にしての、たった一人のゴミ拾い。そしてコアジサシやセイタカシギの繁殖観察。5年目にして地元主婦数名がゴミ拾いに参加し、地元民を巻き込んだクリーン作戦に発展。平成5年のラムサール国際条約登録までの長い長い闘い…。夜のテレビは同書からいくつかのエピソードをピックアップしたかの再現ドラマ仕立て。

 大田区の「東京港野鳥公園」もまた、住民たちが行政と闘って勝ち取った自然保護区で、その経緯は加藤幸子著「鳥よ、人よ、甦れ」に詳しい。いつだって敵は行政。役人が味方じゃないってぇのは悲しいねぇ~。あたしは谷津干潟に一度行ったが足が向かぬ。ここは被写体(鳥)と距離があって超倍率のスコープ向きと判断してのこと。また行ってみようかなぁ。


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氏原巨雄「オオタカ観察記」 [野鳥関連本]

ohtakahon_1.jpg 今年6月に明治神宮でオオタカ親子を撮ったので、図書館の同書に手が伸びた。鳥類画家が見続けた東京近郊での9年間のオオタカ繁殖記録。そのイメージで大きく思ってしまうが、実際は♀がハシブトカラス、♂はもっと小さくハシボソカラス大を再認識。

 繁殖は概ね以下…。2月にディスプレイフライト。3月中旬から交尾、数十回にも及ぶとか。4月に抱卵、1ケ月余で孵化、6月下旬に巣立ち、7月下旬に旅立ち。あたしが明治神宮で撮ったのは、巣立ち直前だったな。幼鳥の胸は縦班で、成鳥は横班になる。巣は同じのを補修して使う場合も、新たな巣を作る場合もあるとか。

 明治神宮でも同じ巣で繁殖するのだろうか。先日、例の巣を見に行った。木々の間から僅かに見えるのみ。探すのに苦労した。人目にさらされぬ巧妙な位置なり。

 同書には自宅近くのフィールドで各種小鳥の繁殖記録も掲載されている。改めて郊外在住者が羨ましく思う。東京場末生まれ、新宿暮らしのあたしが、野鳥の繁殖を垣間見るのは自宅マンション下の街路樹でのカラスだけ。目下、ハリエンジュの紅葉が始まって枯れ木になるのも間もなくで、針金ハンガーの巣の全貌が露わになるのを楽しみにしている。

 都心から郊外電車に乗り、さらにバスに乗るなどして鳥撮りポイントに行く度に、あたしは未知の鳥と同じくらいに、「郊外暮らし」への興味も湧く。


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小林照幸著「朱鷺の遺産」 [野鳥関連本]

tokinoisan_1.jpg 近所の「ブックオフ」で100円也。著者の最年少(31歳)「大宅壮一ノンフィクション賞受賞」の新聞切り抜きが数枚挟まっていた。あたしはこれに先日9月26日の新聞「トキ放鳥」の切り抜きを加えて読んだ。

 同書は後に「佐渡とき保護会」会長になる佐藤春雄の若き日から書き出されている。彼は昭和22年に飛翔する美しい朱鷺を見た。以来、糞を拾うなど地道な観察、傷付いた朱鷺の飼育、保護活動に心血を注ぐ。教頭~校長の道さえ断って、文字通り人生を賭けた取り組み。彼と同じく滅びゆく朱鷺に命がけで取り組んだ男たちがいた。しかし朱鷺は行政、学会領域に委ねられる。全鳥捕獲、人工飼育、繁殖の道。だが次々に死んで繁殖果たせず。2003年に日本最後の朱鷺「キン」死亡。そうした経緯を著者は佐藤の「朱鷺を鳥という視点のみではなく、失われゆく一つの生命への慈しみ」としての目、情熱で書きあげた。

 朱鷺を命がけで守ろうとした人々の姿を知って、わが「鳥撮り」を顧みる。あたしは本当に鳥が好きなのかしら…と。読書中にに野鳥写真家・嶋田忠氏紹介の新聞記事があった。彼のコメントがこう書かれていた。「鳥の写真を撮る理由は、猟師と同じ。自分よりはるかに優れた相手を一瞬、自分の手の内に入れたような快感。引き金の代わりに僕はシャッターを押す。写真となって表れた美しさに快感が増殖する。でも本当の姿はもっと美しい。もっと美しい姿を撮らなければといつも思う」。

 あたしには朱鷺保護の人々の辛苦は考えも及ばぬ大変な世界だが、野鳥写真家のファインダーを覗く快感は充分にわかる。だが写真家ではないから美追求までは及ばぬ。あたしの鳥好きも鳥撮りも所詮は隠居道楽、隠居ゲームなり。現在、国内飼育されている中国産朱鷺は153羽。果たして放鳥~自然繁殖に成功するだろうか。

 壊れゆく自然(地球)、荒廃を増す国や社会に、滅びゆく生命は数えきれぬ。

 ★平成24年(2012)4月23日、朝日新聞の朝刊一面に「放鳥トキ ひな誕生」の報。環境省は22日、新潟県佐渡市で放鳥した国の特別天然記念物トキのうち、営巣していたペアから、ひなが誕生した魯発表した。自然界での孵化は1976年以来、36年ぶり。40~45日後に親鳥とほぼ同じ大きさに成長してから巣立ちとか。無事の成長をぜひ・・・。


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唐沢孝一著「The Birds」 [野鳥関連本]

karasawa.jog_1.jpg 久々の野鳥本は「ネオン街に眠る鳥たち」「都市鳥からフォークロア」をアップ済の都市鳥研究会代表の、唐沢孝一著「The Birds」。高校教員をしつつ鳥人生を歩まれた著者の自叙伝。あたしは手堅い公務員とは反対の浮草フリー稼業。鳥撮りは隠居の身になって始めたばかり。教師が書いた本ではソリが合わぬかと読み始めたが、半分まで読み進んだ「秀吉と利休」を中断し2日で読了。ほぼ同年配だから、著者の堅実な歩みに比し、自分はかくも滅茶苦茶に生きてきちゃったなぁと己を振り返りつつ楽しく読ませていただいた。

 著者の群馬県草津育ちに比し、あたしは東京場末育ち。著者は嬬恋村の中学で早くも野鳥観察。小中学生の野鳥観察コンクールで文部大臣奨励賞受賞。あたしの中学は東京でも名立たる不良校。渋谷の私立大付属高に入学した際はあの不良中から来たならばシメておかねばと入学と同時に先輩不良連に地下部室に連れ込まれて袋叩きにあっている。著者は中卒後に嬬恋村の親元から離れて下宿生活で前橋高校入学。高2の時に「60年安保」とあり、そうだ、あたしもキャパスで大学生たちの釘突き出したプラカード作りを見ていたなぁと思い出した。著者は東京教育大に入学。すでに鳥人生を決めていて理学部生物学科動物学専攻。山岳部に入った。ここであたしとちょっと人生がクロスする。不良のあたしは学校に通わず高2から社会人の山岳会・東京白稜会に入って大学下車駅で降りずそのまま私鉄沿線の山ん中に入っていた。このへんからあたしの人生は狂い出した。

 著者は高校教師をしつつ野鳥研究の道を歩み出す。あたしは理工学部応用化学科を捨てグラフックデザイナー2年、PRマン2年後にフリーの浮草稼業。ひょんなことから音楽業界にかかわることになるが、これに比し著者の人生はブレがない。野鳥観察はやがて「都市鳥」テーマを見出す。「都市鳥研究会」発足翌年にトヨタ財団による「環境をみつめる」コンクールに参加。7年にわたって奨励賞候補(予備研究費50万円)、奨励賞の本研究費(2年間400万円)、特別賞(100万円)、継続研究費(4年間1000万円)の長期コンペ?を勝ち抜いて「都市鳥」に取り組んだ。「都市鳥研究会」メンバーの何人かが野鳥本を出しているが、その背景にこんな賞金コンペがからんでいたとは驚いた。

 著者は1943年生まれ。同年配の鳥好きの皆さんも、自分の人生を振り返りつつ読んだらきっと面白いかも(徳間書店、1991年刊)。今日は久しぶりに晴天なり。これからどこぞに鳥撮りに。今頃は満潮。飯を食ってから家を出ましょうか。


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杉田昭栄著「カラス なぜ遊ぶ」 [野鳥関連本]

karasuasobu_1.jpg ジュンク堂書店の野鳥本コーナーに比し、新宿図書館(区内に10数館ある)の野鳥本は僅かなもんだ。それでも戸山図書館には「中西悟堂全集」がズラリと揃っているのがうれしい。そんな野鳥本状況だが東京の「カラス問題」でカラス本のみ充実している。ということであたしのカラス本読書は大久保図書館で借りたこの3冊目で読み止めにしましょ。著者は動物形態学、神経解剖学教授。カラスの観察から解剖まで踏み込んでいる。前半の観察ノートは他のカラス本と変わらぬ記述だが、解剖からは真骨頂発揮。まず他生物との脳比較。脳化指数はヒト、イルカ、チンパンジーの次がカラスで、イヌやネコより指数が大きいとか。解剖は眼(視覚/人間には及びもつかぬほど優れている)から始まって、鼻(臭覚)、耳(聴覚)、舌(味覚)、内蔵…と進んで、カラスに限らずトリとはこういう生物ってことがわかってくる。最終章はそんな脳、機能特性を有したカラスが訓練でどこまでの事が出来るかを実験している。形の認識、数的概念、学習能力はいかほどか…と根気よい実験が繰り広げられる。読んでいるとカラスがイヌのような身近な存在になってくる。いや、いずれは道具まで使いこなし、手前勝手なことばかりの愚かな人間共をも凌駕するかもしれぬという気になってくる。(2004年、集英社新書刊)。
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松田道生著「カラスはなぜ東京が好きなのか」 [野鳥関連本]

karasutokyo_1.jpg すでに大田眞也著「カラスはホントに悪者か」読了で、カラス本2冊目の読書です。大田著は確か九州のカラスだったが、松田著は「六義園(りくぎえん)」を中心に駒込、本駒込、巣鴨、千石4地区の2000年から5年間のハシブトガラス観察記録。あの団地や学校脇、このお屋敷のと身近なデータばかり。当時の六義園には2000羽、少なくても数百羽のカラスがねぐらにしていたとか。著者は上記4地区を順番に早朝散歩観察し、1週間で約1回の割で全地区踏破。年平均57個の巣、延べ286個の巣とカラスの生態を観察。助っ人はカラス観察仲間の主婦・星さん。双眼鏡片手にクリップボードを首に下げ、電力検針アルバイトや不審者に間違われ、時に職質されつつ、毎年3月の巣作りから観察開始。巣の密度や巣作りの実際。そして交尾、子育て、人への攻撃、巣立ち、さらには六義園でのカラス攻撃の危険回避のための「巣落とし」まで関わる地道で丹念な記録。それをおもしろおかしいエピソードや、今までのカラス論文や調査・研究報告をも交えて紹介。楽しく読ませてくれて東京カラスの実態・生態のわかっていること、未だ不明のことなどが明らかにされる。読めばカラスを見る眼が変わってきます。(2006年、平凡社刊)。


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大田眞也著「カラスはホントに悪者か」 [野鳥関連本]

karasuhon_1.jpg この書を読むとカラスを単にウルセェ~存在として一瞥できず、別の眼で見ることになる。あたしが最近読んだ鳥関連本では、メジロの密猟・密売実態を暴いたドキュメント、遠藤公男著「野鳥売買メジロたちの悲劇」に次いで読み応え充分の書也。1章はカラスの進化・分類。2章が形態・生態の謎。黒に秘められた特性、その視力、聴力、脳力、そして食う、育てる、闘う、遊びの観察レポート。ここから驚きの生態が次々に明らかになって釘づけになる。餌は88%が植物質だがその他が凄い。昆虫は当然として動物性蛋白質摂取は猛禽類も顔負け。小動物、卵、雛、さらには腐乱死骸。その貪欲さに凄味が増す。人の遺体を含めた自然界の清掃屋(スカヴェンジャー)。話は「羅生門」の死体に群がるカラスや「楢山節考」の鳥葬に及ぶ。身を震わせつつ読めば、人類の食の貪欲さはカラスの比ではないことを知らされ、今度は生ゴミとカラスの関係に展開する。巣作り、育雛の観察では抱卵中の雌を強姦する(鳥にペニスはない。興味のある方は鳥の交尾を勉強されたし)若雄の生態も明らかにされる。

 3章は「人はカラスをどう認識してきたか」。スカヴェンジャー、黒から死に結びつく不吉さを有したカラス。そこから人はカラスを霊鳥、さらには神にイメージを膨らませる。カラスは宇宙や太陽をも創造の日の精にもなる。今度は人間の想像力の恐ろしさ、豊かさに驚かされる番だ。3本足のヤタガラスは、神武天皇の使者となって宗教色をも帯びる。なんと日本サッカー協会のエンブレムもマスコットの3本足のヤタガラスだ。そして本書の締めくくりは、そんなカラスを人が食う話。石原都知事はミートパイが旨いと言い、全国のカラス料理も紹介する。えぇ、ここまで読んだら、カラスを見る眼がガラリッと変わってくる。カラスが撮りたくなってくる。こう記している部屋の外でカラスが鳴いている。気になってしょうがない。(2007年、弦書房刊。なお著者には「カラスは街の王様だ」葦書房刊もある)。


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野鳥エッセイ本2冊 [野鳥関連本]

yacyoessay_1.jpgfieldessay.jog_1.jpg 新宿御苑の鳥撮りを終え、大木戸門を出たところの新宿区民ホール7Fの四谷図書館で借りた野鳥本8冊のうちのエッセイ2冊。最初は柴田敏隆著「カラスの早起き、スズメの寝坊」(新潮選書)。鳥の生態観察から、それを人の営みや社会生活にこじつけることを「文化鳥類学」として書いている。月刊誌連載エッセイで、月に一本読むのはいいが、まとめて「こじつけ」を読まされると「ちょっとぉ~」って気にもなってくる。最終章ラストに著者はこう書いてしめている。「西洋の科学は、動物と人間とを厳然と区別し、軽々しく動物学上の法則を人間に当てはめることを慎むべきこととしているのであるが…」。全編最後で自らの「文化鳥類学的エッセイ」を全否定しているのには、まぁ驚いた。2冊目は以前に同じく図書館本で読んだ「ネオン街に眠る鳥たち」の著者、唐沢孝一「都市鳥からフォークロアヘ」。経済誌、PR誌、宗教誌、不動産業界誌、行政や政治団体機関誌などから教科書掲載文まで、それまでに書かかれた膨大エッセイをまとめた本。あたしの企業PR誌編集経験から言えば、それら編集者が自然エッセーものを依頼原稿したくなる気持ちがわからぬでもない。両著共に鳥撮りにくたびれた後や、雨で鳥撮りに行けぬ日などに寝っころんで読むにぴったり。読めば野鳥マメ知識がたっぷり得られます。


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遠藤公男「野鳥売買メジロたちの悲劇」 [野鳥関連本]

yacyobaibai_1.jpg 四谷図書館で野鳥本8冊を借りたが、あんまりいい本はなかったなぁ。その中でガツンと来て、一気読了したのが遠藤公男著「野鳥売買 メジロたちの悲劇」。著者が絶えぬ輸入鳥の実態調査にドン・キホーテさながら香港に旅立ったのは1990年のこと。バードストリートに70数店。メジロを主に多種野鳥が小さな鳥籠に捕らえられ悲鳴をあげていた。彼は輸出元の中国に飛ぶ。膨大な野鳥が売られる鳥の奴隷市場。国営の輸出機関に潜入する。出荷数は年間100万羽。中国のメジロ猟を目撃する。囮箱やカスミ網。4度目の香港で年5万羽も日本に輸出する会社に潜入し、再び中国に入る。大きな野鳥輸出会社が二つで年間200万羽の商い。売れないオスは餃子の材になり、出荷・その途中に膨大な鳥たちが死んで行く。

 一方、日本では日本のメジロ売買は禁止だが、輸入メジロ(980円)の証明書を日本メジロに付け替えて5000円ほどで売っている。日本でも密猟が止まらない。著者は日本、香港、中国の密猟、輸入・輸出の実態を次々に明かして行く。中国から日本への野鳥輸出が止まったのは2001年。日本でも2002年に密猟メジロや密輸メジロを飼うだけで6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金…の法が成立。著者はスパイさながら密猟業者の中に潜入し、捕まったメジロなどに「きっと助けてやるからな」と涙をながしつつ奮闘。迫力のドキュメントです。(講談社新書 2002年刊)。著者には日本のカスミ網猟と命がけで闘った人々を描いた「ツグミたちの荒野」もあり、この書はその続編と言えそう。


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カワセミのミニ知識 [野鳥関連本]

syakawasemiosu1_1.jpg 石神井公園でカワセミにレンズを向けた際、隣の双眼鏡のご婦人が「あらっ、オスね」と言ったもんだ。あたしはカワセミ中心の鳥撮りではなく、そこに居れば撮るという程度の関心だったから、ご婦人の知識と観察眼にちょっと驚き、自分の知識不足に少々焦った。帰宅後に図鑑を見れば「メスの下嘴の半分は概ね赤橙色」とあり、このカワセミの上・下嘴は黒くてオスに間違いなしと確認した。新宿御苑を大木戸門から出た所に新宿区民ホールがあり、7階に区立四谷図書館がある(9階モスバーガーから眼下にする御苑の景色は素晴らしい)。先日、御苑の鳥撮り帰りにここへ寄って野鳥本を一挙8冊も借りた。

 矢野亮「帰ってきたカワセミ」(地人書館刊)でにわか勉強をした。得たミニ知識は以下の通り…。調子がいいと年に2度繁殖する。巣は赤土の壁。1回目の巣作りはオス、2回目は♂♀共同作業。オスは巣に来たメスに盛んに求愛の餌のプレゼントをする。1日平均10回で約14日間の求愛給餌を行いつつ交尾。平均6、7個の産卵(4~7月)後、共同で抱卵。約18日で雛に孵る。育雛期は約23日。給餌はオス中心。早朝と夕方(15~16時)が活発で、巣立ちは5~8月とか。


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呉地正行著「雁よ渡れ」 [野鳥関連本]

ganyowatare_1.jpg 冬を迎えるにあたって冬鳥の代表「雁」について知りたくなったきた。すでに北の地には多くの雁が渡っていよう。そんなことで入手したのがこの本。著者は東北大に入学間もない頃に伊豆沼近くの田んぼで初めて雁の群れに遭遇して魅せられた。以来、雁の生態調査から保護の諸活動を展開。ヒシクイとオオヒシクイの違いに気付いて日本とロシアの共同調査からその飛来ルートの違い、生態の違いを把握。シジュウカラガンやハクガンの回復活動、コクガンやマガンの調査、また冬の湿原「ふゆみずたんぼ」普及などに尽力。日本雁を保護する会・会長。鳥学、鳥類保護、自然環境に関する各賞を受賞している。この本は彼が折々に発表してきた雁関連原稿を一冊にまとめたもの。雁に関する一般向けの貴重な本と言えましょう。そういえば数日前のテレビニュースで「ハクガン飛来」が紹介されていた。体裁面で苦言を言えば、段落落ち(書き出し文の一字下げ、行変え頭の一字下げ)があったりなかったりで、読む度にひっかかったこと。なお、このブログに行変えがないのは、行変えをすると1行アキになってしまうため。(どうぶつ社 2006年刊 1800円) 写真は読了した伊豆大島ロッジで、愛用フィールドなが靴を背にパチリッ…)


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石川勉著「東京湾の渡り鳥」 [野鳥関連本]

tokyowanyatu_1.jpg 伊豆大島に行く前、10月21日の朝日新聞「渡り鳥消えた 千葉・谷津干潟」の記事をアップしたが、その谷津干潟に19年間にわたり毎週通って種類別に渡来数をカウントした観察記録などを収めたのがこの石川勉著「東京湾の渡り鳥」。その腰巻キャッチコピーは「谷津干潟の自然誌」。新聞の通り今年の谷津干潟は閑散たるもので行く気にもならぬが、本当はこんなに素晴らしい野鳥の楽園なんです…と読んでいるとワクワクしてくる。同書には谷津干潟に飛来するシギやチドリが南下して越冬するオーストラリアやニューギニア、また繁殖地のアラスカ・ツンドラ、加えてフィリピン、タイ、香港のバードウォッチング紀行も収録。著者は日本橋浜町の中華料理店「鳳蘭」店主。確かアルフィーの坂崎君(彼はアルフィーがメジャーになる前から亀飼育に凝っていて、亀の話を何度か聞いたことがある)の推薦サイン入り野鳥本も出版されていたように記憶している(立ち読みした)。あたしの葛西臨海公園や三番瀬、東京港野鳥公園でのシギ・チドリの教科書になっている。(1993年、晶文社刊、2300円)

塚本洋三著「東京湾にガンがいた頃」 [野鳥関連本]

tokyowan2_1.jpg 三番瀬にここ2度ほど通った間に、この本を読んでいた。塚本洋三著「東京湾にガンがいた頃」(文一総合出版)。今から55年前の1953(昭和28)年の頃、旧江戸川と江戸川放水路に挟まれた湿地帯とアメリカまで続くと言われた広大な干潟「新浜」があった。この書は同年から1962年までの9年間に亘って「新浜野鳥観察」に計300回通った著者の述懐。この「新浜」は現在の三番瀬から浦安のディズニーランドに及ぶ地域。当時はJR総武線・本八幡から行徳橋辺りの湿地帯を抜け、幅70㎝ほどの堤防を歩いて干潟に出たそうな。探鳥のメンバーは“新浜の鬼”こと「新浜グループ」。フィールドガイドは洋書一冊のみ。1957年に登場したフィールドスコープ「プロミナール」の性能に腰を抜かさんばかりに驚いている。艱難辛苦を越えて切磋琢磨で磨いた野鳥識別力。著者が中2で入会した当時の「日本野鳥の会」は中西悟堂らの創立メンバーがカスミ網や野鳥狩猟阻止に闘っていた最中。巷には美空ひばり「リンゴ追分」が流れ、街頭テレビに人が群れ、マガンが新浜で越冬していた最後の頃。 オオバンが賑やかに繁殖し、彼らが55年にハジロクロハラアジサシを記録した丸浜養魚場も今はなく、あの広大な干潟は埋め立てられてディズニーランドになり、「シロガネーズならぬマリナーゼ」と名乗る高級マンション群に棲むご婦人方が闊歩している。当時を思わす環境は宮内庁新浜鴨場と行徳野鳥観察舎のあたりとお隣の三番瀬のみ。同書には記されていないが浦安では工場排水を巡って機動隊と漁民の激しい闘争が繰り広げられていたはず。今から55年前の豊かな自然を、さらに江戸に遡れば広重描くようにタンチョウツルも舞ったに違いなかろう。そんなことを思いながらあたしはもっと三番瀬に通いましょと思ったりした。あたしの兄弟たちもかつての「新浜」を埋め立てた浦安のマンション群在住で、あぁ、父や母も海浜公園墓地で眠っている。


加藤幸子著「鳥よ、人よ、甦れ」 [野鳥関連本]

katouyukiko2_1.jpg 一気読了の感動ドキュメント。副題は「東京港野鳥公園の誕生、そして現在」。著者は芥川賞作家(昭和58年「夢の壁」受賞)の加藤幸子氏。同書は昭和58年に「東京港野鳥公園」設立が決定した直後に書き下ろされた「わが町東京 野鳥の公園奮闘記」から一部削除・追加して開園15周年記念(設立決定から4年の工事期間を経て平成元年10月に開園。15周年は今から4年前の平成16年)に出版されたもの。あたしは先月に同園の観察小屋から極めて稀なシベリアオオハシシギを撮らせていただいたばかりで、この野鳥園誕生までの艱難辛苦の闘いに思わず胸がキュンとしてしまった。8年間に及んだ著者及び関係者の努力奮闘を想うと、今後は同園の門を一礼せずには入れなくなってしまった。

 著者はまず「大都市東京のなかの野鳥公園の根本的意味」を問い直すことから書き始めます。都市の表層を剥がせば、隠れていた原初が復活し、原風景や本来の生物が逞しく甦ってくる。従って人工系と自然系が同じ比重で混じりあうことががベストではないかと考察します。著者のこうした自然保全の考えや行動は、自身の子を含む地域の子供自然観察会から始まります。「水鳥観察会」で多摩川の合成洗剤で泡立つ光景にショックを受け、近所の荒涼とした大井埋立地で逞しく甦った野鳥たちに驚愕します。この埋立地は卸売市場の移転用地として作られるも放置された間に干潟に生物や植物、野鳥たちが復活。著者はここから「都会も自然。人工系と自然系などあらゆるものが溶け合っているのが現代のあるべき姿ではないか」と認識します。

 ここから著者と仲間たちの区、都、国を相手にした自然保全、野鳥園開設への8年に及ぶネバーギブアップの闘いが始まります。まずは3ヘクタールの「大井野鳥園」(現在の西淡水池)を得て、今度は埋立地全50ヘクタールを市場側と野鳥公園の分割をめぐる激しいせめぎあいに突入します。埒のあかぬ行政(役人)側と立ちくらみするほどの苦難を経て、ついに27ヘクタールを勝ち取るまでの詳細ドキュメント。芥川賞作家ですから鳥好きの男たち、地域のお母さん方、役人たちを描く筆は鋭くて優しくて、読む者をグイグイと引き込みます。実にいい本を読ませていただきました。(藤原書店 2200円)


昼は単、夜は集団のハクセキレイ [野鳥関連本]

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 「鳥撮り」には原初の営みを垣間見る歓びがあると書きましたが、一方、鳥から「今」が見える場合もあるんですね。6月21日のブログに川内博著「大都会を生きる野鳥たち」をアップしましたが、唐沢孝一著「ネオン街に眠る鳥たち」にも現代環境に順応して逞しく生きる鳥たちの生態が紹介されています。…というより両著者共に「都市鳥研究会」の方で、取りあげている鳥もスズメ、ツバメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ワカケホンセンインコ、キジバト、ユリカモメ、カワウ、ハクセキレイ…と「もろカブリ」。引用の調査データも同じかも。ちなみに「ネオン…」が91年刊で、「大都会…」が97年刊。まぁ、どちらかを読めばいいって感じですね。ハクセキレイは望遠レンズで遠くの鳥を狙っていますと、眼の前をヒョコヒョコ歩いていて、思わずついでに撮ってしまう鳥です。先日は葛西臨海公園で珍しい親子連れを撮りましたが、これはシベリアオオハシシギを狙っている合間に撮ったもの。余りに近過ぎてAFが利かずマニュアル撮影になります。いつかは彼らのネオン街の木や看板やビル壁、はたまた工場屋根などで何百、何千羽に及ぶ集団塒(ねぐら)の様子も撮ってみたいと思いますが未だ果たせていません。昼は単独行動で夜は集団塒なんてちょっと変ですね。本来はそんな生態の鳥ではなかったはずだが、どこかで狂ってしまったようです。いや、ちょっと狂っていなきゃ生きていけぬのが現代なんでしょうなぁ。


読書も「鳥撮り」の楽しさ [野鳥関連本]

toridokusyo2_1.jpg「おまぃさん、こんな暑い日に鳥撮りに行ったら死んじまうよぅ。クーラーの効いた家ん中で、寝っころがって本でも読んでいなさい」ってんで、今日が図書館返却日の読み残しを読むことにした。

 柴田敏隆著「鳥の行動学」は鳥撮り初年生のあたしには必須教科書でしたね。鳥の身体の仕組みから生態の不思議までわかりやすく紹介。

 中西悟堂「定本野鳥記」全16巻は11巻まで読み進みました。あたしの愛読書は明治12年生まれの永井荷風さんの全集(全28巻)だが、いずれその本棚の隣に「野鳥記」を並べましょうかねぇ。二人の共通点は世情に無頓着てぇとこがありますね。荷風さんより16歳下の悟堂さんは後に自然保護運動に積極的で文化人的になりましたが、戦中・戦後は世を捨てたように、ただただ探鳥の日々でした。ちなみに「野鳥記」全16巻は古本ネット調べで2万5千円程で入手出来そうです。「ふふっ、おまいさんは飽きっぽいんだから鳥撮りだっていつまで続くものやら…」とかかぁが笑いますんで、まだ蔵書するまでもなく、残る5巻も図書館本です。残る第12巻が「交誼の花」、13巻が「思索とエッセイ」、14巻が「恩顧の人々」、15巻が「悟堂歌集」、ラスト16巻が「悟堂詩集」。


中村浩志著「甦れ、ボッポウソウ」 [野鳥関連本]

buppousouhon.jpg 当ブログの鳥の項は、図鑑ではなしと気付いてカテゴリー名を「マイ野鳥図鑑」から 「私の探鳥記」に変更した。鳥関連本も「読書・言葉備忘録」ではなくこのカテゴリーに収めましょう。さて、写真は中村浩志著「甦れ、ブッポウソウ」。図書館で借りて読んだ。著者は信州大の鳥類生態学教授。最近になって鳥撮りに嵌ったあたしにとって、鳥は趣味の範疇で鳥学に踏み込むほどのことでもなく、一種の鳥を何十年にも亘って研究する鳥学の世界とは別の次元。そんなワケでこの種の本は購い蔵書するより図書館で借りて読む本なり。

 さて、ブッポウソウはおかしなことに千年以上も「仏法僧」と鳴く鳥と信じられてきて、昭和10年に「仏法僧」と鳴く鳥を撃ち落とし、それがコノハズクと判明したという極めて希有な逸話を有しているそうな。ブッポウソウの鳴き声は「ゲエー、ゲー」で、姿はカワセミのように輝くブルーの羽根に赤い嘴と足の美しさ。この本を読んでみると鳥学者はどんなことがキッカケで研究テーマにしたか、その生態調査がどんなものか、不明点を解明する実証の苦労や歓びなどを知って「あぁ、鳥学ってそういうことな」とわかる。この種の本はどれも最後は自然環境の劣化、山村の生活変化などを指摘し、より繁殖できる環境を取り戻せのメッセージで締めくくられている。深夜の野山を歩き、藪に踏み込み、大木によじ登る中村教授だがヘビが大嫌い、怖いと述懐する記述があって「やぁ、教授でもそうか」と肩でも叩きたくなる親近感も覚えた。文章が学者風ではなく平易な良さがあってのこともあろう。本書の圧巻は貝殻やプルリングなどのアルミ片を巣に運ぶ習性の謎の解明。現在日本に250ほどの番が繁殖しているそうだが、果たしてあたしもその美しいブッポウソウを眼にする日が来るでしょうか。


伊豆大島の動物公園と中西悟堂 [野鳥関連本]

 中西悟堂「定本 野鳥記」第1巻に「放飼編」が収められている。「野鳥の会」は野鳥を飼ってはならぬがモットーだが、当時は籠飼い全盛で「飼うならこう飼え」とばかり部屋、家の中での放し飼い。ヨシゴイ、チュウサギ、カワウ、オナガ、カラス、トラツグミ…と、まぁ糞まみれで一緒に暮らした観察記述が収められている。だが同編末にこう書いてあってちょっと驚いた。…今は禽舎はがらあきである。ほとんどの鳥を、東京湾汽船の林社長の懇望で伊豆の大島へ移してしまった…。「放飼編」が書かれたのは昭和10年頃で、その頃の伊豆大島は昭和3年の野口雨情・中山晋平『波浮の港』大ヒットに端を発した大観光ブームが続いていて、三原山にラクダを連れてきたり、集客あの手この手も盛り上がって、泉津村に大島自然公園動物園が開園したのが昭和10年。同園は開園から3年後に東京湾汽船から東京市に寄付されたが、この動物園は実にいろんな動物を逃がして生態系を崩す過ちを犯しているようだ。その数例を以下に紹介…。

 昭和11年のこと。3匹の子供のツキノワグマが脱走した。2匹は捕獲できたが1匹は不明のまま。昭和30年に大クマが目撃され、昭和43年に老いた大クマが射殺されている。この脱走クマは30年近く息を殺すようにして島に棲息していたんである。今も島にはタイワンサルとタイワンリスが大増殖しているが、これらも動物園からの脱走個体がルーツとも言われている。(当時の「島の新聞」参考)

 先日、神奈川県・舞岡公園でカワセミを撮ったときのこと。「グワッ・グワッ」の鳴き声に「あれは何の鳥ですか」と500㎜のLレンズを三脚セットの大先輩風に訊けば「タイワンリスだよ。○○が抱卵して楽しみに狙っていたのに、ヤツらが食いやがったんだ」と吐き捨てるように言ったもんだ。島に行けばこのリスの鳴き声は耳慣れしているが、鳥の森でタイワンリスとは思ってもみなかった。とまれ大島に鳥が少ないよなぁと思っていたが、ヘビに加えてこのリス大繁殖の被害も大なのじゃないかと思った。三宅島はヘビがいなくてバードアイランドになっているが、リスはどうなんだろう。外来種リスがどれだけ生態系を崩しているかの調査データをみてみたいもんです。


中西悟堂「野鳥記」全16巻の読書開始 [野鳥関連本]

tuyukinoko_1.jpg 鳥撮りを始めたら鳥の本が読みたくなってくるのは自明。しかし野鳥図鑑(5冊)以外に手許にある野鳥本は「ザ・ビッグイヤー」「東京湾の渡り鳥」「大都市を生きる野鳥たち」だけ。野鳥ビギナーで知識足らず。だが本屋に行っても読みたい野鳥本に出会えない。ずっとそう思っていて昨日「あっ、そうだ」と閃き、新宿図書館の検索ネットを試みたら大当たり。近所の戸山図書館に中西悟堂「定本 野鳥記」全16巻があるではないか。「野鳥」「探鳥」という言葉を定着させ、「日本野鳥の会」の創立者にして歌人。まずは第1巻~5巻を借りた。当分は読む本に困らぬ。鳥撮りの往復の電車ん中、シャッターチャンス待ちに読むにもベストじゃないかな。そう、あたしは高校2年ん時に社会人の山岳会「東京白稜会」に入ったが、その時も学校の図書館にあった「世界山岳全集」(たぶんそんな題名だった)を読み漁ったことを思い出した。あたしの趣味は本から入る癖がある。

 それにしても天気が芳しくなく鳥撮りに行けぬ。ジトジトした気候でプランターにこんなキノコが生えた。これ一日でしぼんでしまうんですね。


北米探鳥競技会のドキュメント「ザ・ビッグイヤー」 [野鳥関連本]

thebigyear_1.jpg 腰巻に「バカか?偉業か?」とある。これは北米大陸で展開されるバードウォッチング競技会に挑んだ3人の男のドキュメント。世の中にはこんな事に人生を賭ける闘いがあるんですねぇ。1年間にどれだけ多くの鳥をウォッチできるかの競技会「ザ・ビッグイヤー」。その98年大会参加の上位3人はコンピュータの2000年問題に取り組む技術者で離婚したばかりのミラー、土建業者のコトミ、大企業の重役レヴァンティ。仕事や家庭を脇に置いて1000万円余の経費を注き込み、40万キロを飛び回っての「鳥探し」。ゴルフのスコアは自己申告制だが、これも厳正な自己申告で「見た」の記録があればいい。

 北米には約650種の野鳥がいるが同年はエルニーニョの影響で700種を優に超える激戦になった。取材したのは「デンバー・ポスト」紙の記者としてピューリッツァー賞受賞のマーク・オブマシック。ドキュメントはまず筆者の探鳥歴から始まる。駆け出し記者の時に法律老学者の探鳥家を取材するが、彼は法律家として生涯を終えたくて探鳥については語ってくれなかった。そんな事があって著者は時折バードウォッチの取材を繰り返すうちに、自らも探鳥家になった経緯を語る。なぜに人はこれほど探鳥に惹かれるのだろうか・・・。その謎を求めて上記三人のドキュメントを取材したと語っている。

 著者はまず3人の98年1月1日「ザ・ビッグイヤー」の初日を描き、彼らの少年時代の探鳥原体験や人となりを紹介する。コトミは貧しい家庭に育つも朝食時に家族で鳥の名を次々に言いあう「鳥の名ゲーム」を原体験にボーイスカウトのバードウォッチの感動から探鳥家に。仕事は屋根施工会社を設立して軌道に乗せている。ミラーは家畜獣医で鳥の鳴き声に才を発揮の父の影響で探鳥の道を歩みだした。コンピュータ・プログラミングの技術者になってエアロビクス講師の女性と結婚するが肥満が嫌われて離婚。レヴァンティは父が2歳の時に出奔して極貧家庭に育つが彼もまたボーイスカウト体験から探鳥の道に入っている。大学1年で退職して巨大化学企業に就職し特殊塗装で特許を二つ取るなどで出世。大企業の経営者、引退、経営者を繰り返して3度目の引退でビッグイヤーに挑戦した。

 ドキュメントは過去の「ザ・ビッグイヤー」列伝を紹介しつつ、大記録に拮抗する3人の闘いをレポート。日米激戦地だったアラスカ先端のアッツ島、ヒッチコック映画「鳥」ロケ地のカルフォルニア州ビデガ湾の探鳥ツアー船、アリゾナ、テキサスのゴミ捨て場から北部ミネソタ・・・。群を抜く記録を更新し続ける3人は次第に北米大陸の各探鳥ポイントで相まみえ牽制しつつの闘いを繰り広げた。著者はこの3人を中心に彼らの探鳥の目撃者、他の挑戦者への数百時間のインタビューから、この狂気の物語を再現。なおスピルバーグが映画権を買い取ったとかだが、映画化されるの何時だろうか。(04年6月、アスペスト刊、2300円)。

 ★2012(平成24)年の夏から秋、にわかに当記事を訪問の方が多くなった。どうしたのでしょう、と思っていたら映画化されたらしい。気がついた時は数日前に上映が終わっていて、9月5日にビデオレンタル開始とあった。さっそく借りて観た。あっさりとコミック仕立て。原作は400頁。お薦めはやっぱり原作です。


川内博著「大都会を生きる野鳥たち」 [野鳥関連本]

torihon2_1.jpg あたしの野鳥本は図鑑中心だったが、初めて読める鳥本を入手した。新宿ジュンク堂には6Fの何故か理工・コンピュータのコーナーん中の「動物」棚に野鳥関係本がある。最近は3棚に増えて?いる。さて筆者は都会に棲む鳥を「都市鳥」ととらえ、その生態変化を探っている。変化背景にあるのは言うまでもなく環境変化。その視点で四季分類で各鳥をデータや実地観察から生態変化を次々に紹介。冒頭紹介のツバメについては、端から外敵から身を守るために人をガードマンとして人の多い所を選んで営巣しているが、最近では即席麺カップなどの人工巣でも抱卵・子育てをするケースが多くなり、都会の明かりの中で夜でも餌を求めてコウモリのように飛び始めていることを紹介。70年代には岩壁からコンクリート壁に乗り換えたイワツバメがもの凄い勢いで都市進出してきたが、90年代にその勢いを弱め、コロニーも小型化してきた。これはカラスの襲撃とスズメによる巣の乗っ取りが原因かもしれぬが、渡来数が減少したのかもしれない…と結んでいる。その生態変化要因はわからぬことが多いのである。アオバズク、カルガモ、ツミ、オオタカ、カワセミ、ヤマセミ、ムクドリ、スズメ、カラス、ワカケホンセイインコ、セイタカシギ、ヒヨドリ、チョウゲンボウ、トビ、キジバト、コゲラ、シジュウカラ、ハクセキレイ、ユリカモメ、カワウ・・・らがデータと観察記録でその生態変化が詳しく紹介されている。都市の緑化、木々の成長、越冬地の環境悪化、非農薬化による変化、温暖化、交雑種や帰化動物の増加、河川の水質改善、温暖化…。同著は1997年の出版で、環境変化によって都市鳥の生態変化も流動的に変化していると記していて、それから10年余…、今の現象は読者の観察に委ねられていそうだ。(地人書院刊)
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野鳥本を無料ゲット。こんな事ってあり? [野鳥関連本]

torizukan_1.jpg 一昨日、一葉記念館のことを書き「そろそろ電話時期かなぁ」と結んでサイトアップした直後に先方から電話が入った。で、昨日の打ち合わせ後の雑談…。一ヶ月間、新歌舞伎座とホテルの往復暮しだったマネージャー・Uちゃんが、しげしげとあたしの顔を見てこう言ったもんだ。「いいなぁ、しっかり日焼けして。ゴルフはもうずいぶん前に辞めているから島でダイビングですかぁ。ええっ、鳥を撮っていたって。それで焼けたんだ。なんでまた鳥撮りがマイブームになったのよぅ。あっ、わかった。よっぽど厭な女にでも出会って人嫌いなったんだ。えっ、図星でしょ」。そんな冗談で鳥撮りやマクロ撮影のバカ話で盛り上がったが、帰り道によくよく考えてみれば、鳥撮りのきっかけはメジロだった。あれは2年前、新宿大久保の7階マンション自宅ベランダのローズマリーにメジロが毎日のように遊びに来たんですよ。それから新宿御苑で桜とメジロを撮って…と思い出した。帰宅後に芝木好子の本を図書館に返却に行ったら「破棄本」として、ご自由にお持ち帰り下さいというコーナーに日本野鳥の会監修「水辺の鳥」(北隆館)があってタダでゲット。この本、欲しかったんですよぅ。こんなことってあるんですね。(写真は学研の図鑑・鳥」と山渓ハンディ図鑑「日本の野鳥」。あたしの野鳥に関する記述は以上3冊を参考です)


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