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大田眞也著「カラスはホントに悪者か」 [野鳥関連本]

karasuhon_1.jpg この書を読むとカラスを単にウルセェ~存在として一瞥できず、別の眼で見ることになる。あたしが最近読んだ鳥関連本では、メジロの密猟・密売実態を暴いたドキュメント、遠藤公男著「野鳥売買メジロたちの悲劇」に次いで読み応え充分の書也。1章はカラスの進化・分類。2章が形態・生態の謎。黒に秘められた特性、その視力、聴力、脳力、そして食う、育てる、闘う、遊びの観察レポート。ここから驚きの生態が次々に明らかになって釘づけになる。餌は88%が植物質だがその他が凄い。昆虫は当然として動物性蛋白質摂取は猛禽類も顔負け。小動物、卵、雛、さらには腐乱死骸。その貪欲さに凄味が増す。人の遺体を含めた自然界の清掃屋(スカヴェンジャー)。話は「羅生門」の死体に群がるカラスや「楢山節考」の鳥葬に及ぶ。身を震わせつつ読めば、人類の食の貪欲さはカラスの比ではないことを知らされ、今度は生ゴミとカラスの関係に展開する。巣作り、育雛の観察では抱卵中の雌を強姦する(鳥にペニスはない。興味のある方は鳥の交尾を勉強されたし)若雄の生態も明らかにされる。

 3章は「人はカラスをどう認識してきたか」。スカヴェンジャー、黒から死に結びつく不吉さを有したカラス。そこから人はカラスを霊鳥、さらには神にイメージを膨らませる。カラスは宇宙や太陽をも創造の日の精にもなる。今度は人間の想像力の恐ろしさ、豊かさに驚かされる番だ。3本足のヤタガラスは、神武天皇の使者となって宗教色をも帯びる。なんと日本サッカー協会のエンブレムもマスコットの3本足のヤタガラスだ。そして本書の締めくくりは、そんなカラスを人が食う話。石原都知事はミートパイが旨いと言い、全国のカラス料理も紹介する。えぇ、ここまで読んだら、カラスを見る眼がガラリッと変わってくる。カラスが撮りたくなってくる。こう記している部屋の外でカラスが鳴いている。気になってしょうがない。(2007年、弦書房刊。なお著者には「カラスは街の王様だ」葦書房刊もある)。


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