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ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』メモ➀惨事便乗型資本主義 [政経お勉強]

Naomi_Klein_at_Berkeley,_California,_in_2014_(cropped).jpg 同著は上下巻の大作。米国の自由市場主義(市場原理主義=放任資本主義)が、どのように世界を支配してきたかの裏側を暴いている。大惨事につけ込んだ「惨事便乗型資本主義」浸透の悪事で、先に読んだ斎藤幸平『人新世の「資本論」』でも、「惨事便乗型主義」を取り上げて、それは「公共領域の縮小・企業活動の自由化・社会支出削減」の三位一体政策と記し、「気候変動ショック・ドクトリン」もあるし、「コロナショック・ドクトリン」もあると警告していた。

 膨大な同書から、核のひとつだろう第2章「もう一人のショック博士~ミルトン・フリードマンの自由放任実験室の探求~」だけを、ここにメモしておく。

 1950年代のシカゴ大学経済学部に神格化された「シカゴ学派」あり。率いるのは野心的カリスマ的なミルトン・フリードマン。同学派主旨は「市場を自由に任せておけば、おのずと均衡が生まれる。政府の規制、貿易障壁、既得権などあらゆる介入を取り払い、純粋な資本主義の状態に戻して、自由主義を花開かせよう」というもの。

 それが今日の貪欲な資本主義を招いて、新自由主義のグローバリズムへ発展し貧富格差を生み、特に途上国の資源開発で環境破壊を招いている。

 歴史を遡ると、1929年の株価暴落~世界大恐慌で、それは既に「自由放任の終焉・市場原理に任せた結果」と指摘された。ドイツでは世界恐慌をテコにナチスが台頭した。欧米ではファシズムや共産主義に流れるのを警戒して、国民の基本的尊厳を保証すべく、まともな「資本主義」路線に修正された。

naomiklein.jpg 失業を防ぐためにケインズのニューデール政策(公共事業計画)が実施され、米国は社会保障制度を、カナダは公的医療制度を、英国は社会福祉を、仏やドイツは労働者保護制度などを生んだ。

 一方、発展途上国(チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルなどの南米地域)でも、自然資源の暴落からくる貧困を回避すべく、自然資源(石油や鉱物)などの不安定な輸出に依存しないために、これらを国有化で管理し、収益を政府主導の開発プロジェクトに注入。国内指向型の工業化政策を選択した。

 その結果、これら諸国は1950年代に目覚ましい成功を治めた。公的資金で高速道路や製鉄所などの基幹プロジェクトに力を入れて車や家電などを生産。先進国には高い関税を課して輸入品をシャットアウトした。欧州や北米に近い発展を遂げ、新しい工場で働く労働者たちは強力な組合結成をもって、北米と同じく中産階級を拡大した。子供たちは新設公立大学へ進学し、格差も是正、ウルグアイでは識字率95%。医療も無料化された。

 だがこの成功を苦々しく思っていたのが米国大企業とシカゴ派だった。企業側はシカゴ派を援助し、組合や社会主義化を懸念するニクソン大統領、ダレス国務長官、実弟のダレスCIA長官らが加わって「新保守主義+シカゴ学派」をもって、発達した南米諸国へも反撃を開始した。読むも耐えがたい残虐・破壊工作が展開されて行く~。(続く)

 写真上は著者のナオミ・クライン。(ウィキペディアより) File:Naomi Klein at Berkeley, California, in 2014 (cropped).jpg

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