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北米探鳥競技会のドキュメント「ザ・ビッグイヤー」 [野鳥関連本]

thebigyear_1.jpg 腰巻に「バカか?偉業か?」とある。これは北米大陸で展開されるバードウォッチング競技会に挑んだ3人の男のドキュメント。世の中にはこんな事に人生を賭ける闘いがあるんですねぇ。1年間にどれだけ多くの鳥をウォッチできるかの競技会「ザ・ビッグイヤー」。その98年大会参加の上位3人はコンピュータの2000年問題に取り組む技術者で離婚したばかりのミラー、土建業者のコトミ、大企業の重役レヴァンティ。仕事や家庭を脇に置いて1000万円余の経費を注き込み、40万キロを飛び回っての「鳥探し」。ゴルフのスコアは自己申告制だが、これも厳正な自己申告で「見た」の記録があればいい。

 北米には約650種の野鳥がいるが同年はエルニーニョの影響で700種を優に超える激戦になった。取材したのは「デンバー・ポスト」紙の記者としてピューリッツァー賞受賞のマーク・オブマシック。ドキュメントはまず筆者の探鳥歴から始まる。駆け出し記者の時に法律老学者の探鳥家を取材するが、彼は法律家として生涯を終えたくて探鳥については語ってくれなかった。そんな事があって著者は時折バードウォッチの取材を繰り返すうちに、自らも探鳥家になった経緯を語る。なぜに人はこれほど探鳥に惹かれるのだろうか・・・。その謎を求めて上記三人のドキュメントを取材したと語っている。

 著者はまず3人の98年1月1日「ザ・ビッグイヤー」の初日を描き、彼らの少年時代の探鳥原体験や人となりを紹介する。コトミは貧しい家庭に育つも朝食時に家族で鳥の名を次々に言いあう「鳥の名ゲーム」を原体験にボーイスカウトのバードウォッチの感動から探鳥家に。仕事は屋根施工会社を設立して軌道に乗せている。ミラーは家畜獣医で鳥の鳴き声に才を発揮の父の影響で探鳥の道を歩みだした。コンピュータ・プログラミングの技術者になってエアロビクス講師の女性と結婚するが肥満が嫌われて離婚。レヴァンティは父が2歳の時に出奔して極貧家庭に育つが彼もまたボーイスカウト体験から探鳥の道に入っている。大学1年で退職して巨大化学企業に就職し特殊塗装で特許を二つ取るなどで出世。大企業の経営者、引退、経営者を繰り返して3度目の引退でビッグイヤーに挑戦した。

 ドキュメントは過去の「ザ・ビッグイヤー」列伝を紹介しつつ、大記録に拮抗する3人の闘いをレポート。日米激戦地だったアラスカ先端のアッツ島、ヒッチコック映画「鳥」ロケ地のカルフォルニア州ビデガ湾の探鳥ツアー船、アリゾナ、テキサスのゴミ捨て場から北部ミネソタ・・・。群を抜く記録を更新し続ける3人は次第に北米大陸の各探鳥ポイントで相まみえ牽制しつつの闘いを繰り広げた。著者はこの3人を中心に彼らの探鳥の目撃者、他の挑戦者への数百時間のインタビューから、この狂気の物語を再現。なおスピルバーグが映画権を買い取ったとかだが、映画化されるの何時だろうか。(04年6月、アスペスト刊、2300円)。

 ★2012(平成24)年の夏から秋、にわかに当記事を訪問の方が多くなった。どうしたのでしょう、と思っていたら映画化されたらしい。気がついた時は数日前に上映が終わっていて、9月5日にビデオレンタル開始とあった。さっそく借りて観た。あっさりとコミック仕立て。原作は400頁。お薦めはやっぱり原作です。


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