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小林照幸著「朱鷺の遺産」 [野鳥関連本]

tokinoisan_1.jpg 近所の「ブックオフ」で100円也。著者の最年少(31歳)「大宅壮一ノンフィクション賞受賞」の新聞切り抜きが数枚挟まっていた。あたしはこれに先日9月26日の新聞「トキ放鳥」の切り抜きを加えて読んだ。

 同書は後に「佐渡とき保護会」会長になる佐藤春雄の若き日から書き出されている。彼は昭和22年に飛翔する美しい朱鷺を見た。以来、糞を拾うなど地道な観察、傷付いた朱鷺の飼育、保護活動に心血を注ぐ。教頭~校長の道さえ断って、文字通り人生を賭けた取り組み。彼と同じく滅びゆく朱鷺に命がけで取り組んだ男たちがいた。しかし朱鷺は行政、学会領域に委ねられる。全鳥捕獲、人工飼育、繁殖の道。だが次々に死んで繁殖果たせず。2003年に日本最後の朱鷺「キン」死亡。そうした経緯を著者は佐藤の「朱鷺を鳥という視点のみではなく、失われゆく一つの生命への慈しみ」としての目、情熱で書きあげた。

 朱鷺を命がけで守ろうとした人々の姿を知って、わが「鳥撮り」を顧みる。あたしは本当に鳥が好きなのかしら…と。読書中にに野鳥写真家・嶋田忠氏紹介の新聞記事があった。彼のコメントがこう書かれていた。「鳥の写真を撮る理由は、猟師と同じ。自分よりはるかに優れた相手を一瞬、自分の手の内に入れたような快感。引き金の代わりに僕はシャッターを押す。写真となって表れた美しさに快感が増殖する。でも本当の姿はもっと美しい。もっと美しい姿を撮らなければといつも思う」。

 あたしには朱鷺保護の人々の辛苦は考えも及ばぬ大変な世界だが、野鳥写真家のファインダーを覗く快感は充分にわかる。だが写真家ではないから美追求までは及ばぬ。あたしの鳥好きも鳥撮りも所詮は隠居道楽、隠居ゲームなり。現在、国内飼育されている中国産朱鷺は153羽。果たして放鳥~自然繁殖に成功するだろうか。

 壊れゆく自然(地球)、荒廃を増す国や社会に、滅びゆく生命は数えきれぬ。

 ★平成24年(2012)4月23日、朝日新聞の朝刊一面に「放鳥トキ ひな誕生」の報。環境省は22日、新潟県佐渡市で放鳥した国の特別天然記念物トキのうち、営巣していたペアから、ひなが誕生した魯発表した。自然界での孵化は1976年以来、36年ぶり。40~45日後に親鳥とほぼ同じ大きさに成長してから巣立ちとか。無事の成長をぜひ・・・。


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