中村浩志著「甦れ、ボッポウソウ」 [野鳥関連本]
当ブログの鳥の項は、図鑑ではなしと気付いてカテゴリー名を「マイ野鳥図鑑」から 「私の探鳥記」に変更した。鳥関連本も「読書・言葉備忘録」ではなくこのカテゴリーに収めましょう。さて、写真は中村浩志著「甦れ、ブッポウソウ」。図書館で借りて読んだ。著者は信州大の鳥類生態学教授。最近になって鳥撮りに嵌ったあたしにとって、鳥は趣味の範疇で鳥学に踏み込むほどのことでもなく、一種の鳥を何十年にも亘って研究する鳥学の世界とは別の次元。そんなワケでこの種の本は購い蔵書するより図書館で借りて読む本なり。
さて、ブッポウソウはおかしなことに千年以上も「仏法僧」と鳴く鳥と信じられてきて、昭和10年に「仏法僧」と鳴く鳥を撃ち落とし、それがコノハズクと判明したという極めて希有な逸話を有しているそうな。ブッポウソウの鳴き声は「ゲエー、ゲー」で、姿はカワセミのように輝くブルーの羽根に赤い嘴と足の美しさ。この本を読んでみると鳥学者はどんなことがキッカケで研究テーマにしたか、その生態調査がどんなものか、不明点を解明する実証の苦労や歓びなどを知って「あぁ、鳥学ってそういうことな」とわかる。この種の本はどれも最後は自然環境の劣化、山村の生活変化などを指摘し、より繁殖できる環境を取り戻せのメッセージで締めくくられている。深夜の野山を歩き、藪に踏み込み、大木によじ登る中村教授だがヘビが大嫌い、怖いと述懐する記述があって「やぁ、教授でもそうか」と肩でも叩きたくなる親近感も覚えた。文章が学者風ではなく平易な良さがあってのこともあろう。本書の圧巻は貝殻やプルリングなどのアルミ片を巣に運ぶ習性の謎の解明。現在日本に250ほどの番が繁殖しているそうだが、果たしてあたしもその美しいブッポウソウを眼にする日が来るでしょうか。
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