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井上ひさし「戯作者銘々伝」 [大田南畝(蜀山人)関連]

 すでに何度かアップの井上ひさし「京伝店の烟草入れ」は、同題小説と昭和54年刊「戯作者銘々伝」で構成された文庫本。彼ら戯作者調べをしていると興味尽きぬ故、面白い短編の備忘録…。

 「半返舎一朱」:十返舎一九の娘・舞の独白。一九亡き後に十字屋三九が二世を継ぐが、それは母が三九の身体と金を得て決めたこと。三九は駄作続きで逐電。三世を誰にするかで、母は再び身体と金で九返舎一八を推し、舞は好いた男・半返舎一朱を推す。母が「お前に三世を語る資格なし。あたしと版元・村田屋の間に出来た…」。不倫の子だったと告白する。※諸田玲子が「舞」を主人公で「きりきり舞い」を刊。おもしろそう。

 「三文舎自楽」:深川芸者・お米は惚れた仙吉が殺され、彼の幼馴染で筆耕彫師・茂七の仕事場を訪ねる。仙吉は筆耕と絵師修行後に「仮名文章娘節用」を書いて人気。三文舎自楽を名乗り次作もヒット予感。その矢先の死。お米は茂七の仕事場で自分が仙吉の帯に仕込んだ銀の豆鍔を見つけて茂吉が犯人と突き止めた。※仙吉は他に司馬山人、曲山人を名乗っていた。

「松亭金水」:医師・永井が為永春水を師と仰ぐ松亭金子の女房を診たことから、永井と金水が仲良くなる。金水は戯作者で売ったが天保の改革(春水は手鎖刑)で本が書けず、書家になって人気者に。アイデアマン・金水が、繁盛せぬ医師・永井に様々なアイデアを預けて人気医師にする噺。※金水の本名は中村経年。1795~1862年。 

 「式亭三馬」:馬琴の長男で既に亡き宗伯の後家・お路が、湯屋の三助に謝礼をはずみ、馬琴が湯屋に来たら馬琴とは知らぬ風で京伝や式亭三馬の悪口を言ってくれと頼む。老いた馬琴は彼らの悪口を聞くと元気になるからだ。※湯屋を馬琴が晩年を過ごした四谷にちゃんと設定。ちなみに「浮世風呂」の三馬の父は、八丈島出身の版木師。

 「唐来参和」:昔は花魁、歳と共に小見店の女郎、遣手婆、火炊き婆。そして最後に大門口で糝粉指細工になったお信婆さんの噺。花魁が客への真を示すのが指切り。本物の指は切れぬので糝粉細工で本物そっくりの指を作る。この婆さん、昔は戯作者・唐来参和の女房。彼は天の邪鬼でこう言えば逆をやる男。それで吉原に売られ、再婚の祝言席でも仲間の言に逆らって再婚破棄。後年、お信はおちぼれた参和と橋の上で出逢う。「死にてぇと言う奴に限って死なないもんさ」のお信婆さんの言に逆らって川に飛び込んで死んでしまう。※参和は大田南畝の狂歌仲間。小沢昭一が「唐来参和」を一人芝居で全国660会場余で公演とか。


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