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川本三郎「東京残影」 [読書・言葉備忘録]

tokiozanei_1.jpg 読みたかった川本三郎「マイ・バック・ページ」が鶴巻図書館にあり、行けば未読の「東京残影」もあった。1887年から1992年に亘って各誌掲載の評論集で1992年刊。同氏の名著「大正幻影」と同時期執筆。この本には日本文芸社の月報「川本三郎と同い年のフランス文学・奥本大三郎の対談」が添付。題して“われら、四十八歳にして「古老」なり”。著者は本編「あとがき」でも…「自分にも思い出話が出来る!」。四十歳を過ぎてからそのことに気がついたとき、なんだか古老になった気分でうれしくなった…と書いている。著者43歳から48歳で、今からほぼ20年前のこと。荷風さんの“やつし”趣向に通じるが、こう書く40代の川本三郎の文には若さ意欲満ち、まさに新鋭評論家…。

 ここ数日はつまらん手前のブログを記すより、テレビの菅政権誕生ニュースを観ている方が断然面白かった。40代の党役員・閣僚の台頭。作家も政治も“40代は働き盛り”と改めて思った。同時に40代で自分の世界を構築した書き手(川本三郎)のその後の順調ぶりをみれば、変な言い方だがサラリーマンより安定した生き方だなぁと思ってしまった。今の社会人は年功序列も崩れて有為転変、ドラマチックな人生を歩まねばならず、これは政治家もしかり。

 一方、著者40代の著作からキーワード集めをしてみれば、それらは今も欠かせぬキーワードなんだなぁ。…すかれた町、場末、下町、山の手、工場、追慕、不易流行、老境、ノスタルジー、古き良き東京、町歩き、昭和二十年代、坂、運河、古本屋、隠れ家、世捨人趣味、滅びの風景、路地裏、都電、京成線、都営浅草線、都営新宿線、銭湯、居酒屋、ビール、隅田川、荒川放水路、大正モダニズム、ダンディズム、永井荷風、断腸亭日乗、墨東奇譚、野口冨士夫、芝木好子、つげ義春、都市小説、西へ西へ、林芙美子…など。

 40代で「古老」の愉しみを知った著者は、実年齢が古老になった今、どんな新たな世界を展開してくれるのだろうか。 


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