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萩野貞樹「旧かなと親しむ」 [読書・言葉備忘録]

haginokyukana_1.jpg 仕事抜きのサイトでは好き勝手に遊ぼうと「東京下町言葉」を覚えた。子供時分の記憶+ちくま文庫「志ん生」「志ん朝」落語の戻し文でマスター。次に読書が明治・大正・昭和初期が中心で旧かなを読む機会が多く、「旧かな」も使えたらと思った。参考書は俳句の文語文法書や萩野貞樹や青木逸平の「旧かな」新書。そのうちに俳句遊び。同書副題は「俳句・短歌がゆたかに自在に!」。読んでみれば、昨今の俳句・短歌の旧かなが相当に乱れていると記されていた。とりわけ過去の助動詞「き」の間違いが多い。

 過去の助動詞「き」は、目睹回想の助動詞。語り手が直接体験したり、目撃して時間的にはっきりと過去に属する事実を述べる語。活用は終止形「き」、連体形「し」、已然系「しか」。大新聞の俳壇・歌壇でも選者の間違いが多いそうな。昨日4日の朝日「俳壇・歌壇」に初めて(この歳まで興味がなかった)眼を通してみた。短詩ゆえ文字を省略したいのだろう、やたら「し」が多く使われていた。同書でも指摘されていた馬場あき子選に、こんな「し」が選ばれていた。

 啓蟄にジャンパー脱ぎて庭に出る杖つきし老友来たるをまたなむ 無学のあたしが萩野先生の教えを正しく理解出来たか定かではないが…、「杖つきし」は目睹回想の過去ではないから「杖つきたる」ではなかろうか。また「待たなむ」という文語もよくわからぬ。こんな歌も選ばれていた。 微笑する主を土手に置きしまま盲導犬は草を香を嗅ぐ この「置き・し・まま」は現代仮名遣いなら音便形の完了助動詞で「置いたまま」だろう。文語なら「置きつまま」「置きぬれば」「置きたり」ではないだろうかと思った。あぁ、ややこしいなぁ。こんなに凄いのも永田和宏選であった。「アデンアラビア」読みし二十歳をよび醒すランボーも住みし美しき海 「し」の連発だ。萩野先生亡きあと、無学のあたしにもよくわかるようにどなたかスッキリ教えて下さる方がいらっしゃらないかしら。大切な日本語ですもの。


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