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高任和夫「星雲の梯~老中と狂歌師」 [大田南畝(蜀山人)関連]

 大田南畝の駿河台「緇林楼」、金剛寺坂「遷喬楼」跡を訪ねた後で、未だ読んでいない南畝関連本があるかしら…と新宿図書館を検索した。大久保図書館に高任和夫「星雲の梯~老中と狂歌師」あり。老中・田沼意次と御徒で狂歌師の大田南畝それぞれの仕事や幕府との関わり、生き方を探るダブルストーリー。おや、面白そうじゃないか。期待しつつ頁を開けば、最初の2頁でずっこけてしまった。書き出しはこうだ。・・・明和三年(一七六六)十二月の午後、牛込加賀屋敷原の内山賀邸の玄関で草履をはいていると、大田南畝はうしろから同門の稲毛屋金右衛門(平秩東作)に声をかけられた。

yomoraakara2_1_1_1.jpg 次の頁で、二人はなんと山東京伝の煙管や煙草入れの店の評判を語り出す。「ええっ!」と絶句。勘違いもあろうから改めて小池藤五郎「山東京伝」で年譜確認をすれば、明和三年の山東京伝は、未だ六歳じゃないか…。なのに同小説では「あぁ、黄表紙や洒落本で評判の人ですね」などと京伝の人気を語りつつ神田白壁町の平賀源内を訪ねてゆく。物語冒頭の大事なシーンがこれだ。

 大田南畝は多くの作家が小説にしていて読書の愉しみのひとつ。しかし昨年出版の竹田真砂子「あとより恋の責めくれば」も、京伝の煙草入れ屋開業が十年ほど早かったり、南畝が吉原から身請けした三保崎(お賤)の看病や葬儀に、すでに亡くなっているはずの京伝の妻「お菊」が登場していたりした。小説ってぇのはそこまで史実を変えていいもんでしょうかと首をひねったばかり。「星雲の梯」巻末掲載の「主な参考文献一覧」を見れば16冊の文献列挙も、山東京伝の関連本はなし。目下三分の一ほど読み進んでいるが、ひょいと京伝がらみの変な記述が出てこぬかと心配しつつの読書に相成候。

  写真は大田南畝の狂歌始めのころの名・四方赤良(よものあから)。狂歌は…かくばかりめでたく見ゆる世の中をうらやましくのぞく月影。かくばかり…表面的にはと皮肉をにじませている。絵は北尾正演(山東京伝)かな。

 涼しくなったら小チャリを駆って、荷風さんのように白山通り・本念寺の大田南畝のお墓を訪ねてみましょうか。お賤(しず)さんのお墓も、南畝の後裔で荷風さんも逢っている南岳亨(相当にユニークな人物)のお墓もあるそうな。


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