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愛宕山往時のままの風ふたつ [くずし字入門]

atagoyama1_1.jpgm_atagoyama1_1[1].jpg 重長版『絵本江戸土産』中巻は「浅草晩景」「上野春景」「不忍池蓮」からいきなり「愛宕秋月」に飛んで終わる。絵は男坂と女坂が描かれている。この景色は今も変わらぬ。宝暦3年から260年後の今も同じ景色が保たれている処など滅多にない。現在の写真と260年前の絵を見比べつつ、なんだかうれしくなってしまった。

 

 釈文は…。新樹森ゝとして。和光のひかりかくやく(赫奕)たり。毎月廿四日ハ縁日なれば。早天より参詣おびたゝしく。山上の風景いはむかたなし。東は房総二洲。眼下に歴然たり。品川浦の入津。帰帆の廻船は。磯によせくる砂子よりも多し。江城下の町々の。軒のいらかハ。魚のうろこのつらなるがごとし。西ハ富士箱根・目前に。時ならぬ白雪をながめ。実に絶景の山上なり。

 

atagobansyu_1.jpg 現在の男坂・女坂の景色は同じだが「新樹森々として」の雰囲気はなくなった。「和光のひかり赫奕たり」とは? 「和光」は穏やかな威光で「赫奕」は光り輝くさま。樹林に光条差すような景や。「早天」は早朝。夜明けの空。あたしは朝型だから、今朝は東京スカイツリーの横から朝日が昇るのを見た。「言はむ方無し」は重長の常套句。房総二洲は上総と下総か。山上から東京湾方向を見れば、今は高層ビル群が聳えるばかり。横を向けば富士・箱根も見えぬが東京タワーが聳えている。甍がうろこ状に見えたのも明治までか。

 重長は上巻序にも「秋は愛宕の月に嘯き~」と記した。よほどの眺望だったと思われる。この19日夜は満月の「仲秋の名月」だった。愛宕山から高層ビル群の上に輝く満月もまた良きかな。


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