SSブログ

消し炭や身あがりさせて女抱き [くずし字入門]

sinjyu3_1.jpg昨日の続…。「あげくにハ、ふちにはなれしはぬけ鳥、手ぶりあミがさ一かいにてすごすご柏木がもとに来り」。「ふち=扶持=俸禄」に離れて「はぬけ鳥=羽抜け鳥」。羽が抜けてみじめで滑稽な姿。野鳥の夏羽から冬羽にの換羽時期で、季は夏。「手ぶりあミがさ=手振り編み笠=編笠以外は何も持っていないこと、無一文」。「一かい=一介=ひとり、何者でもない」。

 

そんな身ですごすごと遊女のもとに通ってはいけません。そこで「さらしな」は…「おなじとちのひき手茶やへけしすミみすみこんでも、とかくにかよふ恋のやミ、爰にも一ト月すむやすまず、よし原の元地へ遊女やの若ひ者に住込しが、爰にも長くしりがすハらず、あけてもくれてもかよひつめ」。

 

「けしすミ=花街の男の奉公人」。吉原なら風呂番、引手茶屋なら雑用兼ポン引きか。斎藤緑雨は樋口一葉が女性ながら「消し炭」なる言葉を知っているとは、なんとも凄いと盛んに感心していたと、どこかに書いていたそうな。扶持なしの羽抜け鳥になった男が日々通ってくれば、遊女も窮する。

 

「たがひにかしわ木も日夜の身あがりにつむりの物まで入あげて今ハ借金に首もまハらず、ないしょの手まへもめんぼくなく、つまらぬどうしのくされゑん」。「身あがり=身上がり、身揚がり=遊女が自分で抱え主に揚げ代を払うこと。金のない情夫の相手をする場合が多い」。「つむりの物=髪の物=簪(かんざし)、櫛、笄(こうがい=結髪用具)など、高価な装飾品もあり」。こうなれば、もう共倒れ。

 

「いつそしんだら、此くるしミをのがれてめいどで夫婦になる事もあらんといゝ合、人目のせきと年の関をやうやうこして元日のめでたき中に心中の死ぞめするぞはかまけれ」。「人目のせき(関)=関所のように人を容易に通さない意から、人目がはばかられ思うままにできないこと」。江戸時代は月〆、年〆ツケゆえに大晦日は大忙し。静かになっら元旦に心中をしたとか。

 最期に「かきおきのすゑに二首のうたあり」で「門まつのめいどのしるし目あてにて死出のたびぢへいそぐ元旦」と「川たけの苦がいの淵を浮ミ出てならくのそこに身をバうづめん」

 羽抜鳥・消し炭・手振り編み笠 身あがり・つむりの物…こんな言葉を覚えても何にもならねぇんだが…。メモ:下五「女抱く」とすれば終止形で二段切れ。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。