SSブログ

佐伯祐三3:白矢勝一『哀愁の巴里』 [スケッチ・美術系]

uzo2_1.jpg 佐伯祐三関連4冊目。今度は眼科医・日本医家芸術クラブ美術部長の白矢勝一著『佐伯祐三 哀愁の巴里』。祐三に惹かれて、医学的見地から彼の死に迫っている。

 佐伯はモランでのスケッチ行で、無理を重ねて心身を壊す。夜中に「医者を呼べ」の叫びで、米子が深夜のパリで医者探し。見かねた巡査が警察医を手配。フランス医が多めのモルヒネを毎日打ったらしい。睡眠状態後に幻覚・精神錯乱。画友らがモンパルナス駅近くのリュ・ド・ヴァングのアパートに集って保護看護。だが脱出・失踪した。翌朝未明、警察よりクラマーユの森で保護の報。

 その場にいなかった画友らの記述、自殺を隠蔽したい妻などによって真実が曖昧になる。著者は日本病跡学会で発表された「精神病院入院資料・死亡診断書」などから検証。「佐伯祐三の死は〝結核による非業の早世〟程度に捉えられているが、実際は精神の異常、自殺未遂、最愛の娘・弥智子の死などの悲劇を伴う友人・知人を巻き込んだ壮絶なものだった」と締めくくっている。

 また最後に「真贋事件」の章を設けて「落合氏の著作以外に〝吉薗周蔵〟の名を目にしたことがないし、「吉薗資料」説は小林頼子特別研究員の仔細調査報告で破綻したと一蹴。

 画家らの評伝書は、かくも魑魅魍魎。たかが絵?に想像絶する高額売買が成立して欲望が渦巻くからだろう。小生のような老人が、隠居の愉しみで覗く世界ではなさそうだ。「あぁ、イヤだ・イヤだ」と思いながら佐伯祐三の似顔絵を描いたが、似ているようで似ていない。ハンサムだが、パリの田舎の荒物屋で作業服を求めて店に入れば、店主につまみだされるような酷い格好をしていたらしい。

 昨日、自転車を駆って東京都美術館「伝説の洋画家たち~二科百年展」を観に行った。藤田嗣治の簡易模写した「メキシコに於けるマドレーヌ」他があり、佐伯祐三作品では「リュ・ブランシオン」(という名の通りの風景画)と「新聞屋」(その店頭の各紙誌の文字満載)が展示されていた。「筆が一番走っているのが佐伯の絵なんだ」と知ったかぶりの男が連れの女に得意げに解説していた。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。