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川本三郎「東京おもひで草」 [読書・言葉備忘録]

 ちくま文庫で読書済も、同単行本を再び手にしてしまった。で、ここは文字通り「備忘録」。第一部の「散歩ことはじめ」と「“荷風と東京”のあと」は、02年刊「荷風好日」にも収録。あたしは三度読むことになった。「散歩…」では、江戸時代に散歩など“はしたない”ことだったが、今日の“東京散歩”ブームは荷風さんから始まったと書いている。「“荷風と東京”のあと」では同書(読売文学賞受賞)上梓によって新たに得た知識や出会いを書いている。八重次さんのその後(あたしも調べた)、荷風母方の鷲津家の消息としては目白学園女子短大助教授・鷲津名都江さんが、元童謡歌手の小鳩くるみさんだと記す。浄閑寺住職に挨拶すれば、お嬢さんの戸松泉さんが相模大助教授で、川本と近代文学の師の兄弟弟子とわかったとか。あたしが浄閑寺を訪ねて荷風碑がわからず訊ねた際に「本堂の裏ですよ~」と大声で応えて下さった方のような…。

 他は写真家、作家、映画及び映画人、交通網を通しての山の手・下町比較の都市論エッセーと言っていいだろう。あたしの住む新宿については「大沢存昌“新宿鮫”の歌舞伎町」と「新宿さまがわり」で記されている。書かれたのが97年で、新宿は2000年12月の大江戸線、さらに副都心線も開通してさらに大変化している。川本三郎の眼力で東京と疲弊する地方の比較構図も解いてもらいたいと思った。

 目下は川本著「青の幻影」読書中。ここで氏は大江健三郎評論で「シェルター」と「書きなおしつつある文章」をキーワードで解いていて面白かった。「おもひで草」では「Shall Weカメラ」で5名の写真家をとりあげているが、写真家は概ね「眼の人」で、大江は「見る瞬間ではなく、見たあとでそれを何度も書きなおし・なぞる過程で現実世界と深く深く関わっていく作家だと記している。


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