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諸田玲子「お順」~勝海舟の妹と五人の男 [幕末維新・三舟他]

ojyun_1.jpg 勝海舟関連本を読んだら、図書館で同書が眼に入った。上下巻の上巻のみ。読みだしたら面白くて一気読了。しかし下巻が貸出中でなかなか読めぬ。日曜日にやっと手にして一日で読了。面白かったなぁ。なぜか・・・。今まで読んできたのが史実書で、頭にたたみ込まれた人々が、時代小説でにわかにイキイキと動き出したからだ。時代小説は史実書を先に読んでからが愉しいようでございます。

 赤坂の勝安芳邸の屋敷図面に、広大な庭にポツンと「お順」家屋があった。小説を読むと、そこに明かりが灯って、おきゃんな娘時代に剣豪・島田虎之助に恋心を募らせ、佐久間象山の妻になり、未亡人になって女ったらしの村上俊五郎に身悶えたお順の息遣いが聞こえてきた。諸田玲子、さすが也。

 諸田玲子「お鳥見女房」シリーズでは、鳥見役の女房が主人公ながら肝心の鳥の描写がなく、思い出したように鳥の記述が出てくれば、コマドリが雑司ヶ谷の欅の股に営巣するなどの間違い記述があったりして、それが機でこのブログでも将軍~鷹匠~鳥見役~鳥刺し、また御鷹部屋調べ、江戸の野鳥や飼鳥調べなどをした経緯がある。

 それはさておき、「お順」はやはり面白い。書くことを薦めたのは勝海舟を“勝っつぁん”と呼ぶ半藤一利だったとか。著者は勝っつぁんの13歳下の妹・お順の生涯を描きつつ兄・海舟を、父・小吉と母・信を、海舟の妻・お民を、さらにはお順からみた幕末維新の激動を描いていく。物語の主軸はお順の男遍歴。おきゃんなお順は、兄の従兄で聖剣・男谷精一郎の直心影流道場の兄弟子・島田虎之助に恋心を抱く。剣は凄いが野暮天の虎之助。やっと恋が実りかけたところで虎之助が急逝。この辺は史実を壊さぬ範囲でのフィクションならの面白さ。

 お順は傷を癒すように兄が砲術を習う異相・異能の自信家・佐久間象山に嫁ぐ。象山には子を産んだ側室・お蝶がいたが、妻女として佐久間家を盛り立てる。日夜欠かさぬまぐわいだが子は出来ぬ。やがて吉田寅次郎の密航事件に連座して国元蟄居。江戸を離れるシーンでは、読み手を中山道の旅に共に誘う筆力で、またまた「うまいなぁ」と関心した。そう思ったところに野鳥が出てきた。今度はイカルとキツツキだ。(長くなったので、また明日)。


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