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諸田玲子「お順」(昨日の続き) [幕末維新・三舟他]

sumidakatu1_1.jpg 昨日は中チャリを駆って本所界隈から墨田区役所へ彷徨った。30㎞、5時間のポタリング。写真は墨田区役所の裏側、隅田川沿いに8年前に建てられた勝海舟像。「いよぉ~、いい男!」

 で、諸田玲子「お順」の続きを記す。お順が嫁いだ佐久間象山が国元蟄居となり、静かな信州松代の生活を始めたところで、同書唯一、35字の野鳥記述あり。「キーコーキーコーという斑鳩の声やキョッキョッという啄木鳥の声で目覚めた」。季節は十一月。

 鳴き声表記は微妙で、イカルは長音二音の繰り返しより複雑な囀り(野鳥本には「お菊二十四」」「フィロソフィー」と囀るとある)だと思うが、まぁ間違いではないだろう。しかし「鳥=囀り」とは限らぬ。この時期のイカルは地に落ちた実を噛み砕くパチパチという、実のはぜるような音を発す。数羽ではなく50、100羽の群れが一斉に発するその音は、一度聴いたら忘れぬ。「大寒やイカル群れ来てはぜる音」はあたしの拙句。大寒(1月20日)に小金井公園に行くってぇと、イカルの大群とこの音に出逢える。鳥撮りとしてはイカルの群れの中に混じる希少種のコイルカ狙い。そして啄木鳥。キツツキ科は10種を超えるが、キツツキもまた囀りより木を突くカンカン、コンコンなどの音が特徴。森の中を耳を澄ませて、その音を頼りにキツツキ探しをしたりする。著者は期せずして囀りより他の音に特徴を有する鳥を選んだ。野鳥は机上描写ままならずってこと。

 話を戻そう。象山が京都で斬殺された後、お順は赤坂元氷川の勝海舟邸で過ごしながら、象山の仇、長州武士を討ちたく、山岡鉄舟の配下で居合抜きの剣豪・村上俊五郎に惚れる。この男、とんでもない奴だった。酒乱で女ったらし。未亡人・お順は仇討か身悶えか曖昧な事態に陥る。勝安芳邸に移っても、亭主面して金の無心絶えず。ラストシーンはあの大銀杏を見上げながら老いた勝とお順・・・。

 いやはや、本当に面白かった。著者の筆力で一気に読ませる。著者は生まれも育ちも静岡市。「あとがき」で実家の裏の蓮久寺にお順の墓があり、父方の祖先が勝親子と親しくつき合っていた事がわかったと記す。今まで好きでなかった勝海舟がスゴイ人だとわかったとも書いていた。半藤一利さんの“勝っつぁん” 好きが著者にも移ったようだ。「サンデー毎日」連載で、昨年2010年12月、毎日新聞社刊。


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