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重長版「三囲の春色」(私流メモ4) [くずし字入門]

mimeguriharu1_1.jpg  両国橋の納涼から、春の三囲神社へ移った。広重『絵本江戸土産』は、確か江戸城から放射状に時計回りに進んだと習った(?)が、重長版いかなる展開や。

 

桜の墨堤散歩を幾度かして、その都度に三囲神社まで足を伸ばした。境内に其角「夕立や田をみめぐりの神ならば」の句碑あり。詠んだ翌日に念願の雨が降ったとか。詠んだ1年後は芭蕉没の元禄7年(1694)。重長の絵はその約60年後の宝暦3年(1753)だが、同句碑の神社建立は安永6年(1859)とか。当時はまだ有名句とは言えなかったようで、重長は触れていない。

 

さて、文は少々難しかった。「衣更着」はきさらぎ。如月、更衣、旧暦二月。春の訪れに堤の草も蒼々として長閑な陽気に人々も野に繰り出す。初午は(はつうま・はつむま)。三囲神社は田中稲荷でもあり、初牛は稲荷神社の豊作祈願祭礼。景色(けしき・けいしょく)。「華表=かひょう」は中国の建物標柱で、日本の鳥居の起源とかで「とりゐ」。「笠木」はその仕上材か。春に浮かれて人々は舟で乗着、また両国から堤沿いにスミレ、タンポポ、ヨネメを摘みながら稲荷に集う。嫁菜に姑交じりと記すはシャレ。飛花とくれば「飛花落葉」。無常ゆえの春の歓び。華、乗、群衆、夥、輩、嫁、興、尋、暮、翻、飛…難しいくずし字ばかり。分らぬのは「角田河のわたし守ハはや」の「や」。「や=夜」のくずし字の旁だけで、人偏も省略と思ったが、いかがだろう。

 

mimegurie_1.jpg以下は釈文(しゃくもん)。衣更着の初午にもなれば。四方の景色もいと長閑にして。堤の艸も蒼々として。人の心をともないて。船にて稲荷参詣の男女は。土手の上より見ゆる。華表の笠木目当にして。堤の岸に乗着て。参詣群集夥し。陸より歩をはこぶ輩は。両国の岸より。堤つたひにつみ草のすミれ。たんほゝ。嫁菜しうとめうち交り。もて興じてゆくありさま。或は竹町のわたしを打わたり。しミ田川のほとりまで尋行もあり。角田河のわたし守ハはや。舟に乗れど。夕暮までのにぎハひ。稲荷ののぼり風に翻りて。飛花天に至るかとあやしまれ侍る

 題名は「春色」だが、稲荷の祭りが豊作祈願ゆえ田植え風景もあり。梅から五月頃までの季節が混ざっている。


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