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重長版「吉原の佳春」(私流メモ7) [くずし字入門]

yosiwaraharu1_1.jpg 先日のこと。地下鉄に乗っていて、眼に入る広告文字の「くずし」を知らぬうちに指書きしている自分に気付いた。ここまで筆写してきたならばで、ここに至れば覚えも早かろうぞ。さて、今回は「吉原の佳春」。

 

 書き出しは「昔ハ今の(と云っても宝暦三年)さかい町辺にあり」で、それは西村重長の生まれ育ちの日本橋油通り町の近く。今の人形町通り東側。今も「大門(おおもん)通り」と名を残している。吉原は明暦の大火で浅草裏に移転した。そして吉原生まれの蔦屋重三郎が大門前に書店を開いてガイドブック『吉原細見』をヒットさせ、それを足ががりに江戸出版界に踊り出た。写真は吉原大門前の「見返り柳」。

 

以下、釈文… 昔ハのさかい町辺に有しを。明暦のころ此所にうつる故。その時より。新吉原と名付たり。行かふ遊客衣紋坂にて。姿をよそほひ。五十間道の編笠青く。昔の風情を残し。大門口の桃灯行燈。さながら白昼のごとくいかめしく。中の町の青簾に。思ひ思ひの気待顔の風情。或ハ三味小唄酒宴を催し春ハ桜花に酔をすゝめ。秋ハ灯籠に眠を醒す。誠に若紫の色香を。江戸町に残し。花の都の京町に。かへらん惜口舌の客も床の内。つい角町に其跡ハ。馴染深夫のよい中の町。客をのぼせる揚屋町。五町まちのにぎハひは。四季おりおりの壮観ハ。又と外にハ有まじくめてたくかしく

 

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m_kasiku_1[1].jpg  吉原のことを記せば長くなろうから止めて、ここではくずし字に集中。文章最後「かしく」は合字だろう。合字の幾つかをメモしてみた。ここで気付いた。荷風さんが若い時分に「こう命」「壮吉命」と刺青を彫り合った富松さんが、後に亡くなったことを知って、谷中三崎町・王蓮寺に香花と句を手向けた。その時の句が「晝顔の蔦もかしくとよまれけり」。この「かしく」がいかにも蔦に絡むような字だったことを思い出した。「かしく」は「かしこ」の転。女性が手紙末尾に書く言葉とか。これにて西村重長『絵本江戸土産』上巻おわりで、次回から中巻に移る。


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