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男は「穴賢」。女は「穴~」。合字メモ [くずし字入門]

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片山正和著『60歳からの古文書独学』(新人物往来社刊)を読んでいたら、ネット販売の古本市で入手の吉原は三浦屋・高尾大夫の恋文の写しが載っていた。女性書簡にひんぱんに登場する「仮名のくずし字の合字=まいらせ候、さま、かしく」の解読に、一時はあきらめたほど難渋した。「どうしてこんな字形になるのかわからない」とまで記していた。「さま」は「さ+満」の合字。「まいらせ候」は「詣の旁」のくずしで省略したと推測するが…。

 

 合字(ごうじ)。講座の先生は“合わせ字”と言っていた。あたしは古文書の勉強前に荷風句で「かしく」は知っていた。男が手紙文末に記す「かしこ」の女性版。荷風は若き日に「こう命」「壮吉命」と彫り合った芸者・富松が、後に亡くなったと知って墓地に香花と共に「晝顔の蔓もかしくとよまれけり」の句を手向けた。その「かしく」が朝顔の蔦のようで、荷風の遊び心…、いや、富松から文末に「かしく」の恋文をもらったことがあってのことと推測する。

 

 その「かしく」は「可之久」だろう。ならば男性の「かしこ」は「可之己」か。「穴賢=あなかしこ」。「穴が賢い」とはなんぞや。「あな」は感嘆詞「ああ。あら」。「かしこ=賢し。畏し。恐れ多い。畏れ多い。尊い」。「謹んで申し上げます」の意。

 

 これら手紙文末に用いられる言葉は「書き止め」と言うそうな。「書き止め」には「恐惶謹言」「恐々謹言」「頓首」「敬白」など。

 

合字の「より」はよく眼にするが、「こと」は未だ見たことがない。探していたら兼好『徒然草』の書き出し二行目「うつりゆくよしなし<こと>を」があった。三行目の<こそ>も合字っぽい。

「可被下候=くださるべくそうろう」の「可+被」も、「可=(の)のようなくずし」と「被=(ヒ)のようなくずし」が合字になっていて、筆順は最後に「ヒ」の右点を打つらしい。合字は他にも多かろうが、これまでに知った合字をメモしておく。


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