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へっつい考3:へっつい幽霊と左官職人 [暮らしの手帖]

hitotihettui_1.jpg へっついと言えば、落語「へっつい幽霊」が浮かぶ。あたしは志ん朝ファンゆえ、彼の「へっつい幽霊」を記す。ちくま文庫の『志ん朝の落語5』の解説に、もとは上方噺で、その趣きを残していたのは三代目桂三木助と六代目三遊亭圓生だった、とある。若旦那と熊さんとへっつい幽霊がからむが、志ん朝のは短縮した噺になっている。元は上方噺だから、この噺と浅草「へっつい横町」を結びつけるのは間違いだろう。志ん朝の短縮版をさらに短縮してみよう。

 

 「こりゃ、いい竃だ。買った」「ただでお譲りします。その代り、後で気に入らねぇってんで、お戻しになっちゃいやですよ」ってぇことで、その竃を据えた丑三つ時、薪もくべないのに、竃から幽霊が出やがった。「怖かねぇぞ。何んで出やがった」「あのぅ、相談が…」「幽霊が相談だと」「あたしは左官職人で博打がでぇ好きだった。首が回らなくなって、これが最後の博打。そしたら二百五十両も勝っちゃった。竃をこさえて二百両を埋め込んだ。残り五十両あるから毎晩呑んだ。そんな或る日、酔い潰れてドブん中に頭ァ突っ込んで死んじまった」「で、二百両が気になって化けて出たか」「えぇ、幽霊になって手に力が入ぇらねぇんで、この竃を壊して金を出していただきた」「いいよ、その代り山分けだよ」。バンバン!「やっ、ほんとに金が出てきた。さぁ、おめぇが百両、俺が百両だ」「それを賭けませんか」「おぉ、そこまで博打が好きか。よし、コロコロっと。半で俺の勝ち。二百両いただきだ」「もう一度勝負を」「てやんでぇ、てめぇには、もう金はねぇ」「いえ、あっしも幽霊。足は出さねぇ」。

 

 ここから、竃作りは左官職人の仕事とわかる。ケヤキの台はむろん大工仕事。竃と台の間に平瓦を敷いたらしい。竃が壊れると、長屋仲間や出入りの左官職人が直したが、「へっつい直し」の掛け声の流しもあったそうな。これにはワルがいて、直してから法外な金を要求したとか。今も庶民が庶民を騙す情けねぇワルがいる。★「とか」「らしい」表現は、証拠文献に至っていないゆえで、わかれば後日に訂正。(続く)


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