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鶉衣10:借物の辨‐僧の金貸し [鶉衣・方丈記他]

karimono2_1.jpg むかし男ありて、身代(家計)もならの(奈良の=ならず)京春日の里にかす人ありて、かりにいに(借りに往に)けるより(昔、男がいて家計成らず、奈良の春日の里に金を貸す人〝春日〟がいて借りに行った)

 やごとなき(やんごとなしの略、やむごとなし=捨ててはおけぬ事情で)雲の上人も(高貴な方も)かりにだに(借りたって)やは(いやそうではなく)君は来ざらんと露ふか草のふか入し給へば(深入りしてしまえば)、鬼のやうなるものゝふも、露月比より(十一月頃より)は地蔵顔(ニコニコ顔)して、人にたのむもかりがねは、尾羽うちからして、春来てもこし地へかへらず。(貧相な姿となり、春が来ても雁のように来る前の地に戻って行かない。返済しないだろう)

 かりの宿りに心とむ(とむ=求め)なと、人をだに(強調)いさむる(諌む=いましめる)出家達も、借らでは現世の立がたき(難き)にや(疑問・反語の意を表す)

 二季(盆暮れ)の台所には掛乞の衆生(かけごひのしゅじょう=売掛代金をとりたてる音)来りて、色衣(しきえ=僧)の長老これが為におがみ給へば、又ある寺には有徳の知識(金持ちの知僧)ありて、これはこちから借しつけて(金貸しをして)、きり(返済日)の算用滞れば、貧なる檀方(檀家)を呵責し給ふ。かれもこれも共に仏の御心にはたがふ(背く)らむとぞ(~と言われている)覚ゆる(思われる)。長いのでここで切って次回へ続く。

 「かりの宿り」を司馬遼太郎は〝仮りの宿〟としているが間違い。「かり=貸す、借す」+「宿り=すまい、家」=「金貸しの家」が正しい。「伊勢物語」のもじりなどあって無教養の小生は「古語辞典」首っ引きでも難しかった。


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