SSブログ

鶉衣12:借物の辨‐女房の貸し借り [鶉衣・方丈記他]

 karimono4_1.jpgなべて世にある人の衣服・調度をはじめて、人なみならねば恥かしとて、そのためにかねをかりて世上の恥はつくらふ(繕う)らめど、人の物をかりてかへさぬを恥と思はざるは、たゞ傾城(遊女)の客にむかひて、飯くふ口もとを恥かしがれど、うそつく口は恥ぢざるにおなじ。

 かくいへる我も借らぬにてはなし。かす人だに(だって、でさえ)あらば、誰とてもかり(仮り・借り)のうき世に、金銀・道具はいふに及ばす。かり親・かり養子も勝手次第にて、女房ばかりはかりひきのならぬ世のおきてこそ有がたきためしなれ。かる人の手によごれけり金銀花

 ★「らめど」は推量「らむ」の已然形「らめ」+ど「が」=~ているだろうが。★いきなり遊女の比喩で驚いた。遊女は飯食う口を恥ずかしがっていても、嘘をつくのは恥ずかしがらないと言っている。吉宗の緊縮政策に逆らって宗春は尾張に遊郭もつくったが、用人だった也有もそれに奔走されたや。

 ★仮養子で思い付くのは曲亭馬琴。確か嫡男で医者の宗拍が病死し、孫を武士にすべく同心の御家人株を百三十両で買って信濃町に移住。孫が元服するまで遠縁の青年を仮養子にした。解約に際してはそれなりのお金をむしり取られていたような。

suikazura1_1.jpg ★「かりひき」は、校注で稿本(手書き本)に「借り引き」とあり「貸し借りすること」とあった。「女房の貸し借り」なら谷崎潤一郎と佐藤春夫の「細君(千代子夫人)譲渡事件」を思い出す。千代子夫人もしたたかで第三の男がいたそうな。

 ★「かる人の手によごれけり金銀花」の句は「「借る:刈る」をかけて、刈る(借る)人によって金銀(金銀花)も汚れようの意。金銀花は吸葛(すいかずら)忍冬(にんどう)の花。季は夏。蔦状の半常緑で他の木に絡みつき。初夏に白、後に淡黄色に変わる唇形の花を咲かせる。小さな、こんな花らしい。機会があれば見て撮ってみたい。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。