長らへて医療機潜り春を見ゆ [暮らしの手帖]
最近、耳慣れぬ最新医療検査機器に身体を委ねることあり。歩くと足裏がチクチクするので診てもらおうと思った。うっかり「痺れもある」と言えば、医者がうれしそうに「MRI検査(磁気共鳴画像検査)」をしましょ、と言った。
検査台に耳栓をして横たわる。宇宙船のような中にもぐり込むとグワングァンの大音響。強い磁力・電波で体内画像を撮っているらしい。背骨を横から撮った写真を見せて「ホラ、この背骨が歪んでいる」。次に脊柱内写真。「上の方の穴に比しココの脊柱菅が狭くて神経を圧迫。脊柱菅狭窄症だな」。
かくして血流がよくなる薬を飲むことになったが、肝心の足裏のチクチクはマッサージ系らしく整形医は無関心。北斎の足の模写の際に覚えた「足根球が痛い」と言えば、「私たちはそんな難しい言葉は使いません。ココやソコでいいでしょう」。
風邪をひいていたので、風邪薬をもらおうと内科へ寄ればレントゲンを撮られた。「よくわからないから、もう一度撮らせて下さい」。翌月にまたレントゲン。今度は「CT検査を受けて下さい」「オイオイ、何を調べているの」「肺ガン」「ウヒャ~」。1週間後のCT検査まで、生きた心地がしない。なんだか本当に胸が悪くなってきた。10年前に禁煙したが、それ以前はチェーンスモーカー。覚悟を決めて検査台に横たわった。結果は、何でもなし。
以上は大病院。今度は最寄りの診療所で「健康診断」を受けた。検便に血の反応ありで「大腸ガン検査を受けて下さい」。「ネットには大半が痔による血の反応とか。俺も痔なんだ。ケツから何かを突っ込んで調べるなぁんざ絶対にイヤだぜ」。「一度も受けたことがないのでしょ。受けましょ」(結局、ケツから内視鏡+ポリープ除去を3度も受けることになった)
病院は「薬漬け」にすると知っていたが、「検査漬け」にもするらしい。あたしはフリーゆえ、会社員だったら受けるだろう定期健康診断に無縁のまま隠居を迎えた。この歳になると、この身体は自分のものではなく病院が管理するものらしい。
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