由井「ふみ込は草臥足も直るかや~」 [狂歌入東海道]
第十七作目は「由井(由比、油井)。狂歌は「ふみ込は草臥足も直るかや三里たけなる由井川の水」。「かや=~であるかなぁ」。「三里だけなる」は蒲原から由井宿~由井川まで三里ということか。
絵は由井川を〝仮板橋〟で渡る駕籠や飛脚が描かれている。弥次喜多のふたりは、油井宿に入ると両側の茶屋の女の客寄せ声に「呼たつる女の声はかみそりやさてこそ爰は髪由井の宿」。「呼びたつる=呼び声が高く響く」だろう。〝たつる(断つの意もあり)・かみそり・髪結い〟の縁語の洒落か。
今も残る本陣跡の前に、油井正雪の代々続く紺屋(藍染)があるらしい。由井川を徒歩(かち)渡りした後は、興津までの途中「倉沢」といへる立場へ着く。爰は栄螺・鮑が名物。「爰もとに売るハさゞゐの壺焼や見どころおほき倉沢の宿」。(見どころは三保の松原、田子の浦、清見は関など)
ここからが薩埵峠(さったとうげ)。山が海に迫って、昔は〝親知らず子知らず〟の難所。その後、朝鮮人来朝に合せて中道、上道が出来た。保永堂版「由井・薩埵嶺」は中道で崖にしがみつくようにして富士と眼下の海の絶景を眺める旅人が描かれている。この峠を下って興津川を渡ると「興津宿」へ至る。
2016-08-06 06:28
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