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映画「ソール・ライター」を観て① [スケッチ・美術系]

s-leiter_1.jpg 2月9日のテレビ「日曜美術館」が「ソール・ライター」だった。後半から観て「おや、NYの隠棲者」と思った。日本で隠棲者と云えば鴨長明、吉田兼好、横井也有~、新しいところでは永井荷風も挙げようか。

 同展開催「渋谷bunkamura」のル・シネマで映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」上映中。アカデミー賞「パラサイト」を止めて「ソール・ライター」を観ることにした。

 映画はライター89歳逝去の前年2012年製作。冒頭~ 彼の乱雑な仕事部屋(60年間住んだイースト・ヴィレッジの部屋)でのモノローグから始まった。「私は大した人間じゃない。映画にする価値などあるもんか。でもまぁ、仕方がないか。ふふふっ~」

 乱雑部屋での写真探し(整理)。昔の紙焼き、リバーサルフィルム(スライド)、亡き恋人ソームズ(モデルの卵時代から彼と深間で同建物に住む。ライター79歳の時に逝去)の部屋での探し物。時にカメラ片手に近所を散歩。彼の名言(箴言)13に分けた構成。

 凝った演出・衒いなしで〝老人ペース〟でゆっくりと進行する。小生、途中でちょっと眠くなった。そう云えば先週のこと、中野のカフェで隣席に、彼と同年配風の老人が座った。バッグから大判のクロスワード表を広げた。老人はそうして過ごすのが日課らしい。

 その爺さんに、カメラを持たせれば〝ソール・ライター爺さん〟になるような~。独居部屋でスケッチ帳に少しだけ絵筆を動かし、部屋の整理をし、カメラ片手に近所をゆっくりと散歩する。映画ではベンチのOL風のミニスカートから伸びた脚を撮って「いい写真だろ」(盗撮っぽい)とニヤリと笑った。

 1923年(大正12年)生まれ。父はユダヤ教聖教者。自身も神学を学んだが嫌気を覚え、画家志望でNYへ。あぁ、そんな画家がいたなぁ。ゴッホだ。ゴッホも牧師一家の子で、伝道師見習いから画家転向。ライターは画の勉強中に当時開発されたばかりのカラー写真に目覚めた。

 35歳頃からファッション雑誌で活躍。やがてNY5番街にスタジオを構えるほどの花形写真家へ。58歳(1981)でスタジオを閉めた。彼の晩年のアシスタントはこう語る。「モデル撮影に大勢のビジネスマンがついて来て〝あ~だ・こ~だ〟。ライター、耐え切れずにスタジオを出て行った」。それが〝隠棲〟の始まり。やがて電気代も払えず、友人たちの援助で暮すことになる。

 彼の代表作は隠棲後の作と思っていたが、改めて代表作を確認すれば、ほとんどが隠棲のずっと前の30歳代(50年代)作だとわかった。昔のイースト・ヴィレッジや橋を渡ったブルックリンはヘンリー・ミラーが育った街で、50年代はビートニックの街、60年代はヒッピーの街だった。次回はその辺を探ってみたい(ここまではネットに満ちるソール・ライター関係記述を参考にした)。彼の写真は素敵だが、それに負けず劣らぬ絵がすごくいい。挿絵は「ふふふっ」と笑う彼の似顔絵(描き直した)。50年ほど連れ添ったというソームズは、果たして幸せだったのだろうか。(続く)

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