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行水や盥とともに姿消し [おくのほそ道]

 「おくのほそ道」40句目は、象潟の「祭礼」二句目として岐阜長良の商人で俳人・低耳(ていじ)の句が載っている。<蜑(あま)の家や戸板を敷て夕涼> 「蜑」は漁師、海女。海岸の漁夫の家々は簡素な生活を営んでいて、夕方になると、海辺に戸板を敷いて涼をとっている。

 あたしの子供時分のとびきりの夕涼みは、浴衣姿になって縁側でスイカを食うひと時だったか。スイカは早くから井戸で冷やされてい、縁側には香取線香が揺らぎ、団扇の風もあった。浴衣になる前は、家族全員が順番で行水を澄ませていたかもしれない。戦後の貧しくも幸せだった夏の情景。今は行水も、あの大きな木の盥(たらい)も姿を消した。気候も変って、夏は灼熱地獄。夕涼みの風情どころではなく、夜も熱中症の危険からいかに身を守るかが問題になっている。<夕涼み>という情緒ある言葉も死語になりつつあるのか。

 今朝の東京は、昨夜の雪が凍って、早朝に歩く人の凍った道を割るバリバリという音が響く。季節も時代も違う「おくのほそ道」シリーズのページビューはすこぶる悪いが、あと20句は続く・・・。


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