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日本橋川(12)佐伯泰英著『鎌倉河岸捕物控』 [日本橋川]

jidaisyosetu3_1.jpg 池波正太郎が昭和42年から清水門前を役宅にした『鬼平犯科帳』シリーズを始めた。その50年前の大正6年に岡本綺堂が「三河町の親分」こと『半七捕物帳』シリーズを開始。今は佐伯泰英が「鎌倉河岸」から「常磐橋」沿いを舞台の『鎌倉河岸捕物控』シリーズを書いている。

 日本橋川沿いを自転車で走りつつ、思いもかけず上記捕物3シリーズをちょい読みすることになった。日本橋川沿いが、それだけ江戸の歴史や情緒を秘めているってこと。また日本橋川を拠点にするのも、時代小説のひとつの定石なのかも、と思った次第。

 佐伯泰英は神田雉子町名主の齋藤家三代によって著された『江戸名所図会』(7巻20冊)の、長谷川雪旦による絵「鎌倉町豊島屋酒店白酒を商う図」を見たことから、同シリーズを書くきっかけになったとか。現在は22巻目が発売中(ハルキ文庫)。小説舞台の界隈を自転車で走っていたら、「龍閑橋高架橋」が東北縦貫線工事中で、その工事壁面に「豊島屋」の絵の一部が漫画タッチで描かれていた。

tosimayanoe1_1.jpg 同シリーズの時代は寛政から享和へかけて。主人公は常磐橋門外の「金座」裏の宗五郎親分と、むじな長屋育ちで呉服の松阪屋手代から十代目の若親分になる(なった)政次。二代目親分が「金座」に入った強盗を手首を斬られつつ守ったことで、将軍家光公認の由緒ある十手持ち。

 同じむじな長屋育ちで、宗五郎親分の代から手先になった独楽鼠の亮吉と、「龍閑橋」の船宿の船頭になった彦四朗がいる。彼らが集う場が「豊島屋」。雛祭りの旧暦2月18日から19日朝までに白酒1400樽が売れる大繁盛店。三人か憧れ、後に政次と所帯を持つことになる看板娘しほがいる。

 同シリーズの巻頭に「鎌倉河岸」「豊島屋」「常磐橋」「金座」など『江戸切絵図』通りの地図が載っている。捕物小説は江戸の彼方此方で事件が起こるが、同シリーズは事件前と解決後に必ず「鎌倉河岸」に暮す人々の交流があたたかく描かれているのが特徴。読んでいるってぇと、フィクションながら江戸の日本橋川界隈の情緒が漂ってくるようがちょっとうれしい。


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