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裏藪へ浦島草が誘ひ込み [週末大島暮し]

urasimasou1_1_1.jpg 半年ぶりの大島暮し。四月上旬滞在は初めて。台所仕事のかかぁが、窓の外を見て言った。「おまいさん、藪際に奇妙な花がたくさん咲いているよう」。ロッジ裏は深い藪。藪ん中からコジュケイの鳴き声が毎朝のように聞こえ、ケンケンと雉も鳴き、ゲッゲッとタイワンリスも啼く。藪から野生化したクジャクが出てきたこともある。

 カメラを持って裏藪にまわった。奇妙な花は図鑑をひもといて「浦島草」と知った。サトイモ科テンナンショウ属。花のように見えるのは仏炎苞。肉穂花序を包む大形のもので、肉穂花序から浦島太郎の釣糸に例えられる長~い紐状が伸びている。こやつ性転換もする。仏炎苞の裾がちょっと開いているのが雄花。しっかり閉じた雌花は媒体虫のキノコバエを閉じ込める。秋に赤い実をつけるが有毒なり。似た植物に「マムシ草」があるが、長~い紐状がない。別名「蛇草」。

urasimasouup_1.jpg 奇妙で不思議な植物。解説される言葉も馴染みがない。★仏炎苞:ぶつえんほう。植物の苞のうち、肉穂花序を包む大形のもの。ミズバショウやザゼンソウなどのサトイモ科植物にみられる。★肉穂花序:にくすいかじょ。肥大した太い花軸の表面に多数の小さな花が並び密集した花序のこと。

 園芸サイトを見たら一苗が800~1000円ほど。色変わり珍品は5000円を超える。ロッジの裏藪際には何万円分あろうや。

 子規の句に「枕もと浦島草を活けてけり」がある。根岸の子規庵での句だろう。妹・律が活けたか。山口青邨の句に「蜑が家の簾の裾の浦島草」もある。「蜑=あま、漁師」で「蜑が家」は漁師の家。芭蕉は秋田・象潟(きさかた)での句に「蜑の家や戸板を敷て夕涼」。これらをひもとく手許の歳時記は、遊子館刊の大岡信監修シリーズの四冊だが、植物編の表紙絵は「蝮草」だった。

 島暮し二十年余だが、身近に未知で妖しい自然への「扉」がいっぱいある。


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