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ガラス玉夕陽孕みて春を待ち [週末大島暮し]

yuuhigarasutama1_1.jpg 島ロッジのベランダに、大小のガラス玉が下がっている。冬が近づくに従って伊豆半島や富士山がクリアに見え、夕陽も冴え渡る。キンと凍て澄んだ大気ゆえだろう。

 

 こう記せば透明感のある静謐な情景が浮かぼうが、そうは問屋が卸さない。冬になるに従って怖いほどの西風に襲われる。この写真も西風にガラス玉は激しく揺れ、芒は狂ったようになびき、カメラを構えるあたしも両足を踏ん張っている。冬の西風は体温を奪い刺すように痛い。

 

 昔はベランダから海は見えず、防風林に護られていた。保護されるべく防風林が徐々に伐採されて今は写真の通り「海一望」。かくして西風がロッジを直撃する。

日没と同時に漆黒の闇。耳だけが敏感になる。西風に軋む木々の音、磯場に砕ける波の音、周期的に数段と強い風が襲ってロッジがガクッと揺れる。エントツが落ち、物置も動く。冬の島ロッジは怖くて暮せぬようになってしまった。

 「それがなぁ、最近の西風はなぜか数日続くとピタッと止まるんだ。で、妙に小春日和になる」。島の方がそう言った。これまた不可解な変化。とまれ厳しい冬が終われば、島の椿は咲き誇り、メジロは飛び交い、ウグイスは鳴く。厳しい西風は、春の至福を産む陣痛なのかもしれない。16日で台風26号の災害から2か月目。


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