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(4)色恋の情緒は新内で [江戸生艶気蒲焼]

sinnai1_1.jpg最初の絵は、艶二郎が寝そべって本を読んでいる図。読んでいるのは新内節正本の『帰咲名残の命毛(かえりざきなごりのいのちげ)』と『仇比恋の浮橋(あだくらべこいのうきはし)』。艶二郎が<「玉木屋伊太八」や「浮世猪之介」がうらやましいなぁ>と呟いてい、その主人公が上記新内節。

★艶二郎に浮気の夢を膨らませた新内節正本とは。探せば「近代デジタルライブラリー」(写真)や「新潟大学・古文書・古典籍コレクション・デース」に新内節正本『帰咲名残の命毛』があった。当然ながら「くずし字」。しかも寄席文字(ビラ文字、橘流)風で読むも難儀。

『帰咲名残の命毛』は延享4年(1747)の実際の心中未遂事件がモチーフ。津軽藩士の伊太八と吉原遊女・尾上の心中未遂を、武士を町人にして艶っぽく仕上げているそうな。現・日本橋南詰「滝の広場(日本橋川遊覧船の発着場)」が当時は「罪人晒し場」。彼らが最初の「晒し刑」とか。

新内は子供時分にラジオから流れる柳家三亀松の「新内流し」を聴いたうろ覚えがある。「岡本文弥」関連本を数冊読んだ折に、氏の新内カセットも聴いた。今はナマで聴くなら「邦楽公演」だろうが、本来は色街でしっぽり濡れた雰囲気の中で耳にするものだろう。荷風小説を読むと、そんな情緒たっぷりの描写が随所に出て来る。明治、大正には生きていた芸だろうが、今は歌舞伎よりも遠くなってしまった。

 

余談は続く。どんなネット経路かを思い出せぬ(二度と辿りつけぬ)が、懐月堂安度による肉置(ししお)き豊かな年増の、それは見事な極彩肉筆春画を見た。そこで懐月堂(出羽屋源七)を調べれば「江島生島事件」がらみで伊豆大島流刑とかで興味が湧いた。しかも懐月堂安度は英一蝶に私淑。その一蝶もまた三宅島流刑から江戸に戻っている。師弟共に流刑とは驚きなり。さて安度こと源七は、伊豆大島でどんな流人暮らしだったろう。

 そこで時代小説『江島團十郎』を読んだ。著者・早瀬詠一郎はなんと「岡本文弥」弟子で「岡本紋弥」。今では貴重な「新内語り」の一人とかでまた驚いた。新内語り&時代小説作家らしい。彼の時代小説は芸の内幕に詳しい。しかし同小説には残念ながら懐月堂安度は登場せず。そこで流刑史や伊豆大島史などをひもとくことになったのだが、ここは『艶気樺焼』に戻らなくてはいけない。次は「めりやす」…
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