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(5)京伝作詞の「めりやす」 [江戸生艶気蒲焼]

uwaki2_1.jpg ゑん二郎ハきん志よ(近所)のどうらくむすこ(道楽息子)きたりきのすけ(北里喜之介)、わるゐ志あん(庵)といふたいこいしや(太鼓医者)なぞとこゝろやすくして、いよいようわきなことをくふうする。

喜之介「まづめりやすといふやつが、うハきにするやつさ こいつを志らねばなりやせん。およそひとの志つた、口ぢかひ(近い)めりやすのぶん、小くちのところを申やしやう」

 

ここから「めりやす」の題名六十余が列挙されるので略。当時は「めりやす」大流行だったか。●「めりやす=萩江節」。語り系新内節より軽い唄。短編長唄。ネット検索で「めりやす」正本へ。それはひらがな・くずし字。二曲ほどを手前勝手解釈の漢字、句読点付きで記してみる。間違いは御承知下され。まずは『あけがらす』から…

 乁たまに逢ふとよ、逢えば短(みじか)、夜に愚痴を言ふまい、飽きられまいと、心で心窘(たしな)めど、好いたるぐわ(側)の味なきや、眠い眠いを擽(こそぐ)り起こし、訊いて下んせ、初不如帰(ほととぎす)、東雲(しのゝめ)近き鐘の音、恋し床(ゆか)しい夏山茂み、黒い羽織を跡から見れば、塒(ねぐら)出て行く明がらす。

 もう一曲。『きゞす』の抜粋を。乁雉子(きゞす)鳴く野辺の若草摘み捨てられて、人の嫁菜といつか、さて、焦がれ焦がるる苦界の舟の~(略)~虫さへも番(つがい)離れぬ揚羽の蝶(てふ)、我々とても二人連れ、粋な同士の中なのに、菜種は蝶の花知らず、蝶は菜種の味知らず。知らず知られぬ仲ならば、浮かれまい物(もの)~

 

meriyasu5_6.jpgこんな感じの内容。抜粋だが、十分に江戸の浮気の表現豊かな情緒がわかろう。佐藤至子著には『通言総籬』に京伝作詞のめりやす「すがほ」が詠われる場面の会話が紹介されているが、肝心の「すがほ」詞の記載がない。京伝作詞、節付けは泰琳(荻江露友)。天明六年六月一日に吉原仲の町の茶屋・長崎屋でお披露目。京伝は子供時分から音曲を習っていたから、作詞はお手のものだったろう。

再び早大図書館のデータ公開『通言総籬』より「すがほ」が唄われる場面(写真左)をくずし字初心者のあたしが読んでみる。「乁水無月も、流れは絶へぬ浮世の岸に、夜舟こぐ手にふり袖の、顔に籬のあとつくほどに、はでな浮名の手習いも、くさめくさめのやるせなく…」(顔に籬の跡が付くほど待ち焦がれる派手な恋修行をすれど、くしゃみするたび噂が気になって切ないよぅ)とでもいう意か。間違いチェックをよろしく。

 

「惚れたはれた」が辛かったら、しゃれた文句に三味の音、粋な歌声の「めりやす」「新内」で身悶えるも恋の味。しかし今は想いが叶わぬといきなり殺傷に及ぶ世になってしまった。


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