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(16)吉原の桜尽くしに犬も咲き [江戸生艶気蒲焼]

uwaki13_1.jpgゑん二郎ㇵいへざくら(家桜)をおもひだし「かへるさつげるいぬざくら(犬桜)、くぜつ(口舌)のつぼミほころびし、そでをかぶろ(禿)が力ぐさ、ひかれてゆくやうしろかミ(後ろ髪)、こころつよくも(心強くも)きりがやつ(桐ケ谷)」といふもんくより、ほかのきやく(他の客)人のつかまるを、うらやま志きことニおもひ(羨ましき事に思い)、何の事もないに志んぞうやかぶろ(新造や禿)をたのミ、こつちから大門につけてゐて徒らまり、はおり(羽織)ぐらいㇵ、ひつさけてもだいぢない(ひっ裂けても大事ない)といふやくそく(約束)にて、ひきづられてゆく。 志んぞう、かぶろ(新造、禿)ハ、人形をもらふやくそく(約束)にて、むたをいゝいゝ、ひきずつてゆく。 艶二郎「これさ、まア、はなしてくれろ、こうひき徒られてゆく所ハ、とんだぐわいぶん(外聞)がいゝ」

 東京の桜はソメイヨシノが散り、今は八重桜へ。ここでは吉原の桜尽くし。「家桜」は、吉原仲之町に桜が植えられた(春に植え込み&撤去)ことを詠った「助六所縁江戸桜」挿入の関東節『桜尽くし』の一説とか。ここでは「縁語」のお勉強。「縁語=和歌の関連語・連想語を用いる修辞技法の、その関連語のこと」。「桜」の縁語「つぼみ・ほころび・力ぐさ」が使われている。「かへるさ」の「さ」は接尾語か。移動する動詞の終止形に付いて「~する時」「~する場合」の意の名詞を作る。

「犬桜=落葉高木。瓶を洗うブラシ状に咲く桜。見劣りするゆえの名」。芭蕉句に「風吹けば尾細うなる犬桜」。ブラシ状の花房が風が吹いて犬の尾のように細くなる、と詠っている。吉原からの朝帰り時に犬が啼く~から犬桜にかけている。小石川植物園に天まで届きそうな二本の木に「イヌザクラ」の札あり。今頃は咲いている頃かも。「きりがやつ=桐ケ谷」は一枝に一重と八重の桜が咲く種。

 「口舌=苦情、文句、口論。近世では男女の痴話げんか」(古語辞典)。「力ぐさ=力と頼むもの」。古語辞典には「力立て」など「力」熟語が多い。吉原の遊びはわからないが、ここでは「帰っちゃイヤイヤと引き止められるモテ男の気分になりたく、新造や禿に〝人形を買ってあげるから〟と引き止める演技をさせている。絵がゴチャゴチャしているので、こんな絵で省略した。


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