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(20)艶二郎、憧れの勘当へ [江戸生艶気蒲焼]

kandou_1.jpgゑん二郎せけんのうわさ(世間の噂)するをきくに、金持ゆへミなよく(欲)でするといふことをきゝ、きうニ(急に)かねもちがいやニなり、どふぞかんどう(勘当)をうけたくおもひ、両しんニねがいけれども、ひとりむすこのことゆへ、けつしてならねども、よふよふはゝ(母)のとりなし二て、七十八日が間のかんどうにて、日ぎりが切ㇾると、早々うちへひきとるとの事也。 

父「のぞミとあるから、ぜひがない。はやくでゝうせろ」 番頭「これㇵわかだんなのおぼしめし、志か(然)るべうぞんじませぬ」 艶二郎「ねがいのとふり、御かんどうとや、ありがたやありがたや。四百四びやう(病)のやまい(病)より、かねもちほどつらいものㇵないのさ。かわい男ㇵなぜ金持じややら」

 「然るべう存じませぬ=最もとは思えない」。「四百四病(しひゃくしびょう)の病より~」は「人の病は四百四病あるそうだが、それより貧ほどつらいものはない」の諺を、貧を金持ちに変えた台詞。絵は部屋の中に艶二郎、両親、番頭が描かれているが、ここでは両親のみを複写した。

 文が短く終わったので、先日読んだ高橋克彦『だましゑ歌麿』が面白かったので記す。田沼意次に代わって老中になった松平定信「寛政の改革」によって、蔦重が身代半減、京伝が「五十日の手鎖の刑」になったが、深川を襲った高波被害に乗じて歌麿の妻「おりよ」が殺された。松平定信、その忠臣の鬼平、南北の奉行所に対して歌麿、北斎、蔦重、そして主人公の同心らが体制に挑むという大スケールの時代小説。長編だが面白くて一気読了した。

 同作の評判が良かったのだろう、著者はここでの登場人物で、力の抜けた『おこう紅絵暦』『春朗合わせ鏡』などのシリーズを書いたが、それらは軽く過ぎてつまらん。また山東京伝が主人公の『京伝怪異帖』もお粗末。二度手にしたが二度とも前半で放り投げた。


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