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(24)二階から道行・身請け [江戸生艶気蒲焼]

sinjyu_1.jpgうきなハたとへうそ志んぢうニても、くわいぶんわるい(外聞悪い)と、とんだふしやうち(不承知)なりしが、此あん(案)じを志ゆび(首尾)よくつとめたあとハ、すいたおとことそわせてやろうと、ゆらのすけ(由良之助)がいふやうなせいふにて、よふよふとく志ん(得心)させ、此あききやうげん(此秋狂言)にハ、ゑん二郎がむ利息にて、金もとをするやくそく(金元をする約束)にて、ざもと(座元)をたのミ、さくら田にいゝつけて、此ことをじやうるり(浄瑠璃)につくらせ、たちかた(立方)ハ門の介とろこう(路光)にて、ぶたいでさせるつもり。はたきそうな志ばゐなり。もとよりすなをに、身うけしてハいろおとこ(色男)でないと、かけおち(駆け落ち)のぶんにて、れんじ(檽子)をこハして、はしごをかけ、ニかいから身うけする。

内しやう(内証)でハ「どふで身うけなされた女郎ゆへ、おこゝろまかせ二なさるがいゝと、れんじ(檽子)のつくろい代ハ二百両でまけてあけませう」とよくしん(欲心)をぞ申しける。 わかいもの共ハ御しうぎ(祝儀)をちやくぶくして、にげたあとで、ほうぼうへいゝふらせとのいゝつけ也。 内側から「おあぶなふござります。御しづかにおにげなさりませ」 艶二郎「二かいからめぐすりとハきいたが、身うけとハ、これがはじめてじや」

 この頃の心中未遂は、日本橋南詰広場で三日間晒された。外聞最悪なり。「案じ」①考え、工夫、計画(江戸生艶気蒲焼)。②心配、気苦労(浮世風呂)と古語辞典に用例・出典が記されている。古語辞典をひけば、江戸文学は概ねわかるってこと。「由良之助」は忠臣蔵での大石内蔵助モデルで、遊女に言った台詞から。「桜田」は狂言(歌舞伎)作家の桜田治助。ちなみに桜田治助と狂言作家の双璧だった並木五瓶の句碑が、浅草寺裏の京伝の机塚の隣にある。艶二郎が金主になって市川門之助、瀬川菊之丞出演の芝居を興行させるという大見得。

「れんじ=櫺子、連子」。窓などに設けた格子。またその窓。「はたきそう」は「叩き=損失」で失敗しそう。「内証」は古語辞典に多数意あり。ここでは主人の居間・帳場。「ちやくぼく=ちゃくふくの転」と古語辞典にあり。「どふで」も「どうせ」の転だろう。最後の「二階から目薬」の諺が出てくるが、この諺はいつの時代からあったのだろうか。話の内容は心中、道行、身請けのゴチャ混ぜ吉原脱出劇。


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