SSブログ

長襦袢と浴衣に着替えて(18) [甲駅新話]

koueki15_1.jpg<綱>客衆ハのミなんせんがよふおぜんすよ

<谷>こりやア、 おらも止ねへけりやアならねへわい

<綱>ぬしのこつちやア、おぜんせん

<谷>アゝ、ソレデ安堵した

<金>おめへ、お近付のため、あげんせう

<綱>アイ、あがらんそふだから、あげんすめへ

<谷>水いらずにおれがつごうか

<綱>よしなんし、給(たべ)んせん

<谷>それでもおめへ、今、此ぢうハ酔たといひなすつたじやアねへか

<綱>つきてによりいす ~是より、だんだ盃廻、時をうつす内に膳出る~

<はるの>どなたも、おめしをおあんなんし

<谷>めしには気なしだす

<後>お茶漬になすつてあがりまし

<半兵へ>何も御座りません。よふあがりまし。お気に入た物をおかへなさります。はるの、ソレ、お汁でもかへてあげろよ ~といひすてゝ行~

<三>サア、どなたもおあんなんし

<金>アイ、谷粋さん、どうでごぜんす

<谷>そんならつき合てちつと喰ふか。かゝさんハどふだ

<後>イイエ、いただきますまゐ

<三>ホンニ、給(た)べなんせんか

<後>アイ、いゝへ

<綱>わたし共が内のまんまもちつと喰てみなんし

<後>ナニ、お時冝でも、何でもござりません。御酒を給(たべ)ると、どうもいけません。ホンニ、金公さんハ、御酒ハあがらず、たんと上りまし。お汁ハへ

<金>アイ、ごぜんす ~暫く有てめしもすミ、膳さげる~

<谷>コレ、あつちへいつたらの、水を一盃持て来てくりや

<三>水のミ茶碗に汲たてを持て来て上りもふしや

<はる>あゐ

<後>ホンニ、おまへ方、召かへてお出なせんし

<綱>あゐ

<三>そんなら往てめへりやせふ ~<三・綱>着かへに下へ~

<後>わたくしも、お暇(いとま)にいたしませう

<谷>モウ、一ツ呑でいきなせへ

<後>いゝへ、もふ大(おゝき)に酔ました

<金>エゝハナ、もふ寝なさろう

 

 今回は漢字のお勉強。よく出てくる「祢(ね)」は「禰宜(宮司)」の禰の異体字(俗字)。字義不詳で漢字熟語もなく、現在はほとんど使われていない。「しめすへん」ゆえ、当然ながら「弥生の弥」とは違う。次は「安堵の堵」。土を築いて外部を遮蔽した「かき」。かきね、へい。「安堵」はかきねの中で安全に暮らす。自分の家で安らかに暮らすの意。「者」に点がある。まぁ、「安堵」以外は使われぬ。そんな字のくずし字まで覚えるのは大変です。

 「給=たま‐う、たも‐う、キュウ」だが、ここでは「(たべ)る」のルビ。これも覚えた方がいいか。「此ぢう」もよく出てくる。「ぢう=中」で「此中=この間、このごろ、先日」。「お時冝(じき)」とは。「冝」は「うかんむり」ではなく「わかんむり」。「冝」は「宜」の異体字か。時宜=適当な時期の状況。「時宜を得た発言」などと使うが、この「時冝(じき)」は、校注で「遠慮」。あたしの辞書には載っていないので、確かめようがない。「暇」は近世では「いとま」。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。