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メス入れて老の眼が見る秋の街 [暮らしの手帖]

IMG_5952_1.JPG 八年前に右目の白内障手術を受けたが、左眼も次第に悪化した。夜になると、街のネオンや車のヘッドライトが眩しく拡散する。かくして八月末に左眼も白内障手術に相成った。

 最寄りの眼科の紹介状を携え、新宿は歌舞伎町とラブホテル街の狭間に建つ「大久保病院」へ通った。執刀は青年医師。手術室に約二十分間。術後は一泊ながら初入院で、病院で一夜を過ごした。

 片目眼帯のまま、病室備えの文庫本より、藤原伊織『テロリストのパラソル』を読んだ。新宿中央公園の爆弾爆破事件に、東大全共闘出身のアル中バーテンダーが挑む。小説に「大久保病院」も出てきた。主人公が働いていたバーも、若き日に事務所を設けた辺り。新宿舞台の小説は、新宿在住者には妙に身近な感がする。

 翌朝の検診後、眼帯を外して人工レンズになった眼で初めて観るは、十五階病室から眼下に広がるラブホテル街と歓楽の歌舞伎町だった。

 長らへてクリアーな視力を復活させてくれた眼科手術。八年前の右目白内障手術に当たっての不安は、曽野綾子の手術記を読んだりしたものだが、今は同世代の老人の誰もがと云うほどに、同手術を気軽に受けている。

 『馬琴日記』には、眼鏡誂えの苦労、失明後の苦労が記されている。江戸時代の長生き老人らを描いた絵を見ると、丸く太く黒い枠の眼鏡が描かれていたりする。昔の老人らの眼の苦しみ・辛さに、思いを馳せた。


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