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池田満寿夫の人物水彩画っていいなぁ [スケッチ・美術系]

ikedakimono1_1.jpg 『池田満寿夫の人物デッサン』なる教本を見た。「いい絵だなぁ」。写実と抽象の中間按配が良く、線と色が躍動していた。今まで幾冊もの水彩画教本を見て来たが、ほとんどが風景画、しかもどこか優等生っぽくて面白くなかった。描いている方も〝面白い人物〟とは思えない。芸能人でも風景スケッチをする方が多いが、上手な絵より下手な絵を描く方々に人間味がある。

 ヘンリー・ミラーは底なしの魅力を持ち、当初は発禁、伏字だらけの作家で、彼の水彩画を敬愛したのが池田満寿夫だった。池田は江戸の浮世絵師と同じく、食えぬ時期に春画(限定性交版画集)を描いた。それで抽象より具象が売れると知った。彼の抽象と写実の中間按配は、そんな経緯に裏打ちされているらしい。彼が有名になって親戚は喜んだが、エロチックな絵が多くて居間には飾り難かった。

 同書に「私のデッサン論」があった。~作家のデッサンはプライベートな部分があって人に晒すのは恥ずかしい。絵は写真ではないから抽象化する能力が必要になる。原初的な壁画は、写実的な絵より生き生きとしている。イメージの視覚化デッサンには虚飾がなく、細部なんてどうでもいい。絵にはある程度の訓練は必要だが、上手である必要はない。肝心なのは自由な気持ちの表現だ。

 上記は長文の勝手解釈。同書はモデル・山口小夜子を〝モデル〟にした淡彩デッサン。併せて雑誌の「下着ファッション写真」を元にした「フリーデッサン」を掲載。モデルがいようが写真だろうが、同じような仕上がり。

 「フリーデッサン」の意が分からぬが、それら絵から細部にとらわれず、感じたところを自由に描く、とでも解釈できようか。同書の絵を見ていて、あたしも女性を描きたくなった。だが小生は初心者で、真面目で、貧乏で、老人で~モデルになってくれる女友達もいない。そこでかつて撮った着物女性の写真を元に、どこまで自由な線と色で描けるかにトライしてみた。

masuomosya1_1.jpg 最初はボールペンや万年筆(黒)で描いた。真面目だから、つい細部に手が止まる。ノビノビとした線が描けない。そこで細部描写が出来ない筆ペンを持った。細部からちょっと解放され、少し筆が走った。色もちょっと自由に塗った。しかしあと五割は抽象化し、もっと自由に描かないと彼の教本にあった「淡彩人物デッサン」のようには至らない。

 ちなみに同書に掲載された池田満寿夫人物デッサンの一作を〝簡易模写〟すると、こんな感じ。「絵は写真ではないから抽象化する能力が必要」&「細部なんかどうでもいい〝人物デッサン〟」への道は果てしなく遠く難しいとわかった。いや、酒でも呑んで酩酊気味で描けば、意外に近道があるかもしれない。


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