SSブログ

池田満寿夫『絵画を語る』を読む [スケッチ・美術系]

sumoue2_1.jpg 『エロチックな旅』の次に『絵画を語る』を読んだ。白水社・新書版。平成9年8月刊。ムッ。池田満寿夫は熱海で地震に驚いた愛犬に飛びつかれて昏倒。心不全で急逝の半年後。「あとがき」は佐藤陽子が描いていた。

 冒頭はピカソへのオマージュ。86歳に10ヶ月で銅版画347シリーズ〝エロチカ〟完成。マティスは色彩の画家で、ピカソはフォルムの画家。マティスは主題より美を追求だが、ピカソは考えること、感じることが描くこと。よって生きている限り完結なし、と書いていた。〝エロチカ〟後も死ぬまでの3年間に156点も描きまくった。池田はその姿を「死からの逃亡、生と性の執着」と記し、女(性)への尽きぬ欲望が創造力の源泉だったと書いた。だが自身は〝生と性への執着〟が強くなるだろう老人期前の63歳であっけなく亡くなってしまった。

 マグリットの青い空を分析。次にセザンヌは動かぬものに動く線を見続け、色彩のロートレックは動くものに関心を寄せて、省略法を身に付けたと記す。他にコラージュを発明のエルンストの色彩と幻想を語り、ヘンリー・ムーアの素描を認め、イラストレーターのポール・ディヴィスとの交流を語り、ベルギーの幻想派・ポール・デルヴォーの美しき陰毛を語っていた。

 そして最後がなんと『ヘンリー・ミラーと「ヘンリー」』、『ヘンリー・ミラーの女友達』2編。読むうちに「あっ、読んだ記憶あり」と思った。初出が「文藝」の1967年2月号と8月号。老いてから絵を描き始めて読んだ池田満寿夫だったが、そこで20代で読んだ文章に再会した。あたしはそのエッセイによって、ヘンリー・ミラーがどうしようもない女・ホキ徳田に夢中になっている様を知って、ミラー熱が一気に覚めたんだ。

 女、絵、画論・作家論、エッセイ、小説、芥川賞、映画監督、書、陶芸と休みなく取り組み、頑張って・頑張っていたのに突然逝った池田満寿夫。のんびりと隠居暮らしのあたしも、少しは頑張らなければいけないと思って、描き始めた相撲の〝組んづ解れつ・四十八手〟の幾つかを描いてみた。

 ★池田満寿夫関連で読んだ本=「エロチックな旅」「絵画を語る」「日付のある自画像」(以上本人著作)、「芸術と人間・池田満寿夫」(毎日グラフ別冊)「池田満寿夫~流転の調書」(宮澤壯佳著)


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。