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紅梅や見ぬ恋作る玉すだれ [花と昆虫]

yotabiume1_1.jpg 前回、速写「八重の紅梅」を描いて、芭蕉句「紅梅や見ぬ恋作る玉すだれ」と書き加えた。同句は概ねこう解釈されている。「紅梅が美しい家に玉すだれがかかっている。王朝文学の趣が揃ったこの家には未だ見ぬ佳人が住んでいるようで、なんとなく恋しさを覚える」。

 絵を描きつつ、果たしてその解釈でいいのだろうかと首を傾げた。「伊勢物語」六十四「玉簾」で男が口説く。「吹く風にわが身をなさば(わが身を風に出来るなら)玉すだれひま求めつつ入るべきものを(玉すだれのすき間を求めて入り込むのに)」。女の返歌「とりとめぬ風にはありとも玉すだれたが許すべき(誰が許して玉すだれのすき間から入ってくるのよ)」。

 この場合の「玉すだれ」の〝玉〟は簾の美称だが、小生は枝垂れ紅梅が〝玉簾〟のようで、そこから軒下の簾が見えるという〝ダブルイメージの遊び心〟で詠んだ句と解釈したい。芭蕉より百年前の歌人・細川幽斎に「軒ちかき梅が香ながら玉簾 ひまもとめいる春の夕風」がある。梅を〝玉簾〟と詠っている。

 小生が一昨日描いたのは新宿御苑の紅梅。その横に茶室「楽羽亭」がある。その前に梅(と蕾)が咲いて玉簾のようで、そこから茶室の簾が見える。その絵を想像して描けば、こんな絵になる。

 ついでにつまらん句を紹介。「蔭清くその儘絵がくまどの梅」。誰の句だと思いますか。北斎句。「富嶽三十六景」を描いていた頃の句。宿六心配著「謎解き北斎川柳」には北斎の下ネタ・下世話川柳670余が紹介されているが、時にこんな俳句もあって戸惑ってしまうと紹介されていた。北斎はどんな梅の絵を描いたのだろう。


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