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濱松「春の日のあゆみもおそきあしたづの~」 [狂歌入東海道]

30hamamatu_1.jpg 第三十作目は「濱松」。狂歌は「春の日のあゆみもおそきあしたづのかすむすがたやちよの浜まつ」。漢字に直す。「春の日の歩みも遅き葦鶴(あしたづ)の霞む姿や千代の浜松」。ポイントは「あしたづ」。古語辞典に「葦鶴、葦田鶴=葦の生えた水辺にいることから鶴の異名」。〝鶴は万年〟で〝千代の浜松〟か。

 リンクしている「あっちも・こっちも」さんが、七月に千葉の公園で撮ったアフリカ原産のホオジロカンムリヅル二羽をアップしていた。小生も伊豆大島ロッジのベランダで昼寝中に、目の前をユッサユッサと孔雀が歩いてい、眼を丸くしたことがある。共に飼い鳥の脱走。

 外来種の飼い鳥脱走では〝季語〟にもならぬが、江戸時代に普通にいた野鳥のなかには絶滅危惧種、珍鳥、いや消滅した種も多い。広重は三河島辺りの絵にタンチョウヅル二羽を描いていた。さて、弥次喜多らは客引きに誘われて浜松宿へ。

30hamamatuuta1_1.jpg30yurei_1.jpg「さつさつとあゆむにつれて旅衣ふきつけられしはままつの風」。風の吹く音を「颯々(さっさつ)という云うそうで、この言葉も絶滅危惧語だろう。颯々と歩けば旅衣も吹きつけられる浜松の風。

 弥次喜多らが泊った宿は、亭主が下女に手をつけて、カミさんが首をくくって幽霊になって出るという。そんな話を聞いたら、夜ひとりで小便にも行けない。雨戸を開けてこっそり用を足そうとすれば、足のない白い着物がゆらゆら~。「ギャッ」と腰を抜かした。絵は一九画らしい。

 「ゆうれいとおもひの外にせんたくのじゅばんののりがこわくおぼへた」。「こわい=怖い、強い」の地口。まんじりもせず夜が明けて、朝飯をかき込んで出立。まず諏訪神社を詣で「梅干しのすはのやしろときくからにまもらせたまへ皺のよるまで」。「梅干しの諏訪の社と聞くからに」とは、梅干しが名物ってこと? 「梅干し=皺の寄る」は縁語。 


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松尾 守也

(翻刻) : 春の日の あゆみもおそき あしたづの かすむすがたや ちよの浜まつ
(原文) : 春の日の あゆみもおそき あしたつの かすむすがたや ちよの濱まつ  紀 廣持
(読み) : 春の日の 歩みも遅き 芦田鶴の 霞む姿や 千代の濱松  紀 廣持
(注)縁語: 鶴・松。 春・霞

by 松尾 守也 (2017-02-02 17:26) 

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