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舞坂「揚雲雀落る雲雀の舞坂を~」 [狂歌入東海道]

31maisaka_1.jpg 第三十一作目は「舞坂」。狂歌は「揚雲雀落る雲雀の舞坂を横に今切る舟渡しかな」。ここは室町時代の地震で浜名湖と海との間の陸地が切れた所。対岸の荒井(新居)まで約一里。乗合船で渡る。

 狂歌の「揚げ雲雀」は春の空高く舞い上がって囀るヒバリ。「落る雲雀=落雲雀(おちひばり)」は天空で囀った後に急降下するヒバリ。共に季は春。そんな河口を〝横切る〟「今切の舟渡し」。上へ下へ横への線を詠う狂歌は、抽象画の味わいです。「揚雲雀」を調べていたら、男色系隠語がヒットして驚いた。

 喜多さんは、舞坂宿に入る前の濱松宿・諏訪神社を詣でた後に、篠原の入口で「ぼた餅」を三つ買った。弥次さんに一つを渡そうとしたら、鳶が急降下してぼた餅を奪い去った。鳶に食い物を攫われる湘南のニュース映像をよく見るが、そんな光景は江戸時代からあったんですね。 「あいた口ふさがれもせぬそのうへにはなをあかせしとびのにくさよ」=「開いた口塞がれもせぬその上に鼻を明かせし鳶の憎さよ」。

31maisakauta1_1.jpg 膝栗毛には、今切の舟渡しについてこう記されていた。「是よりあら井まで壱里の海上、乗合ぶねにうちのりわたる。げにも旅中の〝気さんじ〟は、船中おもひおもひの雑談、高声にかたり合、笑ひのゝしり打興じゆくほどに、頓(やが)てなかばわたりて、乗合の人々もはなしくたびれ、めいめい柳ごりに肘をもたげて、いねぶりをするもあり、又この風景に見とれて、只黙然としてゐるも有」。

 「気さんじ=気散じ=気ばらし」。「気さんじ」といえば北斎の辞世句が浮かぶ。「人魂で行く気散じや夏の原」。

 それはさておき、今は新幹線で浜名湖際通過は一瞬のこと。その車窓風景に「昔はのんびりとした今切の舟渡しだった」と江戸時代に想いを馳せるのもいいかも。今切の舟渡しを降りれば、そこは新居(荒井)宿の関所。


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