SSブログ

荒井「見渡せは遠つおふみもなみたたて~」 [狂歌入東海道]

32arai_1.jpg 第三十二作目は「荒井(新居)」。狂歌は「見渡せは遠つおふみもなみたたて名にしあらゐの関も戸さゝず」。

 今切りの舟渡しは、荒井の関所構内に着岸する。狂歌を漢字にすれば「見渡せば遠つ淡海も波たたで名にし荒井の関も閉ざしず」か。近江の琵琶湖=近し淡海(ちかしおふみ)で、浜名湖は「遠つ淡海」。見渡せば浜名湖も波がたたで(で=打消し)名に荒い(荒井)とある関だが閉さしず(ず=打消し、閉ざされていない)だろう。

 弥次喜多らも「ふねはあら井のはまにつきければ、のり合みなみなふねをあがり、お関所を打過ける」と記して一首。「舞坂をのり出したる今切とまだたくひまもあら井にぞつく」。〝暇もあらず⇒暇もあら井〟の地口洒落。

32araiuta1_1.jpg だが船の中で事件が勃発していた。薄汚いオヤジの懐に隠れていたヘビが逃げた。船客は大騒ぎ。ヘビを掴まえて再び懐に入れたオヤジに、喜多さんが「ヘビを捨てろ」と詰め寄った。その喧嘩で、またヘビが逃げた。喜多さん、脇差でヘビを押さえるもグルッと巻きつき、振り払った拍子に脇差ごと海へドボン。これが竹光だったからプカプカ浮いた。

 「竹箆をすてゝしまひし男ぶりごくつぶしとはもふいはれまい」。竹光は飯を潰す竹箆のようなもので、これを捨ててしまったのだから、もう穀潰しとは言えまい辛い言い訳。

 荒井の関所は、箱根匹敵の厳しい関所。現在も船着き場、木戸、関所遺構が保存され、資料館などには等身大の侍人形があって当時の厳しさが再現されているそうな。弥次喜多らは関所を無事に越え、名物・蒲焼で舌鼓。ここで「三編完」。


コメント(1) 

コメント 1

松尾 守也

(翻刻) : 見渡せは 遠つおふみも なみたたて 名にしあらゐの 関も戸さゝず
(原文) : 見渡せは 遠つおふミも なみたたて 名にしあらゐの 関も戸さゝす  椙爰亭 波音
(読み) : 見渡せば 遠つ淡海も なみたたて 名にし荒井の 関も閉ざさず  椙爰亭 波音
(注)掛詞: 淡海の波・涙。 名にしある・あら(荒)井戸。 関の戸・とざす。
by 松尾 守也 (2017-02-02 19:58) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。