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『芳蕙』は不明、『鉸剪眉』は油彩 [スケッチ・美術系]

kousenbi2_1.jpgkousenbi5_1.jpg 「行列してまで〇〇したくない」小生に、練馬区立美術館は程好い〝空き〟具合。会場で〝お葉さん〟を探したが、代表作の『芳蕙(ほうけい)』、そして『女官と宝船』もなかった。

 図録に<『芳蕙』は『蝶』と共に行方不明。『芳蕙』は五十年前の展示から足跡が途絶えている>とあった。所有者某が没落後に行方不明。あの中村彝『エロシェンコ氏の像』は、その某氏から東京国立近代美術館へ寄贈されたのだが~とあった。

 その代わり、同時期の鉛筆画『婦人像』があった。作品説明に「モデルは〝芳蕙〟と同じ、佐々木カネヨであろう。彼女は藤島モデルとしても知られるが〝お葉〟の名で竹久夢二の恋人、モデルとしてつとに有名である」。だが竹久夢二の前は〝責め絵・伊藤晴雨〟のモデル・愛人だったとは記されていなかった。

 そして『鉸剪眉(こうせんび)』。事前に観ていた現代日本美術全集『青木繁/藤島武二』収録作とは違っていた。全集同作は「紙・パステル・水彩」で、横顔の輪郭線があり、背景との間に白地が残されていた。同画集には「油絵よりも、このパステルと水彩の作品がすぐれている。まさに絶品と言えよう」とあった。展示の油彩は横顔や背景が無筆触単色塗りで、あの味わいが塗り潰されてしまった感じだった。

 同テーマの『東洋振り』や藤島模写のルネッサンス期の横向き婦人像も展示で、作者の模索過程がわかって面白く、それだけに『芳蕙』が観たかった。小生はこの連作を観つつ、狩野芳崖が『悲母観音』で見せた基督教美術と仏教美術の融合、そして藤島武二の「油彩で描いた日本画風仕上げ」を較べていた。

 会場には実に多彩な描き方、筆触の作品が並んでいた。それらはどれも何処かで観たような気がして、作品に魅了されるのではなく「私はこんな風にも描けますよ」というサンプル展示を観ているよう。これが文展・帝展アカデミズムの中心に居続けた画家・教師・官吏のスタンスで、つまらん安定感と思った。俄か絵画好きの素人感想で失礼は承知だが、胸打つ画家なんて、そんなに多くはいない、と改めて認識した。

 写真は『鉸剪眉』の部分。左がパステル・水彩作。右が油彩。次はちょっと胸躍った藤島武二のグラフィックデザイナーとしての仕事について。(藤島武二2)

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