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ジャポニスム4:モネの場合 [北斎・広重・江漢他]

mondejap1_1.jpg 印象派の「ジャポニスム」を語る上で留意すべきは、伝統的日本画ではなく「浮世絵」ってこと。1883年(明治十六年)、仏国の美術雑誌が余りに北斎を絶賛するので、フェノロサが正統派日本画を紹介したが一蹴されたとか。庶民パワーの浮世絵を見くびってはいけない。

 永井荷風は『浮世絵の鑑賞』でこう記している。~(浮世絵は)圧迫せられたる江戸平民の手によりて発生し絶えず政府の迫害を蒙りつつしかも能くその発達を遂げたりき。(中略)遠島に流され手錠の刑を受けたる卑しむべき町絵師の功績たらずや。浮世絵は隠然として政府の迫害に屈服せざりし平民の意気を示しその凱歌を奏するものならずや。

 さて馬渕明子著『ジャポニスム』に戻って、今度はモネのお勉強。同著では多数評論家のモネ作品の「ジャポニスム」指摘を北斎、広重版画などと図版対比で詳細説明。ここはブログゆえ要点のみを簡略・箇条書きです。

●モネのジャポニスムは、初期から晩年まで六十年の画歴を通じて見られる。●モネの急速に遠方に退く誇張気味の遠近法も広重に似ている。従来西洋画になかった浮世絵版画の遠近法を採り入れている。

●モネは「空から振る枝」「画面前景に立ちはだかる木」「すだれ効果」「イメージの重なり」「画面の分割構図」「画面に平行な前景の処理」「俯瞰する視点」など北斎、広重に学んだ。

●日本人は自然を彩られた明るさに満ちたものとして捉え、多彩な色調、色彩の明るさで背景を暗くしない。モネは西洋風景画家のなかで最初に色彩の中に溶け込んで行く日本人の大胆な色彩感覚を得た。

●晩年の『睡蓮』連作には、暗示的な芸術性、日本的自然観などを深く理解した結果の現れ。日本美術の自然モティーフを多用した装飾性も認められる。

 この説明に、小生は再び永井荷風の記述を加えたい。●クロード・モネが四季の時節及朝夕昼夜の時間を異にする光線の下に始終同位置の風景及物体を描きて倦まざりしはこれ北斎より暗示を得たものなりといはる。

m_sanpokasa2_1.jpg モネ作品ことごとくに「ジャパニスム」が認められるならば~。小生が絵を描き始めた2年前秋のこと。モネ展へ行こうとするも余りの大行列で断念し、自室に籠って不透明水彩で簡易模写したこのパラソルの絵だって、浮世絵には傘さす似たような女性絵は沢山ある。これまた「ジャポニスム」と云えなくもない。

 ここで改めて手元のモネ画集をひも解けば「ジャポニスム」の文言一切なし。注目度変遷をネット調べすれば、官邸サイトに辿り着いて興醒めなり。来年の日仏友好160年に「ジャポニスム2018をパリ中心に開催」の推進会議内容らしい。

 また今年十月には国立西洋美術館で「葛飾北斎とジャポニスム」開催とか。馬渕明子著『ジャポニスム』初版が1997年で、最終章が『葛飾北斎とジャポニスム』。それで氏は今、国立西洋美術館館長らしく唸ってしまった。

 写真上はモネ『ラ・ジャポネーズ』(1876年、明治九年)。ホイッスラーの着物立ち姿と似ている。次はゴッホの場合。

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